おれのツガイ

青空ばらみ

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 魔法のスティック?
 思わずパールに聞いてしまう。

「これも、登録してあるのか?」
「はい、してあります」

 やはりそうか……

「パール。登録してあると、どうなるんでしょう? わたしではこのステックが、使えないということなのでしょうか?」

 ソードがアゴに手を当てて、気になることを尋ねる。

 たしかにどうなるんだ?

「もらったばかりだから、わからないよ…… どうなるんだろう?」
「パール。おれにちょっと、貸してみろよ!」

 ガントが試してみると名乗り出た。
 
 パールが目を丸くして。

「えっ、それは…… もし、なにかあったらどうするんだよ?」
「少しぐらいなら大丈夫だ。取らないから、貸してくれ!」
「えーーっ!」

 おどろいているようだが、ソードもガントなら大丈夫だと援護する。
 よし、おれも……

「試しに、貸してやってくれ」

 あきらめたのか納得したのか、心配そうにスティックを差しだしている。
 パールからステックを受けとるガントは、オモチャをもらった子どものようにうれしそうだ。

 んっ、少し顔が ヒクついたか?

 パールも気がついた?

 心配で大丈夫なのかと尋ねている。

 大丈夫だと答えたガントはステックの使い方を聞き、薬草に軽く触れた。

「うわーっ!」

 どうした?
 叫んでステックを手放し、地面に落としている。

 パールが少しあわてて。

「ガント! 大丈夫?」
「あぁ、すごいな……」

 どうも、ステックを渡されたときから少し ピリピリしていたそうだ。
 それを無視して使うと、鋭い痛みが走ったという。

「ステックも、重い……」

 なるほど。

 今度はソードが持ってみたいと、スティックを拾ったパールから受け取っていた。

「うっ! ホントに少し ピリピリする…… それに、重い……」

 使うことは、やめておくようだ。

 やっとおれの順番か……
 ソードからステックを受け取る。

 クッ!?

「ホントだな。パールが気軽に持てる重さではないな、それに ピリピリくる」

 そのままパールに返すことにした。
 
「間違えて持っても、これならすぐに気づくだろう」

 登録とは、すごいモノだな……

 みんなで納得して馬車まで戻る。


 夕食は今日もシルバーウルフのステーキ。

 しっかりソードが何かハーブと漬け込んでいて、それが良い感じになってきたころだ。
 期待できるな……


「しかし、パールはテーブルマナーをどこで習ったのですか?」

 不思議そうにソードが聞いている。

 そうだ、おれも気になっていた……

「そうだよな? おまえ、キレイに食べるよな?」

 ガントも肉を食べ、笑いながら尋ねている。

「えっと~ 辺境伯の侍女さんや食堂で一緒に食べているみんなが、わたしが冒険者になるなら、お貴族様たちとも付き合っていくことになるからと、食事のたび指導してくれて……」
「それは……たいへんな食事でしたね……」

 ソードが目尻を下げ、気の毒そうに声をかけていた。

「はい……とっても……」

 少し遠い目をしたパールがこたえる。

 ああ、たいへんだったのだろう……

「これだけは、すぐに学べるモノではないからな」

 気持ちは、わかる。
 マナーは身につくまでがたいへんなんだ……

 冒険者になるまでの六歳で、これだけ身につけたのか?

 まだ小さな子どもだぞ。
 食事の時間は、窮屈でつらかったと思う。


 明日は国境を越える。

 超えてしまえば、もう何も心配はない。
 安心だ。
 お茶を飲みながら考えていると……

 えっ!?

 パールをどこで降ろすんだって?
 ゴタの噴水広場?
 
 そんなところでパールは馬車から降りるというのか?!

 国境を越えたら、その日は宿屋に宿泊だ。
 そしてもう一日走り、また宿屋に泊まると次の日の遅くとも昼には、ラメール王国の王都ゴタに到着する。
 
「そんな場所でいいのか?」

 頼まれている物の届け先がその近くだと?
 城からも近いし治安の良いところではあるが……

 そこから馬車で軽く半日、数時間で我が家メルの町に着く。
 パールが王都ゴタを観光して、メルの町にくるころには家と金貨を用意しておくと伝えておいた。

 人がこんなに心配して、しんみりしているのに……

 なにぃ?!

 明日から泊まる宿屋の宿泊費?
 そんなの、いるわけないだろ?!
 子どもがそんな心配しているのか……

 それに金(キン)は持っていても、お金(カネ)はないはず……

 ほほう……

 細工師の親方が少し金(キン)で両替したと。
 それなら金の確認も兼ねて、おれもしてみるか。

 金貨を十枚だす。

 なんだ? 
 難しい顔を一瞬したと思ったら……

「んーっ、もう少し細かいお金はありませんか?」

 もっと細かい……?

 ソードが スッと、小袋をだした。

「銀貨が、百枚入っています。それと金貨でどうですか?」

 ソードの機転で、パールは笑顔になる。
 そうか、もっと細かいお金か……

「じゃあ、金貨十一枚分で! 金(キン)は、砂金か塊のどちらがいいですか?」

 どちらも見てみたい……

「選べるのか? 両方はダメか?」

 パールは軽くうなずくと、腰のカバンから魔法袋を取り出す。

 ハッ!?

 これが、パールの魔法袋……

 時間停止か?
 見た目はおれたちの袋と変わらないな……

 その中から用意していたのか、二十センチ弱ぐらいの細いバンブの木に入っている砂金と親指と人差し指で輪っかを作ったぐらいの金の塊を二個ずつだしてきた。

「おーっ!」

 ソードが サッと金の塊を手に取って調べている。
 ガントは声をあげて、バンブの木に入った砂金を手のひらに出し調べだした。
 それからやっとソードが調べた安全なモノをこちらに渡してくれる。

「ホントに金(キン)だな……」

 ガントが声をもらす。

「あぁ、金だ……」
「そうですね……金ですね」

 ガントにつられて応えてしまう。

 これは……

「パール。この金はすごくよいモノで、両替ならもらいすぎになる。持って帰ってきた金はすべてこのレベルなのか?」

 パールに確認する。

「うん、全部こんな感じかな? あといままでの食事代もかねているから、どうぞ受け取ってください」
「おい、パール。これは、すごいぞ! 純度の高い金だ! おまえこれをどれだけ持って帰ってきたんだ…… いや、いい…… 言うなよ! 怖くて聞けん!」

 ガント、興奮しているな。
 気持ちは、わかるぞ……

「ホントに、すごくよいモノです……」

 ソードは冷静だ。

「パール。これなら…… 先程いっていた倍、両替してくれるか?」
「大丈夫ですよ。塊と砂金、どちらが両替のときは良いですか?」

 なんだと?
 両替分も選べるのか!?

 どれだけ持って帰ってきたんだ……

 すごいぞパール!
 
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