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第一章・不吉なペンネーム
肆
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家に上がった千代が通されたのは、ショーウインドウがある部屋ではなく。
掛け軸と狐の像が飾られた床の間がある、客室だった。
広さは八畳。
床の間の前に文机が置かれ、上下に座布団が置かれている。
他の家具はない。
襖や天井に貼られた札の写真を、新聞屋が何枚も撮っている。
『人間。ここに座れですの」
ポムッ。
イズナよりも小さな煙の狐が、四匹現れる。
千代の胸はキュウウウンと高鳴った。
「かわいい! ちっちゃい! モフモフしてる!」
『人間。早く座れですの』
『梟。邪魔をするなですの』
『梟。大人しくしていろですの』
見た目に反した無愛想な態度も、ギャップ萌えのモフモフポイントが高い。
千代は今にも飛びかかりたい気持ちを押しとどめ、下座に正座する。
新聞屋が千代の横に座る。
四匹が、文机の上に下敷きを置き、半紙を置き、丸いつまみ付《つ》きの文鎮を置く。
襖が開く音にあわせ、四匹はシュルシュルと狐の像に吸い込まれていった。
「待たせたな」
襷掛けで着物の袖を上げた文字屋が、筆巻きと木箱を手に、姿を現す。
煙の尻尾で水差しを持ち、口で桐箱をくわえたイズナが、パタンと襖を閉じた。
「文字屋くん。室内でいいの? ダイダラボッチの時みたいになったら大変じゃ……」
掛け軸と狐の像が飾られた床の間がある、客室だった。
広さは八畳。
床の間の前に文机が置かれ、上下に座布団が置かれている。
他の家具はない。
襖や天井に貼られた札の写真を、新聞屋が何枚も撮っている。
『人間。ここに座れですの」
ポムッ。
イズナよりも小さな煙の狐が、四匹現れる。
千代の胸はキュウウウンと高鳴った。
「かわいい! ちっちゃい! モフモフしてる!」
『人間。早く座れですの』
『梟。邪魔をするなですの』
『梟。大人しくしていろですの』
見た目に反した無愛想な態度も、ギャップ萌えのモフモフポイントが高い。
千代は今にも飛びかかりたい気持ちを押しとどめ、下座に正座する。
新聞屋が千代の横に座る。
四匹が、文机の上に下敷きを置き、半紙を置き、丸いつまみ付《つ》きの文鎮を置く。
襖が開く音にあわせ、四匹はシュルシュルと狐の像に吸い込まれていった。
「待たせたな」
襷掛けで着物の袖を上げた文字屋が、筆巻きと木箱を手に、姿を現す。
煙の尻尾で水差しを持ち、口で桐箱をくわえたイズナが、パタンと襖を閉じた。
「文字屋くん。室内でいいの? ダイダラボッチの時みたいになったら大変じゃ……」
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