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二章・小松冴子
2話・お喋りジイさん久保田
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グループホーム・時の館へ入居して一週間が過ぎた。小松冴子にとっての新しい最大の問題は、ある老人が鬱陶しい事だった。
それは久保田という軽度の認知症である老人の男性だった。それは、かなりのお喋りなジイさんであり、時の館の入居者やスタッフも手を焼いていたのだ。自分では面倒見が良いと思っているようで、率先してスタッフの手伝いなどをして、人の輪の中心にいようとしていた。しかし、そのどれもが中途半端であるのは言うまでも無かった。
故に、久保田ジイさんは鬱陶しいというのが時の館の総意だったんだ。
人当たりの良い冴子は当然、久保田の相手をするようになってしまっていた。いつものように、フリールームでお茶を飲んでいるといつもの話が始まる。
「ね? この俺の和風柄のコップいいでしょ? 昔、京都で買ったコップなんだよね。俺のコップは将軍様が持つコップだから」
「はぁ……そうですか。なら結構高そうですね」
「いや、これが何と百均で売ってるんだよ。百均でも三百円の方だけどね」
「確かに三百円なら和風の柄がありそうですね。普通の百円なら無地しか無さそうですし。久保田さんはセンスが良いですね」
「まぁ、どうでもいい話だなんだけどね」
と、ある程度の満足を得ると久保田はそう言って会話を終わらせる癖があった。この時の館の全員は、「どうでもいい話ならしないでくれ」という意見で一致していた。
「どうでもいい話だけど、冴子さんが同じ出身地で幸せだよ。同郷の女が近くにいると、妻のような感じだね。元気ハツラツだよ!」
「でも、私は生まれが福岡というだけで、すぐに引っ越してしまいましたけどね」
「そんな事はね。どうでもいいんだよ。同じという事が大事だから」
話を聞いてくれる事と出身地が同じという事で、久保田は冴子に対して恋愛感情が芽生えていた。冴子もそれを薄々と感じてはいたが、人間関係を穏便にする為にも久保田の会話相手になっていた。そして、半月程過ぎた。
この時点で、久保田は完全に冴子を自分の妻のように扱っていた。
冴子も久保田に対しては文句を言わない為、久保田も調子に乗ってしまっていたのだ。これが、一月後に冴子が変貌するキッカケになった。
それは久保田という軽度の認知症である老人の男性だった。それは、かなりのお喋りなジイさんであり、時の館の入居者やスタッフも手を焼いていたのだ。自分では面倒見が良いと思っているようで、率先してスタッフの手伝いなどをして、人の輪の中心にいようとしていた。しかし、そのどれもが中途半端であるのは言うまでも無かった。
故に、久保田ジイさんは鬱陶しいというのが時の館の総意だったんだ。
人当たりの良い冴子は当然、久保田の相手をするようになってしまっていた。いつものように、フリールームでお茶を飲んでいるといつもの話が始まる。
「ね? この俺の和風柄のコップいいでしょ? 昔、京都で買ったコップなんだよね。俺のコップは将軍様が持つコップだから」
「はぁ……そうですか。なら結構高そうですね」
「いや、これが何と百均で売ってるんだよ。百均でも三百円の方だけどね」
「確かに三百円なら和風の柄がありそうですね。普通の百円なら無地しか無さそうですし。久保田さんはセンスが良いですね」
「まぁ、どうでもいい話だなんだけどね」
と、ある程度の満足を得ると久保田はそう言って会話を終わらせる癖があった。この時の館の全員は、「どうでもいい話ならしないでくれ」という意見で一致していた。
「どうでもいい話だけど、冴子さんが同じ出身地で幸せだよ。同郷の女が近くにいると、妻のような感じだね。元気ハツラツだよ!」
「でも、私は生まれが福岡というだけで、すぐに引っ越してしまいましたけどね」
「そんな事はね。どうでもいいんだよ。同じという事が大事だから」
話を聞いてくれる事と出身地が同じという事で、久保田は冴子に対して恋愛感情が芽生えていた。冴子もそれを薄々と感じてはいたが、人間関係を穏便にする為にも久保田の会話相手になっていた。そして、半月程過ぎた。
この時点で、久保田は完全に冴子を自分の妻のように扱っていた。
冴子も久保田に対しては文句を言わない為、久保田も調子に乗ってしまっていたのだ。これが、一月後に冴子が変貌するキッカケになった。
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