59 / 102
第三章・自称:悪役たちの依頼
壱
しおりを挟む
「ただいま戻りましたー」
千代が新聞店に戻ると、新聞屋の姿がない。かわりに、古いデスクに赤いケープを着た白い兎が腰を据えている。右目にモノクルをつけ、さらに顔より大きな拡大鏡を持ち、片手に赤鉛筆を持っている。
刷り上がる前の原稿用紙を端から端まで見つめ、しゅばばばばばっと素早い動きで原稿用紙に赤が入った。
ふぅとため息をついた兎が拡大鏡と赤鉛筆を置き、モノクルを外す。もみもみとんとんと、肩を揉むことも忘れない。
「子兎ちゃん、今日もお疲れ様です」
「千代しゃん。おはようございましゅ。お疲れ様でしゅ」
子兎は千代より大先輩の校閲係だ。子兎の休みの関係で最初は出会わなかったが、出勤してくると同時に千代は子兎と仲良くなった。
「今日も真っ赤だねぇ、新聞屋さんの原稿用紙」
「これでもマシになったほうなのでしゅ……。あ、千代しゃん千代しゃん」
「はいはい、なんでしょう」
「新聞屋さんは豚肉を買いに行っていましゅ。お野菜は適当な大きさに切っておいてほしいとのことでしゅ」
「はーい」
千代は買い物カゴの大根を揺らし、新聞店の二階に上がる。二階は新聞屋の住居だ。台所を覗くと、すでに大きな寸胴鍋がででんと置かれ、ラップで封をされた皿に蒟蒻が乗っている。野菜類は千代が買ってきた大根を含め、人参、牛蒡、ネギと何一つ手をつけられていなかった。
「寒くなってきたから豚汁を作りましょう! ホッホー!」と言い出した主は誰だっけと、千代は首を傾げたくなる。
千代が新聞店に戻ると、新聞屋の姿がない。かわりに、古いデスクに赤いケープを着た白い兎が腰を据えている。右目にモノクルをつけ、さらに顔より大きな拡大鏡を持ち、片手に赤鉛筆を持っている。
刷り上がる前の原稿用紙を端から端まで見つめ、しゅばばばばばっと素早い動きで原稿用紙に赤が入った。
ふぅとため息をついた兎が拡大鏡と赤鉛筆を置き、モノクルを外す。もみもみとんとんと、肩を揉むことも忘れない。
「子兎ちゃん、今日もお疲れ様です」
「千代しゃん。おはようございましゅ。お疲れ様でしゅ」
子兎は千代より大先輩の校閲係だ。子兎の休みの関係で最初は出会わなかったが、出勤してくると同時に千代は子兎と仲良くなった。
「今日も真っ赤だねぇ、新聞屋さんの原稿用紙」
「これでもマシになったほうなのでしゅ……。あ、千代しゃん千代しゃん」
「はいはい、なんでしょう」
「新聞屋さんは豚肉を買いに行っていましゅ。お野菜は適当な大きさに切っておいてほしいとのことでしゅ」
「はーい」
千代は買い物カゴの大根を揺らし、新聞店の二階に上がる。二階は新聞屋の住居だ。台所を覗くと、すでに大きな寸胴鍋がででんと置かれ、ラップで封をされた皿に蒟蒻が乗っている。野菜類は千代が買ってきた大根を含め、人参、牛蒡、ネギと何一つ手をつけられていなかった。
「寒くなってきたから豚汁を作りましょう! ホッホー!」と言い出した主は誰だっけと、千代は首を傾げたくなる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる