悪役令嬢はGL展開を回避する為に婚約破棄を目指します!

鬼京雅

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一章・アイヅ王子との婚約破棄編

15話・ニートさんの弟登場!?

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 あれから三日が経ったの。
 アイヅ王子もバクーフ王国の歴史や街並みを見て、かなりバクーフを好きになっているわ。バクーフ王もスズカとアイヅ王子との婚約成立を成功させたいようだし、もう国全体が祝福ムードになっているわ。

「くだらないわね」

 と、自宅でスララの作った朝食を食べながら呟いた。今日のメニューは卵焼きにベーコン。サラダとパンとバタードングリドーナツ。ニートさんと住んでた時から料理はできるようだから、私も助かるわ。手早く朝食を済ませていつものルーティーンをする。

「スララ。タロット」

「御意」

 と、跳ね上がったスララの口からタロットカードが出された。それを引いた私は舌を舐める。

「今日のタロット占いは逆位置の太陽。自信も無く、そこそこ上手くいくぐらいの日。まぁ、完璧に事が運ばなくても最後に勝てばいいけだし。悪く無い運勢だわ」

「アヤカ殿の婚約破棄作戦も佳境ですな。拙者も留守番を頑張るので残りの二日間を楽しんで下さい」

「確かに後、二日でアイヅ王子の一週間の婚約予行は終わる。明日には決着をつけないとならないわ。だからアイヅ王子と二人になれる場所が必要」

 この三日間はアイヅ王子も私を避けているようで、ほとんど会話をしていない。けど、私の事も気になっているので挨拶だけはしに来る。

 最後のキスの効果があったみたいね。
 オホホのホ!
 悪役令嬢として素晴らしい顔をする私に見とれるスララは、

「アヤカ殿の作戦が上手く行ってるとして、二人きりになれる場所なんて作れるのですか?  それに、アイヅ王子はスズカ殿との婚約の為にバクーフ王国に来たようなものだし……」

「そこはそこまで不安にならなくてもいいわ。思わせぶりな態度で他の男が好きと私が言った事で、アイヅ王子は混乱してるわ。そこからも私は明るく王子に話しかけているから、向こうも私の気持ちがどうなのか知りたくてたまらない顔をしてる。感情が溢れてていぃ……顔だったわよ」

「……なら、この婚約は破棄される可能性が高いですな。アイヅ王子も混乱してるなら、確かに明日が勝負」

「そうよ。もうアイヅ王子の脳内で私が肥大化して、私に会わないと息苦しくて仕方ないでしょう。だから私は明日に賭けるの。その為の三日間のおあずけ期間よ。アイヅ犬へのね」

「御意。ならばスララはお留守番をしてるです!」

 と、敬礼してるけど、今回はスララにも出番があるの。

「スララは今日はお留守番よりも大事な仕事があるわ。悪役令嬢わたしの侍従としてしっかり働いて頂戴ね」

「ハヒ!  で、その内容は……?」

「ここでパーティーをするのよ」





 午後になり、自由時間が出来たので、バクーフ王宮の庭園でアイヅ王子はスズカに今後の話をしていたわ。私は二人にわからないようそびえ立つヒマワリの影に隠れている。

 今はスズカやり合う必要は無いわ。
 スズカとやり合うのは明日でいい。

 アイヅ王子とスズカは、ゆっくりと庭園を回っている。たいして花の名前なんか知らないくせに、スズカは舞い上がってるわね。すると、アイヅ王子はスズカに聞かれた外交の話をしていた。

「……バクーフとの外交商品としては、アイヅ国としては農業国家としての生産品だ。まず、干渉して成長が邪魔されないよう間引いた木々。そして新鮮で他の国よりも豊富な種類の野菜類。バクーフ王国は安定供給の肥料と鉄の取引きをしてもらう予定だよ」

「鉄と言うと、剣や槍などに加工していない鉄の事ですか?」

「そうだ。アイヅとしてはただの鉄のままでいいのさ。加工はこちらでするし、加工までされると取り引きがジューテーム!  じゃなくなるからね」

「そういうものなのですね。経営的な知識もあって王子と婚約出来る私は幸せ者です。幼馴染だし、運命ですね」

「ははっ!  いや、それは照れるよスズカ。周りに誰もいなくて良かった。照れる事はあまり聞かれたくないからね」

 キョロキョロと周りを気にしてるアイヅ王子は、おそらく私を探してる。クエストクラスの私の魔力のサイレントミラージュにかかれば、完全に気配や姿を隠す事も可能なのよ。ヘタに動かなければ、近くにいてもバレないわ。

 どうやら私がいないのがわかったようで、アイヅ王子は語る。

「あまり他国に頼り過ぎると、自国のレベルが下がるからこの取り引きがアイヅとしてはベストと考えているのだスズカ」

「そうですか。私は国の経営の事はお父様に任せているのでよくわかりませんが、あまり王子の望みが薄いようにも感じます」

「アイヅ王国は農業国家なので、多くは望まない。どちらかというと魔法使いよりも、戦士が多い国だからバクーフ王国の力になれると思う。ただ、婚約に関しては母の許しも得なければならない。そこだけは忘れないでくれスズカ」

「はい、私はいくらでも待ちますよアイヅ王子」

 しっかりとスズカはアイヅ王子の手を握り、瞳を閉じる。それにアイヅ王子は答えようとするが、やはり抱き締める事でキスはやめたようね。

 その理由は人が来たから。

 スズカはバクーフ王から召集を受けたらしく、家臣達と共に王宮の中へ消えた。おそらく、残りの日程でアイヅ王子との婚約を確実にする為の話でしょう。

 となれば、コチラも最後の仕上げに出ないとならないわ。スズカも平気で自分の肉体を使おうとしてるから、チンチンタラタラしてられない。

 スズカを見送るアイヅ王子は、自分も宿舎に戻ろうとしてる。

「あら、アイヅ王子。スズカ姫と楽しそうでしたね?」

「ア、アヤカ!  まさか見ていたのか?  いつから?

「いつから……でしょう?」

 フフフと妖艶な笑みでアイヅ王子を困惑させる。

「でもアイヅ王子。アイヅ王子が私を避けるからいけないんですよ?  私をこうしたのはアイヅ王子の責任です」

「な!  何だって!?  僕の責任!?」

 アイヅ王子が私を避けてる事を言うと、かなり混乱してるわ。ならば、ここで避けてる事を更に問い詰める。

「だって私アイヅ王子に避けられてるから、とても不安だったんですよ?  私は誰よりもアイヅ王子を想っているのに……」

「で、でも君も他の男が好きとか言ったじゃないか? だから僕だって困惑してるんだよ?」

「私……そんな事言いました?」

 ここで、ハンカチを使い泣いてみせる悪役令嬢わたしはアイヅ王子を悪役にする。言ったじゃないか!  と言う顔のアイヅ王子はここでそれを言えない。

 困惑、錯覚、混乱状態に陥っているようでハンカチの下の顔からヨダレが出てしまう。その雫が落ちたのを涙と勘違いしたアイヅ王子に対して私は言う。

「私は王子様に嘘はつかないわ」

 アイヅ王子の中で何かが崩れたわ。
 目的の為には手段は選ばない。
 スズカが幼馴染や肉体を使うなら、私は涙を使う。そうすれば、王子様が助けに来るからね――。

「泣かせるのはいけないなアイヅ王子」

『!』

 そこには、青い髪の毛に金色の瞳の長身の男が現れたわ。髪の毛と瞳の色こそ違うけど、まさしくこの男は――。

「君はニートさん……なのかい?  かなり似てるけど本人じゃないね。まさかニートさんの弟?」

「あ、あぁ。拙者はニートの弟のスラトさ。よろしくねアイヅ王子」

 スララが変身した人間モードでは、ニートさんの弟という事にしたの。私はこの王子様を使って明日の時間を作ってもらう事にしたわ。流石に女の涙には弱いのか、アイヅ王子はスララニートさんであるスラトの意見を受け入れたの。

「では、この件は僕も不誠実な面もあったのは確かだ。翌日の二人との話で決めよう。最後の日は外出は無理だから、どこかの家でニートさんを交えて小さいパーティをしたい」

「では、私の家でパーティーをしましょう!  明日はアヤカハウスでアイヅ王子とスズカ姫をお待ちしていますわ!」

 こうして、アイヅ王子は私の家でパーティーをする事になった。最終日に婚約破棄させる覚悟を決めさせてやるわよ。オホホのホ!
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