宵闇町・文字屋奇譚

桜衣いちか

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第二章・お鶴さんの恋愛事情

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「文字がない」

 ペンネームの謎もけ。
 いざ、元の世界へ帰らん!
 千代の出鼻でばなくじいたのは、文字屋もじやだった。

「えーと……文字屋くん。どういうこと?」

天狐てんこの力を借りるため、文字屋は文字を供物くもつにする。供物となった文字は、この町から無作為むさくいに選択され、消滅する。一定期間が経てば、天狐がこれまた無作為に戻すがな。
 文字屋は消えた文字を覚えているが。何処どこから消えたのか、何から消えたのか。それらは、文字屋にも知るすべがない」

「質問です。文字屋くんはいろんな文字を知ってるよね? 文字屋くんが覚えている文字を書くのはダメなの?」

「文字屋は使

「ええええ……神様のけーち。次の質問です」

「なんだ?」

「神様が消す文字は、本だけ? それとも、文字が書いてあればなんでもあり?」

看板かんばん、新聞、果ては個人のはしきまで。、全てが消滅対象だ。
 さいわいなことに、現町民げんちょうみん識字率しきじりつは低い。町長からの命令で、見知らぬ文字らしきものがあれば文字屋に持ってくることは知られているし、それに町もさほど広くないしな」

「…………ちょっとまって、文字屋くん。つまり………」

「千代。お前が元の世界へ帰るには。町内の何処かにある目当めあての文字を見つけだし、俺に書かせるしか方法はない」


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