上 下
184 / 221

184. 王妃様とお話し

しおりを挟む
 ソファとかわいい椅子がたくさんある別の部屋に連れて行かれる。

 でも、座る場所は選べないようだ。
 それとなく、案内された。

 王妃様の横……
 ライは、反対側の王妃様の横。

  こんなにソファがあるのに……

 それから小さなテーブルが自分の横におかれる。
 これでいただくのかな?

 デザートはベリー などの果物が品よく、切れ目付きで飾り付けられたパイ。
  二口で食べれる工夫つきだ。

 んっ?!
 これ、カベルネのところの干しブドウの味が少しする。

 あっ!
 ブレンダも気がついたみたい……

 最近カベルネのところのブドウにワイン、干しブドウも全部 口にしたからね。

 ブレンダと目が合う。
 二人で、にっこり笑っておいた。

 いつもより 一段と、香り高いお茶を 一口飲む。
 これは…… 鼻からも香りが広がる……すごいな。


「さあ、デザートもいただいたし、ライアン紹介してくれるかしら?」

「ああ…… この子はパール。 最近知り合ったんだ」

「まさか、それだけ……?」

「ハァー パールすまない。 話させてもらうよ。 パールは最近迷い人になったそうで、ピアンタ王国からラメール王国へ逃げてくる途中で知り合って……  おれたちを、当たり人にしてくれたんだ」

「まあまあ、ホントに迷い人なの? ディランがわたしと知り合う前に迷い人に会っているけど、それ以来だわ!」

「ああ。  記録として残っているわが国の迷い人だと、千四百三十年ぶりだよ母上。 そして当たり人の王族は、初めてだ」

「そう…… パールさん、母親としてライアンを当たり人にしてくれてありがとう。 感謝するわ」

「いえ、こちらこそ当たり人になってくださって感謝しています。 どうか王妃様、わたしのことはパールとお呼びください」

「ふっふ そうさせてもらうわね。 パールは、ブレンダも助けてくれたんでしょう? どうお礼をしたらいいのかしら?」

「そんなのは、いりません。 わたしは静かに暮らしたいだけなんです。 明日からは、準備ができた新しい家に住もうと思っています」

「パール! それは、どういうことだ! ここを出て行くのか!?」

「ライ…… 新しい家の用意ができたみたいだから、そっちへ住むだけだよ。 はじめから決まっていたことでしょ?」

「うっ」
 
 ソードが、王妃様に会釈してから話し出す。

「パール。 明日はマークのところにお土産を持っていくのですよね? トムたちが倉庫を建てて、魔牛を待っていますよ。 しばらくは、料理どころではないんじゃないですか? シーナもお腹が大きいですし、これからはマークもなにかと忙しくなる時期では? そこへパールがひとりで暮らすとなったら、どうなります? マークが心配して、家が近いだけに行ったり来たりして、もっとたいへんになるでしょう。それにパール?  ストックの料理もだいぶ少なくなってますよね?   また補充しないといけません。 新しい家には、料理の補充が終わってからでどうですか?」

「ソード……そうなのかな? 家が近いから、マークがたいへんになるのかな……」

「そーだよ! パール。 マークがたいへんになるよ。 それよりもまた、おいしい料理を料理長に頼んでおくから、いっぱい作ってもらおうな」

「うん、ありがとう……ライ」

「パール! 帰ってきたところだぞっ。 ゆっくりして、今回の冒険の話を聞かせてくれよ!」

「ガント…… 冒険は、すごく楽しかったんだ!」

 パッ!

 王妃様が、おもむろに扇子を広げて……

「なんだか、パール……    あなた、たいへんね……     パール…… あなた、何歳なの?」

「はい、十歳になりました」

「そう、まだ 十歳なのね……」

「これからも いろいろと まあ……  あると思うけど、ライアンをよろしくね……  もう少しブレンダからも聞いて、それから……少し考えるわ」

「いえ。 わたしのほうが、いろいろライたちに助けてもらっています」

 ちょっと、意味不明な会話を王妃様と最後にして、お開きになった。

 わたしはもう少しここで、お世話になるみたいだ……


  ♢♢♢


 朝はやく、王妃様はブレンダを連れて王宮に帰って行った。

 朝食のときに教えてもらう。
 あいさつできなかったけど、いいんだろうか?
 ライは大丈夫、いつものことだと言っていた。

 マークには、朝こっちへ来なくてもわたしが行くと昨日のうちに伝言してもらっている。

 昨日のソードの話で思ってしまった。
 少しは、ゆっくりさせてあげないと……
 

 ボードで、マークのところにお土産を渡しに行く。

 ライがついてくると言ったけど断らせてもらった。
 ライが王太子だとわかったから、みんなが緊張してしまう。

「久しぶりに、家族に会うんだから緊張した顔以外で会いたいよ」

「なるほど…… では、終わったらすぐにボードで、帰ってくるんだぞ」

「わかった。 ライは、マークと 一緒で心配性だね。 マークもすぐ、ボードで帰れっていうんだよ」

「そうか…… 一緒か」

 ブフォッ!

 んっ?  なに?

 三人に送られて、ボードでマークのところへ向かう。 

 トムさんとトーマスが、サッと ボードの囲いまでやってきた。

 外で、待っていたのかなぁ?

「「パール! おかえり!」」

「昨日はたいへんだったみたいだな…… 大丈夫だったか?」

「ただいま! トムさん、トーマス。 大丈夫だよ。 軽い晩餐会みたいなのはあったけど、それだけかな?
朝はやくに、帰られたみたいなんだ」

「そうか! まずは、シーナに顔をだしてやってくれ! 心配していたからな」

「わかったよ」

 宿屋は、いつはじめてもよい状態になっていた。
 あと看板をだしたら、お客さんが勝手に入ってきそうな感じ?

 宿屋に入って元気よく。

「シーナ! ただいま!」

「パール?! おかえりなさいっ!!」

 うわーっ!

「お腹が、大きいねー!?」

「ふ、ふふ マークも昨日同じことを言っていたわよ!」

「そうなんだ~ あれっ マークは?」

「ギルドに行ってるの。 そんなことより、聞いたわよ! 王妃様に会ったんだって? ライさんが王太子? 困ったことになったわね……  あと、ブレンダだったかしら? ルート様の護衛だったアース様みたいに、格安な条件でパールについてくれるっていうのは、ホントなの?」

 すごい、質問ぜめだ……  ハッハ。

「うん、わたしが結婚するぐらいまでついてくれるって言ってくれてたけど…… 王妃様がブレンダを連れて帰ったんだよ」

 ソードから聞いた話では、あの日王妃様が洞窟にいたのは、ブレンダを探しにいくと言い出したから。
 本来なら止めるはずのライが、なぜか自分も 一緒に行くと言い出して大騒ぎになったそうだ。
 冒険者ギルドのマスター まで来て、みんなで 二人を止めているところだったと教えてくれた。

「ブレンダは、王妃様に大切にされていたみたい」

「そうなの? じゃあどうなるか、まだわからないのかしら?」

「うん」


「なぁ もういいかい? シーナ?」

 トムさんが、痺れを切らしてやってきた。


 魔牛だな……
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

きっと幸せな異世界生活

スノウ
ファンタジー
   神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。  そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。  時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。  異世界レメイアの女神メティスアメルの導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?  毎日12時頃に投稿します。   ─────────────────  いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

一人暮らしのおばさん薬師を黒髪の青年は崇めたてる

朝山みどり
ファンタジー
冤罪で辺境に追放された元聖女。のんびりまったり平和に暮らしていたが、過去が彼女の生活を壊そうとしてきた。 彼女を慕う青年はこっそり彼女を守り続ける。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する

清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。 たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。 神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。 悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

処理中です...