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第二章・お鶴さんの恋愛事情
壱
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「文字がない」
ペンネームの謎も解け。
いざ、元の世界へ帰らん!
千代の出鼻を挫いたのは、文字屋だった。
「えーと……文字屋くん。どういうこと?」
「天狐の力を借りるため、文字屋は文字を供物にする。供物となった文字は、この町から無作為に選択され、消滅する。一定期間が経てば、天狐がこれまた無作為に戻すがな。
文字屋は消えた文字を覚えているが。何処から消えたのか、何から消えたのか。それらは、文字屋にも知る術がない」
「質問です。文字屋くんはいろんな文字を知ってるよね? 文字屋くんが覚えている文字を書くのはダメなの?」
「文字屋は実存する文字しか供物に使えない」
「ええええ……神様のけーち。次の質問です」
「なんだ?」
「神様が消す文字は、本だけ? それとも、文字が書いてあればなんでもあり?」
「看板、新聞、果ては個人の走り書きまで。町内に存在する文字であれば、全てが消滅対象だ。
幸いなことに、現町民の識字率は低い。町長からの命令で、見知らぬ文字らしきものがあれば文字屋に持ってくることは知られているし、それに町もさほど広くないしな」
「…………ちょっとまって、文字屋くん。つまり………」
「千代。お前が元の世界へ帰るには。町内の何処かにある目当ての文字を見つけだし、俺に書かせるしか方法はない」
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