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第一章・不吉なペンネーム
参
しおりを挟む『……むにゃむにゃ……今晩の天気は……むにゃ……難しくて読めません……むにゃむにゃ……』
再度、ピリーンパァーンポーン。
沈黙したスピーカーを見上げ、千代があんぐりと口を開けた矢先。
黒と紫の中間色の空で弾けた光が、半分以上欠けた月に変わった。
「ホッホー! 見事な片割れ月。さすが文字屋さん、良い仕事をなされる。ダイダラボッチの水漬けが映えますなぁ。ホッホー!」
白いワイシャツに赤いネクタイ。
ベストと同じチェック柄のハンチング帽。
一眼レフカメラを手にしたフクロウが、水牢の周囲を飛び回る。
「ちっちゃい! カワイイ! モフモフしてる!」
「ホッホー! これは珍しい! 人間がいるとは! 良い記事が書けそうです! ホッホー!」
「きじ……きじ……記事?」
閃光の合間を縫い、千代は目を凝らす。
右羽の根元に、【新聞屋】の赤い腕章が見えた。
「新聞屋さん! あなた、文字に詳しそうね!」
「ホッホー! 貴重な写真を撮るチャンスです! ホッホー!」
「逃げないでー! 話を聞いてー! ついでにモフモフさせてぇぇぇ!!」
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