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第二章・お鶴さんの恋愛事情
肆
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フワッ。
千代の眼前に、透明な球体が浮く。
千代が今まで見た球体のどれよりも明るく、耳に近づけると澄んだ音がした。
続いて、サァッと吹いた涼風が『清』の文字を形作る。
「『さぎ』は訓読みだ。音読みは『ロ』。名称の由来については諸説あるが。白く美しい立ち姿から『清い』を意味する『清し』が転じたという説が有力だ。
一方、犯罪の『詐欺』は【あざむく・だます・騙る】事を表す字を使った熟語。漢字は表意文字、つまり文字自体に意味がある。
よって、鳥の鷺と犯罪の詐欺は無関係だ」
文字屋の右人差し指が動き、球体が千代から離れていく。
「今回は相手の名前も良いしな。このまま結婚してほしいものだ」
「ええと……鷺介さん? あれ、この『介』って……【老人を介護する】とかに使うよね?」
「『介』の訓読みは『たすける・すけ』だ。音読みは『カイ』。
千代、お前の言う通り。『介』は『たすける・つきそう』の意味があり、『心にかける』という意味もある。文字だけみても良い相手だぞ」
「へぇ。文字屋くん、教えてくれてありがとう。ごはん食べたら、お鶴さんに『おめでとう!』って言ってくる!」
「祝うのはいいが。酒は与えるなよ」
(犯罪のサギと関係ないって分かったし! お鶴さん、幸せになれるよね! うん、きっと幸せになれる!
だって、良い名前だ……し……。あれ……そういえば……)
人差し指で球体をクルクルと回しつつ、文字屋が立ち上がる。
狐尾が襖の向こう側に消える直前。
千代は、小さな背中に声をかけた。
「ねぇ、文字屋くん。文字屋くんの名前はコハクだよね? どんな字を書くの?」
千代の眼前に、透明な球体が浮く。
千代が今まで見た球体のどれよりも明るく、耳に近づけると澄んだ音がした。
続いて、サァッと吹いた涼風が『清』の文字を形作る。
「『さぎ』は訓読みだ。音読みは『ロ』。名称の由来については諸説あるが。白く美しい立ち姿から『清い』を意味する『清し』が転じたという説が有力だ。
一方、犯罪の『詐欺』は【あざむく・だます・騙る】事を表す字を使った熟語。漢字は表意文字、つまり文字自体に意味がある。
よって、鳥の鷺と犯罪の詐欺は無関係だ」
文字屋の右人差し指が動き、球体が千代から離れていく。
「今回は相手の名前も良いしな。このまま結婚してほしいものだ」
「ええと……鷺介さん? あれ、この『介』って……【老人を介護する】とかに使うよね?」
「『介』の訓読みは『たすける・すけ』だ。音読みは『カイ』。
千代、お前の言う通り。『介』は『たすける・つきそう』の意味があり、『心にかける』という意味もある。文字だけみても良い相手だぞ」
「へぇ。文字屋くん、教えてくれてありがとう。ごはん食べたら、お鶴さんに『おめでとう!』って言ってくる!」
「祝うのはいいが。酒は与えるなよ」
(犯罪のサギと関係ないって分かったし! お鶴さん、幸せになれるよね! うん、きっと幸せになれる!
だって、良い名前だ……し……。あれ……そういえば……)
人差し指で球体をクルクルと回しつつ、文字屋が立ち上がる。
狐尾が襖の向こう側に消える直前。
千代は、小さな背中に声をかけた。
「ねぇ、文字屋くん。文字屋くんの名前はコハクだよね? どんな字を書くの?」
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