220 / 221
220. 気になるだけ?
しおりを挟む
あっという間に 十日が経ってしまった。
ブレンダが戻ってきて、新しい騎士服を着ている。
「ブレンダ! カッコいいね! 似合っているよ」
「ありがとうパール。 わたしも気に入っているよ」
「ホントですね。 少し変わっていますが、ブレンダによく似合っていますよ」
「ブレンダ! これでセルバに行くのか? ラメール王国の騎士だと分かりにくくてちょうどいいかもな!」
「ああ、ガント。 これなら変にセルバ王国でもラメールの騎士だと目立たないから行動しやすいだろ?」
「ブレンダその胸の丸い革、パールの瞳の色か?」
「ライ 気づいたかい? どこの国かは分かりにくくてもこれでだれの護衛かすぐにわかるだろ? わたしの案さ!」
「よく考えられていますね」
「でしょ ソード? ちょっと照れ臭いけど、黒も効いててカッコイイんだよ! ブレンダとお店の人といっぱい相談して決めたんだ」
「パール、待たせたね。 これでもう、いつでも出発できるよ」
ホントだ!?
「うわぁ じゃあ、もう明日行こうか!!」
「「「えーーっ!!」」」
「それは、ダメだよ。 みんなもおどろいているだろ? せめて、マークのところとモナルダのところにはこれから行くと報告しないとね。 そんなんじゃ、マークが悲しむよ」
「そうか……」
「パール、せめて送別会はしましょうね」
「ソード、そういうのはいいよ…… 」
「ふっ パールらしいね。 ソード、そんなに大層なことをしたら、パールは寂しいんだよ。 気持ちを汲んでくれるかい?」
「ふぅっ そうですか…… では、身内だけでおいしい物を食べましょうか?」
「うん、それがいい!」
「それじゃあ、明日いろいろ報告に回ってその次の夜だね」
「えっ? 明日の夜は?」
「マークのところで食べるよ。 その次の日がライたちとおいしい物を食べて、その次の朝に出発しようかね」
「うん、それがいい!」
「早いなぁ……」
「そうしますか? では、明後日に夕食会ですね」
「ソード? 何がうまい物になるんだ? いつもうまいからなっ! 楽しみだなっ パール!」
「そうだよね、ガント! 全部おいしいから、気になるよね?」
「ふ、ふふ。 楽しみにしていてくださいね」
♢♢♢
朝からモナルダのところに向かって、明後日に出発すると報告しにいく。
そのあと親方とメリッサにも報告に回って、今日は急いでマークのところまで戻ってきた。
少しでもテオといたいからね。
夕食は遅い時間にドラコの食堂で、シーナとテオそしてマークたちと食べた。
途中でテオは寝てしまったけど、また授乳で起きるかな?
最後はお店を閉めて、それからもみんなといっぱい歌って踊って、楽しく騒いだ。
ホント、久しぶりに心から大笑いした……
♢♢♢
今日は朝からなぜか、お風呂に入れられマッサージもしてもらい、プラムとシルエラが妙に張り切っている。
「パール様。 わたしたちは、ずっとパール様付きの侍女でございます。 これから数年お会いできませんが、お戻りになるころには、もっと精進してお待ちしております。 覚えておいてくださいませ」
「うん。 いままでありがと! 忘れないよ! でもね、わたしがライのツガイだとは決まっていないから、もし他の人が現れたら、その人にちゃんとつかえてよ」
「「それは、ないです!!」」
「ぷっ! いままで、いろいろありがとう! 侍女長にも伝えておいて。 ナンコウさんにも、感謝していると……」
「わかりました……」
今日はライの家、最後の日だから、一日ゆったり過ごすことにする。
部屋でゴロゴロしていると、ライからお茶のお誘いがあった。
珍しい時間だったけど、お茶を 二人で飲むことにする。
場所は庭の 一角で、薔薇がたくさん咲いているところみたいだ。
「パール、ここではソードもガントもブレンダも少し離れて待機してもらっている。 声が漏れない魔道具もおいている。 だから…… 安心して話してほしい」
「なにを、話すの?」
「なんでもいい、パールのことを知りたいんだ……」
「わたしのこと?」
「ああ そうだ」
「ライ、まだわたしがツガイだと決まったわけじゃないでしょう? だからこれからは、わたしを気にせず仕事を頑張ってね」
「仕事か?」
「そう、ライしかできない仕事がいっぱいあるでしょう? だって王太子だもん。 ツガイがだれだかわからないあいだは、ライにとって人に左右されずに生きていける大切なときでもあるんだから、思いっきり仕事や勉強、趣味なんかを自由に自分のためだけに時間を使ってできるじゃない?」
「人に左右されない? 自分のためだけの時間?」
「ツガイがホントに現れたら、そのツガイと 一緒にいたいから、それが 一番になって融通をつけるのもきっとたいへんだよ」
「いまはそれがないんだから、王様に付いて回るのが急にお泊りになっても、難しい会議が 一日中あったってひとりだから平気でしょ? いまはそういうのを後回しにせずに頑張ってやっておくことがライのためだし、王国のためにもなるんじゃないの?」
「いまはひとりで、一日中平気でいれる……」
「わたしはまだ 十歳で、二百歳のライがなにを考えているのかわからないけど、みんながいまの王様になって暮らしやすくなったといっているから、次の王様のライにはそれ以上にわたしたちの暮らしをよくしてほしいとみんなが願っているし、期待しているんだよ」
「ああ、それは わかっている…… パール、どんな王国にしてほしい?」
「えーっ どんな、だろう…… えっと…… みんながお腹を空かしているのに食べることができない、なんてことがない 国かな?」
「なんだ? 食べ物があったらいいのか?」
「違うよ。 それだけじゃあ、ダメ! お金を稼ぎたい人がだれでも働けて、自分の稼いだお金で食べ物が買える国かな?」
「仕事か? いろんな仕事を用意したらいいのか?」
「そうだね、働きやすい環境も大事だよ! そうしたら、子どもやおばあさんだけになっても、どうにか食べてはいけるでしょ?」
「そうだな……」
「なぁ、パール。 もしホントに、おれのツガイだとしたら…… ツガイになってくれるか?」
「んーっ? 難しい問題だね。 わたしはまだ 十歳で恋とか愛とかがわからないけど、そういうことを考える年齢になったときライのこともわたしの相手の候補には、ちゃんと入れるよ」
「候補?! 他にもいるのか?」
「いまはまだ 十歳だよ! いないし、まだ だれを好きになるかなんて、そんなことわからない。 そんな気持ちも 不思議な感じ? ライだって、いまわたしのこと好きなの? 違うでしょ? 気になるだけなんて、恋でも愛でも どっちでもないじゃない?」
「うっ そうなんだろうか…… 恋や愛……」
「ライ、いままでありがとうね。 これからもお仕事頑張って!」
そう伝えて、席を立った。
これでもう 大丈夫…… の、はず……
わかってくれたよねっ? ライ!?
ブレンダが戻ってきて、新しい騎士服を着ている。
「ブレンダ! カッコいいね! 似合っているよ」
「ありがとうパール。 わたしも気に入っているよ」
「ホントですね。 少し変わっていますが、ブレンダによく似合っていますよ」
「ブレンダ! これでセルバに行くのか? ラメール王国の騎士だと分かりにくくてちょうどいいかもな!」
「ああ、ガント。 これなら変にセルバ王国でもラメールの騎士だと目立たないから行動しやすいだろ?」
「ブレンダその胸の丸い革、パールの瞳の色か?」
「ライ 気づいたかい? どこの国かは分かりにくくてもこれでだれの護衛かすぐにわかるだろ? わたしの案さ!」
「よく考えられていますね」
「でしょ ソード? ちょっと照れ臭いけど、黒も効いててカッコイイんだよ! ブレンダとお店の人といっぱい相談して決めたんだ」
「パール、待たせたね。 これでもう、いつでも出発できるよ」
ホントだ!?
「うわぁ じゃあ、もう明日行こうか!!」
「「「えーーっ!!」」」
「それは、ダメだよ。 みんなもおどろいているだろ? せめて、マークのところとモナルダのところにはこれから行くと報告しないとね。 そんなんじゃ、マークが悲しむよ」
「そうか……」
「パール、せめて送別会はしましょうね」
「ソード、そういうのはいいよ…… 」
「ふっ パールらしいね。 ソード、そんなに大層なことをしたら、パールは寂しいんだよ。 気持ちを汲んでくれるかい?」
「ふぅっ そうですか…… では、身内だけでおいしい物を食べましょうか?」
「うん、それがいい!」
「それじゃあ、明日いろいろ報告に回ってその次の夜だね」
「えっ? 明日の夜は?」
「マークのところで食べるよ。 その次の日がライたちとおいしい物を食べて、その次の朝に出発しようかね」
「うん、それがいい!」
「早いなぁ……」
「そうしますか? では、明後日に夕食会ですね」
「ソード? 何がうまい物になるんだ? いつもうまいからなっ! 楽しみだなっ パール!」
「そうだよね、ガント! 全部おいしいから、気になるよね?」
「ふ、ふふ。 楽しみにしていてくださいね」
♢♢♢
朝からモナルダのところに向かって、明後日に出発すると報告しにいく。
そのあと親方とメリッサにも報告に回って、今日は急いでマークのところまで戻ってきた。
少しでもテオといたいからね。
夕食は遅い時間にドラコの食堂で、シーナとテオそしてマークたちと食べた。
途中でテオは寝てしまったけど、また授乳で起きるかな?
最後はお店を閉めて、それからもみんなといっぱい歌って踊って、楽しく騒いだ。
ホント、久しぶりに心から大笑いした……
♢♢♢
今日は朝からなぜか、お風呂に入れられマッサージもしてもらい、プラムとシルエラが妙に張り切っている。
「パール様。 わたしたちは、ずっとパール様付きの侍女でございます。 これから数年お会いできませんが、お戻りになるころには、もっと精進してお待ちしております。 覚えておいてくださいませ」
「うん。 いままでありがと! 忘れないよ! でもね、わたしがライのツガイだとは決まっていないから、もし他の人が現れたら、その人にちゃんとつかえてよ」
「「それは、ないです!!」」
「ぷっ! いままで、いろいろありがとう! 侍女長にも伝えておいて。 ナンコウさんにも、感謝していると……」
「わかりました……」
今日はライの家、最後の日だから、一日ゆったり過ごすことにする。
部屋でゴロゴロしていると、ライからお茶のお誘いがあった。
珍しい時間だったけど、お茶を 二人で飲むことにする。
場所は庭の 一角で、薔薇がたくさん咲いているところみたいだ。
「パール、ここではソードもガントもブレンダも少し離れて待機してもらっている。 声が漏れない魔道具もおいている。 だから…… 安心して話してほしい」
「なにを、話すの?」
「なんでもいい、パールのことを知りたいんだ……」
「わたしのこと?」
「ああ そうだ」
「ライ、まだわたしがツガイだと決まったわけじゃないでしょう? だからこれからは、わたしを気にせず仕事を頑張ってね」
「仕事か?」
「そう、ライしかできない仕事がいっぱいあるでしょう? だって王太子だもん。 ツガイがだれだかわからないあいだは、ライにとって人に左右されずに生きていける大切なときでもあるんだから、思いっきり仕事や勉強、趣味なんかを自由に自分のためだけに時間を使ってできるじゃない?」
「人に左右されない? 自分のためだけの時間?」
「ツガイがホントに現れたら、そのツガイと 一緒にいたいから、それが 一番になって融通をつけるのもきっとたいへんだよ」
「いまはそれがないんだから、王様に付いて回るのが急にお泊りになっても、難しい会議が 一日中あったってひとりだから平気でしょ? いまはそういうのを後回しにせずに頑張ってやっておくことがライのためだし、王国のためにもなるんじゃないの?」
「いまはひとりで、一日中平気でいれる……」
「わたしはまだ 十歳で、二百歳のライがなにを考えているのかわからないけど、みんながいまの王様になって暮らしやすくなったといっているから、次の王様のライにはそれ以上にわたしたちの暮らしをよくしてほしいとみんなが願っているし、期待しているんだよ」
「ああ、それは わかっている…… パール、どんな王国にしてほしい?」
「えーっ どんな、だろう…… えっと…… みんながお腹を空かしているのに食べることができない、なんてことがない 国かな?」
「なんだ? 食べ物があったらいいのか?」
「違うよ。 それだけじゃあ、ダメ! お金を稼ぎたい人がだれでも働けて、自分の稼いだお金で食べ物が買える国かな?」
「仕事か? いろんな仕事を用意したらいいのか?」
「そうだね、働きやすい環境も大事だよ! そうしたら、子どもやおばあさんだけになっても、どうにか食べてはいけるでしょ?」
「そうだな……」
「なぁ、パール。 もしホントに、おれのツガイだとしたら…… ツガイになってくれるか?」
「んーっ? 難しい問題だね。 わたしはまだ 十歳で恋とか愛とかがわからないけど、そういうことを考える年齢になったときライのこともわたしの相手の候補には、ちゃんと入れるよ」
「候補?! 他にもいるのか?」
「いまはまだ 十歳だよ! いないし、まだ だれを好きになるかなんて、そんなことわからない。 そんな気持ちも 不思議な感じ? ライだって、いまわたしのこと好きなの? 違うでしょ? 気になるだけなんて、恋でも愛でも どっちでもないじゃない?」
「うっ そうなんだろうか…… 恋や愛……」
「ライ、いままでありがとうね。 これからもお仕事頑張って!」
そう伝えて、席を立った。
これでもう 大丈夫…… の、はず……
わかってくれたよねっ? ライ!?
31
お気に入りに追加
617
あなたにおすすめの小説
私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!
神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話!
『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください!
投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる