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第二章・お鶴さんの恋愛事情
壱
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駄菓子屋の店先で笑う、あやかしの子供達。
買い物カゴを持ち、商店街を歩く、獣人の着物美人。
千代はキャリングケースを手に、商店街を歩きながら新聞店へ向かう。
宵闇町の住民は三種類。
一つ。二本足で立ち、人語を話す動物を、獣人。
二つ。昔話や伝承にでてくるダイダラボッチのような存在を、あやかし。
三つ。その他。
(人間が、その他なのは分かるけれども。文字屋くんもその他っていうのは……なんでだろう?
本人に聞いても答えてくれなかったし……イズナちゃんも口止めされてたし……。新聞屋さんは『ホッホー! 文字屋さんは文字屋さんなのです! ホッホー!』だしなぁ……)
角を曲がる際、荷物を乗せて飛ぶ一反木綿と衝突しそうになり、千代は「ごめんなさい!」と言いながら慌てて避ける。
その声に跳ねあがった魚屋の客にも、心の中で謝っておく。
一つの商売につき、一店舗。
兼業はしない。
絵看板の多さと、文字屋が言っていた識字率の低さを考えれば。
“◯◯が欲しかったら◯◯屋に行く“という単純明快なシステムのほうが、町として成立しやすいのだろう。
(情報屋さんや探偵屋さんはないのかしら……。こう、パパッと探してくれるような!)
ないわね。うん、絶対ない。
千代が自分の考えにツッコミをいれ、歩きだそうとした矢先。
商店街の一角に、人だかり・あやかしだかりが見えた。
「あーもう! いい加減にしな! しつこいったらありゃしない!」
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