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12話・渋谷ボス-ハロウィンとの決着
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「決着の時だハロウィン。お前のハロウィンパーティーのおかげで、少し強くなれたよ。ありがとう」
そう言うと、ハロウィンは穴の空いた腹部から血を吹き出しながら笑っていた。もう何かの芸をする余裕すら無いようだ。隣にいる舞花は銃を構えているが、狙撃する気配は無い。すでに弾丸を額に叩き込んでいるし、この渋谷エリアを取り戻す決着をつけるのは俺だと考えているようだ。瀕死で笑うに笑えないハロウィンは、最後の言葉を話し出す。
「人間とはその行いが共感されないと仲間外れにされ、その苦悩が死に至るとも聞いたんだがねぇ。チミの行動は悪魔が人間を殺すのと同じ……いや、それ以上だ。チミはいつか人間に殺されるんじゃないかい?」
「共感なんていらない。革命者は大衆から共感されるのは革命後であり、俺は革命後に憎悪される人間だ。俺は俺の快感の為に殺すだけ。悪魔ならいくら殺しても罪にもならず、むしろ喜ばれる」
「ククッ……人間であるのが不思議な男ね。チミより強い悪魔が……ゼロノス様がチミを殺す」
「そうだと嬉しいよ。奴は現世へ侵攻する為にデビルスターツリーに人間と悪魔の魂を集めているんだろ? だから今は管理ネットワークがある東京駅から動けない。必ず東京へ行き、俺はこの世の全ての理を破壊する」
「チミの向かう先は暗黒のようだね。悪魔のいる世界をもっと人間と悪魔の血と臓物で煮詰めたような暗黒……そんな世界にまともな人間が耐えられるわけがないわ。ボクチンはチミが友に、仲間に、人間に殺されると予言しておく。人間の心は悪魔より悪魔なら、そうなるのが必然」
「そう、人間の心とは悪魔を超える悪魔そのものだ。人間をわかって来たなハロウィン」
俺という人間には何を言ってもムダだな……とハロウィンも悟ったようだ。
「夜野星矢……やはりチミはゼロノス様を倒せる革命者なのかもねぇ。人間は弱いのに強い。それは欲や野心があるから。強いエゴは強い力となる。そして、いずれそれは同族にも向かう事になるだろうさ。それをわかっているなら、ボクチンはそろそろ……」
「待て、まだ聞きたい事もある。利用価値がある以上、渋谷の悪魔ボスであるお前はまだ殺さない。少しでも生きながられて情報をもらうぞ」
「ならコンソメポテチでも貢げよぉ……コンソメポテチで手を打てよぉ……」
すると、舞花が銃を構えたまま前に出た。自分でハロウィンにトドメを刺す気のようだ。
「星矢が殺すなら黙って見ていたけど、殺さないなら私が殺す。悪いけど、瀕死の悪魔は自分のしたくない事を無理矢理させると消滅するの。だからハロウィンから情報を得るのは無理よ」
「少しなら得られる情報もあるだろ? せめてゼロノスに味方している人間達。謎が多いゼロノス聖協会の連中の話だけでも……」
「そうもいかないんだよ夜野星矢」
ゾワッ……という悪寒と興奮が俺を刺激した。数日前に山手線内で聞いた奈落の底のような声は、俺の人生を幸福へと変えた存在。それはこの悪魔東京のラスボスである――。
「――悪魔王ゼロノス!?」
瀕死で横たわるハロウィンの真上に悪魔王ゼロノスが出現した。青い肌に黒く重厚な鎧を身に纏う悪魔王のいきなりの登場に俺と舞花は身構える。ジジジ……とゼロノスの身体は映像のように乱れていた。
(凄まじいプレッシャーだ……気迫で負けたら意識を失ってしまうぞ?)
東京からの映像のクセにゼロノスのプレッシャーは凄まじかった。決して気を抜かないように悪魔王との会話に入った。
「流石に東京から渋谷は遠いな。映……像が乱れているよ。何せ媒介が安定してないから映像の調子は良くないのを理解してくれ」
『……』
どうやら、瀕死のハロウィンの身体を媒介にして、ゼロノスは東京から映像を送って来ていた。映像調整をしている映像のゼロノスは言う。
「まさか渋谷エリアのボスがやられるとはね。我も人間達の結束には驚かざるを得ない。人間とは罪深き生き物だと再確認したよ」
「わかってくれて助かるぜ。そもそもお前は何故この東京という都市をデビルスターツリーにしたんだ? もっと人が少ない都市を選べば誰にも邪魔されずに済んだんじゃないか?」
「わかっていないな夜野星矢。東京とはストレスという悪意も多い。そして、電車というのは無限のエネルギーを吸収して排出している。だからこそ、山手線殺しは悪意に満ち溢れた東京を、悪魔東京へ変貌させる最高の手段だったのだよ。山手線中央にあるデビルスターツリーの誕生がその証拠だ」
「そうか……ならお前についた人間達はどうする? いずれ悪魔に喰わせて終わりだろう?」
「酷い事を言うね夜野星矢。我に従う人間は全て受け入れる。心に我を憎む意思があろうとな。ゼロノス聖協会とは善悪に満ちたカオスの楽園なのだよ」
「お前を憎しむ心は必ずお前を殺すぞ? 人間を甘く見ない方がいい」
「甘くは見てないさ。我は人間を知る為に協力者を置いてる。その憎しみも我の国造りの中で変えられるからだ。人の心は変わるもの。今は憎くても、いずれは変わる。このゼロノスを神とする意思が変えるのだ」
「貴様は悪魔だろうに」
「我は悪魔王から人間と悪魔世界の神になる。この狭い悪魔東京を脱した後にそれは訪れるのだ」
「悪魔は人間の想像した悪意の集合体から生まれた存在。ふざけた理想も長く続くと思うなよ」
映像のゼロノスは嗤っている。そして、媒介となるハロウィンの寿命も近いようで映像が乱れ出す。
「一つ聞こう夜野星矢。隣の彼女は君の新しいガールフレンドかい?」
プレッシャーを感じ、息を詰まらせる舞花は顔が青ざめていた。失禁すらしているようだが、戦う気持ちは折れてないから大地に立つ事を辞めていない。そんなギリギリの舞花の背中を支えながら俺は答えた。
「美空舞花はただの協力者だ。勘違いするなよ。舞花は俺より早く貴様を殺すかも知れない女だ」
「そうか。それは楽しみだ。なら君は女で苦しむ事になるだろう。星の巡り合わせとは、罪深きものだ」
「星の巡り合わせ? 何を言ってやがる? それより今はどの段階だ? いつ悪魔東京が現世と交わる日が来る?」
「偉大なる「ゼロノスデイ」はおよそ一月後。このまま行けばもうすぐゼロノス国家は誕生する。悪魔東京という閉鎖空間を超えて、現世のゼロノス国家が生まれるのだ。そのゼロノスデイまでに君達には生贄として死んでもらうから、運命の日に立ち会わせられないのが残念だよ。でも、ゼロノスデイからは我に従えば平和に生きられる。人間の悪意は我が管理するから人間から争いが消えるのだ。素晴らしい世界……だろう?」
どうやら、ゼロノスが現世に侵攻する事になるゼロノスデイは約一ヶ月後になるようだ。現世に悪魔が解き放たれて混沌となる生と死がカオスった空間になるわけでは無く、あくまでゼロノスに従う者は受け入れる世界にする。そして、人間の悪意を管理して平和な世界を生み出そうとしているようだった。
ゼロノスは管理された完全平和を目指している。
それは俺の答えとは違う世界だ。悪魔と人間は相容れない。人間の悪意は管理不可能。不完全で学ぶ事を辞めているような獣の人間達を、悪魔がコントロール出来るはずも無い。少なくとも俺はそうだ。そして、ニンマリと歪んだ笑みを見せて悪魔王は言った。
「縋るものが無ければ、人間は生きていけまい」
「あれが……ゼロノス様」
いつのまにか、俺の隣にルーンメイズのドクターがいた。そのドクターはケチャップを口元に付けながらゼロノスを崇拝する信者のように見つめていた。ドクターはゼロノスに興奮しているが、俺は言わなくてはならない。
「ドクター。何故ゼロノス様なんだ?」
「ドクターは悪魔が出てくるようなアニメ好きだからでしょ? 好みの問題よ」
という舞花を無視して俺はドクターを見つめる。ドクターはやけに冷たい目で俺を見返していた。だが、ドクターの趣味にとやかく言うつもりは無いから黙っておくか。でもドクターは話し出した。
「ゼロノス様のゼロノスデイが完全すれば、面白い事が起こるわ。人間の悪魔の魂を集めているなら、そこから死者すら蘇る世界が生まれるはずよ」
「そこの白衣の女はこのゼロノスをわかっているようだ。やはり星の巡り合わせとは素晴らしい」
何を言ってやがる? と思いつつゼロノスの話を聞いた。
「ゼロノスデイが完成すれば、楽園の世界を見せて信者にする。新世界では死者でも復活させられる。人間は自分の好きな存在だけといられる。幸福しかない空間。完全平和とは素晴らしいものだ。それを人間にもわかって欲しい」
甘い言葉を吐く悪魔王ゼロノスの言葉に、ルーンメイズの面々は聞き入っていた。しかし、それを幻想と振り払う。
「女が好きそうな甘い言葉ばかり吐くなよ? 悪魔王も女には弱いのか?」
「女性が多いのはいい事だ。君達の顔は忘れない」
そしてハロウィンの死が近く、かなり映像が乱れ出したゼロノスとの最後の会話になった。
「ゼロノス……貴様が現世に出ても、人間と戦わないならそれは悪だ。悪魔の力は戦闘と戦争をする為にある。他の人間達がそれを受け入れても俺は絶対に受け入れない」
「夜野星矢。君こそが悪魔だな。君だけはこの悪魔東京で殺しておくよ。我が過去に見えていたのも、我の右目を奪ったのも運命なのだろう」
「……」
「我は平和という行いで人間から共感を得る。君は破壊という行いを続けて人間から共感を得られない。人間社会は共感と学習している我と君の差は歴然だ。すでに君は敗者なのだよ。人間以上に悪魔な男……夜野星矢」
「そうだ。人間は悪魔以上に悪魔だ。そして、革命者は敗者でも勝者でも無い。革命者とは奇跡の星だ」
「そうか。奇跡の星だろうと共感者を得られない君はいつか人間を――」
「殺す」
モニターの役目だったハロウィンの頭を蹴り潰した。こうして、ゼロノスとの会話は終わりハロウィンも死亡した。渋谷エリアの悪魔達も、ボスの死亡により消滅し出したようだった。
そう言うと、ハロウィンは穴の空いた腹部から血を吹き出しながら笑っていた。もう何かの芸をする余裕すら無いようだ。隣にいる舞花は銃を構えているが、狙撃する気配は無い。すでに弾丸を額に叩き込んでいるし、この渋谷エリアを取り戻す決着をつけるのは俺だと考えているようだ。瀕死で笑うに笑えないハロウィンは、最後の言葉を話し出す。
「人間とはその行いが共感されないと仲間外れにされ、その苦悩が死に至るとも聞いたんだがねぇ。チミの行動は悪魔が人間を殺すのと同じ……いや、それ以上だ。チミはいつか人間に殺されるんじゃないかい?」
「共感なんていらない。革命者は大衆から共感されるのは革命後であり、俺は革命後に憎悪される人間だ。俺は俺の快感の為に殺すだけ。悪魔ならいくら殺しても罪にもならず、むしろ喜ばれる」
「ククッ……人間であるのが不思議な男ね。チミより強い悪魔が……ゼロノス様がチミを殺す」
「そうだと嬉しいよ。奴は現世へ侵攻する為にデビルスターツリーに人間と悪魔の魂を集めているんだろ? だから今は管理ネットワークがある東京駅から動けない。必ず東京へ行き、俺はこの世の全ての理を破壊する」
「チミの向かう先は暗黒のようだね。悪魔のいる世界をもっと人間と悪魔の血と臓物で煮詰めたような暗黒……そんな世界にまともな人間が耐えられるわけがないわ。ボクチンはチミが友に、仲間に、人間に殺されると予言しておく。人間の心は悪魔より悪魔なら、そうなるのが必然」
「そう、人間の心とは悪魔を超える悪魔そのものだ。人間をわかって来たなハロウィン」
俺という人間には何を言ってもムダだな……とハロウィンも悟ったようだ。
「夜野星矢……やはりチミはゼロノス様を倒せる革命者なのかもねぇ。人間は弱いのに強い。それは欲や野心があるから。強いエゴは強い力となる。そして、いずれそれは同族にも向かう事になるだろうさ。それをわかっているなら、ボクチンはそろそろ……」
「待て、まだ聞きたい事もある。利用価値がある以上、渋谷の悪魔ボスであるお前はまだ殺さない。少しでも生きながられて情報をもらうぞ」
「ならコンソメポテチでも貢げよぉ……コンソメポテチで手を打てよぉ……」
すると、舞花が銃を構えたまま前に出た。自分でハロウィンにトドメを刺す気のようだ。
「星矢が殺すなら黙って見ていたけど、殺さないなら私が殺す。悪いけど、瀕死の悪魔は自分のしたくない事を無理矢理させると消滅するの。だからハロウィンから情報を得るのは無理よ」
「少しなら得られる情報もあるだろ? せめてゼロノスに味方している人間達。謎が多いゼロノス聖協会の連中の話だけでも……」
「そうもいかないんだよ夜野星矢」
ゾワッ……という悪寒と興奮が俺を刺激した。数日前に山手線内で聞いた奈落の底のような声は、俺の人生を幸福へと変えた存在。それはこの悪魔東京のラスボスである――。
「――悪魔王ゼロノス!?」
瀕死で横たわるハロウィンの真上に悪魔王ゼロノスが出現した。青い肌に黒く重厚な鎧を身に纏う悪魔王のいきなりの登場に俺と舞花は身構える。ジジジ……とゼロノスの身体は映像のように乱れていた。
(凄まじいプレッシャーだ……気迫で負けたら意識を失ってしまうぞ?)
東京からの映像のクセにゼロノスのプレッシャーは凄まじかった。決して気を抜かないように悪魔王との会話に入った。
「流石に東京から渋谷は遠いな。映……像が乱れているよ。何せ媒介が安定してないから映像の調子は良くないのを理解してくれ」
『……』
どうやら、瀕死のハロウィンの身体を媒介にして、ゼロノスは東京から映像を送って来ていた。映像調整をしている映像のゼロノスは言う。
「まさか渋谷エリアのボスがやられるとはね。我も人間達の結束には驚かざるを得ない。人間とは罪深き生き物だと再確認したよ」
「わかってくれて助かるぜ。そもそもお前は何故この東京という都市をデビルスターツリーにしたんだ? もっと人が少ない都市を選べば誰にも邪魔されずに済んだんじゃないか?」
「わかっていないな夜野星矢。東京とはストレスという悪意も多い。そして、電車というのは無限のエネルギーを吸収して排出している。だからこそ、山手線殺しは悪意に満ち溢れた東京を、悪魔東京へ変貌させる最高の手段だったのだよ。山手線中央にあるデビルスターツリーの誕生がその証拠だ」
「そうか……ならお前についた人間達はどうする? いずれ悪魔に喰わせて終わりだろう?」
「酷い事を言うね夜野星矢。我に従う人間は全て受け入れる。心に我を憎む意思があろうとな。ゼロノス聖協会とは善悪に満ちたカオスの楽園なのだよ」
「お前を憎しむ心は必ずお前を殺すぞ? 人間を甘く見ない方がいい」
「甘くは見てないさ。我は人間を知る為に協力者を置いてる。その憎しみも我の国造りの中で変えられるからだ。人の心は変わるもの。今は憎くても、いずれは変わる。このゼロノスを神とする意思が変えるのだ」
「貴様は悪魔だろうに」
「我は悪魔王から人間と悪魔世界の神になる。この狭い悪魔東京を脱した後にそれは訪れるのだ」
「悪魔は人間の想像した悪意の集合体から生まれた存在。ふざけた理想も長く続くと思うなよ」
映像のゼロノスは嗤っている。そして、媒介となるハロウィンの寿命も近いようで映像が乱れ出す。
「一つ聞こう夜野星矢。隣の彼女は君の新しいガールフレンドかい?」
プレッシャーを感じ、息を詰まらせる舞花は顔が青ざめていた。失禁すらしているようだが、戦う気持ちは折れてないから大地に立つ事を辞めていない。そんなギリギリの舞花の背中を支えながら俺は答えた。
「美空舞花はただの協力者だ。勘違いするなよ。舞花は俺より早く貴様を殺すかも知れない女だ」
「そうか。それは楽しみだ。なら君は女で苦しむ事になるだろう。星の巡り合わせとは、罪深きものだ」
「星の巡り合わせ? 何を言ってやがる? それより今はどの段階だ? いつ悪魔東京が現世と交わる日が来る?」
「偉大なる「ゼロノスデイ」はおよそ一月後。このまま行けばもうすぐゼロノス国家は誕生する。悪魔東京という閉鎖空間を超えて、現世のゼロノス国家が生まれるのだ。そのゼロノスデイまでに君達には生贄として死んでもらうから、運命の日に立ち会わせられないのが残念だよ。でも、ゼロノスデイからは我に従えば平和に生きられる。人間の悪意は我が管理するから人間から争いが消えるのだ。素晴らしい世界……だろう?」
どうやら、ゼロノスが現世に侵攻する事になるゼロノスデイは約一ヶ月後になるようだ。現世に悪魔が解き放たれて混沌となる生と死がカオスった空間になるわけでは無く、あくまでゼロノスに従う者は受け入れる世界にする。そして、人間の悪意を管理して平和な世界を生み出そうとしているようだった。
ゼロノスは管理された完全平和を目指している。
それは俺の答えとは違う世界だ。悪魔と人間は相容れない。人間の悪意は管理不可能。不完全で学ぶ事を辞めているような獣の人間達を、悪魔がコントロール出来るはずも無い。少なくとも俺はそうだ。そして、ニンマリと歪んだ笑みを見せて悪魔王は言った。
「縋るものが無ければ、人間は生きていけまい」
「あれが……ゼロノス様」
いつのまにか、俺の隣にルーンメイズのドクターがいた。そのドクターはケチャップを口元に付けながらゼロノスを崇拝する信者のように見つめていた。ドクターはゼロノスに興奮しているが、俺は言わなくてはならない。
「ドクター。何故ゼロノス様なんだ?」
「ドクターは悪魔が出てくるようなアニメ好きだからでしょ? 好みの問題よ」
という舞花を無視して俺はドクターを見つめる。ドクターはやけに冷たい目で俺を見返していた。だが、ドクターの趣味にとやかく言うつもりは無いから黙っておくか。でもドクターは話し出した。
「ゼロノス様のゼロノスデイが完全すれば、面白い事が起こるわ。人間の悪魔の魂を集めているなら、そこから死者すら蘇る世界が生まれるはずよ」
「そこの白衣の女はこのゼロノスをわかっているようだ。やはり星の巡り合わせとは素晴らしい」
何を言ってやがる? と思いつつゼロノスの話を聞いた。
「ゼロノスデイが完成すれば、楽園の世界を見せて信者にする。新世界では死者でも復活させられる。人間は自分の好きな存在だけといられる。幸福しかない空間。完全平和とは素晴らしいものだ。それを人間にもわかって欲しい」
甘い言葉を吐く悪魔王ゼロノスの言葉に、ルーンメイズの面々は聞き入っていた。しかし、それを幻想と振り払う。
「女が好きそうな甘い言葉ばかり吐くなよ? 悪魔王も女には弱いのか?」
「女性が多いのはいい事だ。君達の顔は忘れない」
そしてハロウィンの死が近く、かなり映像が乱れ出したゼロノスとの最後の会話になった。
「ゼロノス……貴様が現世に出ても、人間と戦わないならそれは悪だ。悪魔の力は戦闘と戦争をする為にある。他の人間達がそれを受け入れても俺は絶対に受け入れない」
「夜野星矢。君こそが悪魔だな。君だけはこの悪魔東京で殺しておくよ。我が過去に見えていたのも、我の右目を奪ったのも運命なのだろう」
「……」
「我は平和という行いで人間から共感を得る。君は破壊という行いを続けて人間から共感を得られない。人間社会は共感と学習している我と君の差は歴然だ。すでに君は敗者なのだよ。人間以上に悪魔な男……夜野星矢」
「そうだ。人間は悪魔以上に悪魔だ。そして、革命者は敗者でも勝者でも無い。革命者とは奇跡の星だ」
「そうか。奇跡の星だろうと共感者を得られない君はいつか人間を――」
「殺す」
モニターの役目だったハロウィンの頭を蹴り潰した。こうして、ゼロノスとの会話は終わりハロウィンも死亡した。渋谷エリアの悪魔達も、ボスの死亡により消滅し出したようだった。
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