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6話・金髪イケメンニートさんとスズカのお願い

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 私とスズカは、バクーフ森の奥地にあるニートさんの小屋に辿り着きました。この辺りは森の奥地ですが、川も流れていて小さな畑もあります。ジパング大陸のレアな野菜のジェットトウモロコシ、クイーンミカン、時計仕掛けのブドウ、ピースアップルなどもあり色とりどりの野菜畑です。

 おそらく、ニートさんとスライムのスララの食料でしょう。小屋の前に立ち、モジモジするスズカは私の進もうとする身体を止めます。

「ちょっと貴女。そのバタードングリンゴアップルパイを渡したら、私だけ何も持ってこなかったみたいじゃない?」

「細かい事を気にするのね。二人で作った事にすればいいじゃない。もう扉をノックするわよ?」

 トントンと扉をノックすると、小屋の中から物音がしています。

「はいはい! こちらはニートの小屋ですが、どちら様ですか?」

「こんにちは。私、アヤカです。悪役令嬢のアヤカです」

「アヤカ殿ですね。今開けますよ」

 小屋の扉が開く。けど、そこには誰もいない。あれ? と思ってると足元で水色のブヨブヨした物体が動いていたの。

「スライムのスララだから正面見てても仕方ないね。気付かなくてゴメンね。ニートさんいる?」

「えぇ、いますよアヤカ殿。まだ寝てると思いますが起こしましょう」

 すると、何故かイラついているスズカはカツカツと前に進み言った。

「このスライム、人のパンツ覗く気?」

「あぁ! 踏んだらダメだよスズカ。それじゃお邪魔します」

「ハヒ……」

 と、潰れたスララは半べそをかきながら元のスライムに戻る。そうして私はニートさんの寝室に入るの。

「おはようございますニートさん。アヤカです……ぽよ!?」

 部屋に入ると、裸で寝てるニートさんがいました!見てはいけないので、すぐに私は顔を手で隠します。まだニートさんが寝てるのが救い? だったわ。

「あちゃー……ニートさん、裸族だったの忘れてた。あれ? スズカ?」

「……棍棒が一つ、棍棒が……」

 と、呟きながらスズカは失神しそうになっています。男性の裸でダウンするなんて私と同じ、処女のようだわ。いつも偉そうな女なのに意外な反応で面白い。

「しっかりしてよスズカ。他国王子も全裸で迫って来るトラブルもあるかもだよ?」

「……あ、あるわけないでしょ? それに何で貴女は平然としてるのよ。ニートはいつも裸で寝るの?」

「ニートさんは基本的に裸族みたいだし、上手くスララが大事な所を隠してくれるから安心していいよ? 別に見た所で妊娠するわけじゃないし」

「そ、そんなのわかってるわよ。悪役令嬢はメンタル強いわね。とりあえずニートさんは服を着て。スライムが股間を隠してるのは無し」

 スズカは男嫌いな癖に、男の裸でこんなに戸惑ってるのはガールズラブだけじゃないのかな? とも思ったりした。

 でも私の胸を揉んでいるのでヒジ打ちして、考えを取り消した。すると、服を着たニートさんが窓から浴びた金髪を輝かせて王子のように目を覚ましたの。

「おはようみなさん。……新しい客人がいるようだけどまずは服を着させてもらうよ」

『そうして下さい』

 と、私は笑顔で言い、スズカは引きつった笑顔で言ったの。寝起きでも金髪に青い瞳が美しいニートさんは着替えに行く。

 その間、スライムのスララがピョンピョン跳ねながら聞いて来た。

「質問です! アヤカ殿は何で勇者が好きなんですか?」

「あぁ、この前の話の続きね。それは、勇者様は私の命の恩人だからだよ」

 そう、スララに説明する。スズカも黙って聞いていた。私は5歳の時に金髪の少年勇者に助けられている。モンスターに襲われて命が尽きそうだったので勇者様の光の力で命が復活したの。そこで勇者様の存在を知り、命の恩人だけでなく恋をしていた。

「……それからジョブはウィザードを目指した。いつか勇者様の手助けが出来るようにね」

「アヤカさん。いい話です! 拙者は感動しました!」

「感動するのはいいけど、ちゃんと覚えててよね。スララはこの話の時に寝てたし」

 ピョンピョン跳ねながらスララは涙ぐんでいるというか、泣いている。そして、スズカはそれがウザいのか容赦無く踏みつけた。

「十年前の話なんだから勇者と貴女は年齢差があるわよ? わかってるの?」

「知ってるよ。もう勇者様は25歳だよ。今は魔王が封印されて、世界は安定期なのでどこで何をしてるかわからない。だからもう会う事も無いかも」

「もう、結婚してるんじゃない? だって勇者はモテるでしょ? 強いんだし」

「ぽよ!? そのパターンもあったかー……」

 と、軽くショックを受けてしまう。
 でもニートさんは勇者様に似てるから少し好きなだけよ。それだけ。でも気になる……。
 すると、金髪イケメンのニートさんは青い服に着替えて戻って来たの。

「さっきはすまなかったね。僕も基本裸族だから女性が来るとピンチンチンなのさ」

「いえ、こちらもズンズン部屋に入ってしまったのが原因なので大丈夫です。あ、これ今日作ったバタードングリンゴアップルパイです。よろしければどうぞ」

「おぉ! 森の木に生えているバタードングリをリンゴを使って焼いたパイか。いいねアヤカ。僕は甘い物が大好きなんだよ」

 ニートさんと、スライムのスララは目を輝かせています。喜んでくれているようで嬉しいです! しかし、何かイラついているスズカはお皿とか紅茶を準備してくれているニートさんに言います。

「ニートさん。初めまして。私はバクーフ王の十番目の娘のスズカよ。貴方に相談があるわ。大事な相談よ」

「初めましてスズカ姫様。はて、僕のようなニートに用とは何でしょう? 働いて税金を納めろ! というのは困ります」

「そんな話じゃないわよ。ニートに税金なんて払えないでしょ? 私が言いたいのは一つ」

 やけにピリピリしてるスズカは、初対面のはずのニートさんに遠慮してるような感じもする。やはり男にも興味あるのかな?

 すると、スズカはスライムのスララを片手に持ち、とんでもない事を言ったの!

「このスライムを、アヤカの従者にさせてあげてくれるかしら?」

『はぁ?』

 私は口が開いたままになり、スララは目が飛び出ていて、ニートさんのズボンが何故かずり落ちた。
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