上 下
207 / 221

207. 若夫婦と先代

しおりを挟む
 わたし好みがソードにも伝わった。

「きっと、ブレンダが言うように貴族から、庶民にまで売れる商品になるでしょう。 パールの書いた絵には、それだけの値打ちがあります。 ホントに先に聞いてよかったですよ」

 なぜか、みんながうなずいている。

「どうしましょう、ライ?」

「ここに来ているんだ、そう悪い商会ではないんだろ?」

「はい、審査は通っていますが、それは前の代の話で最近息子は、儲けに走っているという情報もあるんですが……」

「そうか……パール? このゆりかごが気に入ったんだな?」

「うん。 こんなにしっかりした良いモノを作る商会なら、安心だと思うよ!」

「しょうがない。 ソード、儲けさせてやれ」

 この 一言で、ガーベ商会はお金儲けができることが決定したようだ……

 すごいな、ライ……


 しばらくして、ガーベ商会の夫婦が呼び戻された。

 夫婦も、うすうすわたしが気に入ったものがないと感じているようで、夫のフレーさんの方がすぐに話し出した。

「お嬢様。 もしここにお嬢様のお気に召すモノがないようでしたら、すぐに明日 他のお気に召すモノをお持ちいたします。 ガッカリなさらず、どうかお好みを教えてくださいませ」

 頭を下げて、低姿勢で伝えてきた。

 ソードが小さなゆりかごを見せて話し出す。

「こちらの商品は? 少し他のモノと違いますね」

「「あっ!!」」

「申し訳ありません! どうして紛れ込んだのか? 隠居した父、先代エミールの手遊びの品でございます!  お目汚しいたしました……」

 どうしてこんなモノが紛れ込んだのかと、低姿勢で誤っているフレーさんの横で、わたしたちの話をメモしておこうと、ペンを握りしめていた妻のベルさんが握りしめていたペンを少し震わせながら話し出す。

「わ、わたくしなのです。 わたくしが、お義父様の作品を紛れ込ませました。 良いモノだとホントに良い品だと思ったからです…… 申し訳ございません……」

「なんだって! お、おまえ……   申し訳ございません! すぐに片付けさせていただきます!」

 夫のフレーさんの方は、想定外のことが続いて ワタワタ している。
 奥さんも頭を下げて、恐縮した感じだな……
 見かねてソードが話し出した。

「違うのですよ。 これがね、気に入ったそうなんです。 そうですよね、パール」

「うん、すごく良い商品だと思うよ。 ひと目で気に入ったしねっ!」

「わかりましたか? 良かったですね。 ではこの商品は先代の作った作品だったと? これはあなたが先ほど部屋を出るときに置いていったモノでしたね。 これについて説明できますか? 無理なら先代を呼びますが?」

「あ、ありがとうございます! この商品は、お義父様がわたくしたちの子どものために作ってくださったものなのですが、あまりに素晴らしい作品でしたので小さなモノを作ってもらったのです」

「じゃあ、もう赤ちゃん用はあるんだね! わたしは、このゆりかごを赤ちゃん用にしてもらうつもりでいたからよかったよ」

「ゆりかご…… はい。 わたくしたちの子どもが使っておりましたが、よく寝てくれて助かりました」

「パール、よかったですね。 これで、パール好みに作ってもらえますよ」

「うん! でもやっぱり、本物を見てみたいなぁ?」

「わかりました。 では、フレー きみたちの子どもが使っていたゆりかごを持ってくることはできますか?」

「はい! できます。 明日でよければ父親、先代を連れて参ります。 わたしどもより、もっと詳しく説明ができるでしょう!」

「パール? 細かいことは、また明日でもいいですか?」

「ありがとうソード! 忙しいのに明日もいいの? うれしい! そうだ先にラトルの説明をしておいたら明日、先代と話すときに話が早くていいよね?」

「そうですね。 明日は、先代のエミールでしたか? 連れてきてくださいね」

「はい! 必ず先代を連れて参ります。 今日はそれで、あの……  ラトル?  について、ご説明していただけますでしょうか?」

 ソードがわたしの描いた絵をもとに、もう 一度 注文する 二個だけ描いて、夫婦に説明しだした。

 夫婦は顔を見合わせて、これに近いモノを先代が自分たちの子どもに作ってプレゼントしてくれていると話し出す。 

 話がはやい!

 明日 一緒に、持ってきてくれるそうだ。
 
「楽しみだなぁ~」

 ガーベ商会のフレーさんは、なんだか少し難しい顔をしていたけど、夫婦は明日の準備をするからと急いで引き上げていった。

 これで、明日がすごく楽しみになった。

 ソードにはこのゆりかごについて、もう少し質問されたり、ラトルについてもいろいろ聞かれたけど水着ほどではないから ホッと した。


   ♢♢♢


 次の日、若夫婦と先代のエミールさんがやってきた。

 今回は先代とお嫁さんのベルさんが中心となって話しをするようで、メモをとるのはフレーさんにかわっていた。

「お嬢様、わたくしどもの商品をお気に召してくださりありがとうございます! 今回お持ちいたしました商品は、息子夫婦の子どもにわたくしと、商会の職人たちが精魂込めて出産の祝いに作ったモノでございます。 子どもが使っておりましたので、少し傷もありますがどうぞ見てやってくださいませ」

「ありがとう! 楽しみにしてたんだよ!」

 うわーっ?!

 見ていた小さなゆりかごより、実物の方が断然いい!

「すごくステキ! あの、触ってもいいですか?」

「ええ、ええ、触ってやってください!」

「すごい、スベスベ…… うん、しっかりゆれているね……   アレっ ちょっと揺れすぎ?」

「はっ!」

「その通りでございます…… この出来損ないの愚息が職人に命じて、昨日よく揺れるように変えてしまったのですよ……」

「あーっ 残念な感じですね……」

「はい…… 申し訳ございません。 ホントはこんなに揺れません……」

「よかった……ホッとしました」

 見かねて息子の奥さん、ベルさんがラトルを出してきた。

「お嬢様、これが子どもが使っておりましたラトル?でございます」

「あっ! ホント、ラトルだ!」

 続いて、エミールさんが別のラトルを取り出した。

「これは、お嬢様のおっしゃっていたラトルに似せて昨日作ったモノです。 どうか見てやってください」

「あっ! 棒状のラトル! キレイ作ってあるね! 軽いし、かわいい!」

「ありがとうございます! こちらはそのままお持ちください。 従弟様に使っていただけたら幸いでございます」

「えっ!?」

 また、難しい……

 ソードを見たら、うなずいていた。
 ブレンダもうなずいている。

「ありがとう?」

 もらっていいそうだ……


 しかしすごいな。
 わたしがテオにプレゼントすると知っているのか?
 商会の情報網はどうなっているんだ?

 まあ、かわいいテオが遊ぶラトルをもらったし、気分が良いから、細かいことは気にしない。


 テオ、このラトル よろこぶかな~?

 早く 遊びたいよっ!


 
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

きっと幸せな異世界生活

スノウ
ファンタジー
   神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。  そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。  時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。  異世界レメイアの女神メティスアメルの導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?  毎日12時頃に投稿します。   ─────────────────  いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する

清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。 たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。 神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。 悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...