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178. セイオクノモリ

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 その日はそのまま、マークとブレンダが遅くまでわたしのことを話していたようだ……
 飲んでいたとも、言えるけど……

 朝、二人はそれでもわたしより起きるのが早い。
 マークには、軽くヒールをかけてあげる。
 
 それをじっと、ブレンダが見ていた。
 
 キレイな魔法だと、ほめてもらう。
 マークも知らなかったようだけど、レベルの高い人の魔法は、キレイなんだそうだ。

 わたしのヒールをみて、ホントに レベル50 なんだねといっていた。
 信じてなかったのかな?

 それから、ブレンダとも相談して。
 メルの洞窟をでたら、しばらくブレンダの私用を済ませるまで別行動で、そのあとわたしが結婚するぐらいまでは護衛をしてくれると教えてもらう。
 
「ブレンダ、わたしは長生きだし、結婚するかどうかもわからないけどいいの?」

「ハッハハ! そうだな、パールはまだ 十歳だから、結婚なんてわからないのが当たり前。 わたしにはドワーフの血もエルフの血も人族の血も入っているんだよ。 だから、あと 六百五十年ぐらいは生きていられるはずだから、百年や二百年ぐらいは なんてことない、一緒にいるさっ! ゆっくりいい人を探したらいいよ。 これからは、長い付き合いになるからね。 よろしく頼むよ」

「はい。 こちらこそ、よろしくお願いします! いろいろ教えてくださいね」

「ああ、まずは私用を済ませてそれからは、どこでもついていくから安心していいよ」

 わたしはポーション作りをできるだけはやくしっかり教わって、もっと自由になることがいまは 一番の目標かな?

 ブレンダも生きて帰ったのなら、無事に敵討ちができたと挨拶しなければいけない人がいるようなのでそれを済ませて、そのあと剣を直して護衛の準備をすると言っていた。

 全部用事が済んだらマークの宿屋に顔を出すそうだ。
 
 だから、いまの剣の魔石より少し大きめの火と氷の魔石。
 それと、砂金細いバンブ 五本を渡してこれで準備してねと、いっておいた。

 ブレンダはおどろいて、マークをみている。
 マークは、無言でブレンダの肩を ポンポン とたたいていた。

「これは…… たいへんだね……」

「ああ、頼んだぞ」

 ケップラー王国のタルボさんの奥さん。
 ウルグベお母さんに教わった通り、良すぎず 多すぎず、受け取りやすいモノ。

 これぐらいなら、ブレンダに渡しても大丈夫でしょう?

 だって、わたしの護衛になるんだしね!
 
 剣は、大切!

 わたしからも、お金を渡した方がいいのかマークに聞くと、一応はマークの契約だけで、了承してくれたのであとはわたしの気持ちだと教えてもらっていたから、剣の代金や魔石はちょうど良かった。


 話がまとまって、いまからは何を狩るのか?
 
 薬草がいいと 一応伝えてみたら、ブレンダが薬草の情報を教えてくれた。

「この草原 西の奥へ進むと、強い魔獣も少しは現れるけど、そのまだ奥は途中から景色がちょっと変わって、草木が青々と生い茂る森になるんだよ。 そこは、薬草が豊富でね。 昔軽い怪我をした時には、その森で薬草を煎じて飲んだり貼ったりして、傷を癒していたものだけど……」

「このダンジョンにもそんなところがあるのか?」

「ああ、あるよ。 ただ遠い割に出てくる魔獣がしれているから普通の冒険者はまず行かない。 薬草の知識も必要だからね」

「いや、きっとそれだけじゃない。 その情報は、失われている」

「そうなのかい? そうだね、わたしが家族で冒険者だった 七十年から 八十年前の時の話だ。 冒険者仲間には『セイオクノモリ』で 話が通じていた」

「ブレンダ、メルの冒険者ギルドの図書室にもそんな名前の森はなかったよ?」

「パール、ギルドの図書室の本を全部読んだのかい?」

「へへっ、うん。 スキルコピーっていうのがあって、今は本に 十秒触れているだけで覚えられるんだよ」

「パール! おれは、そんなこと知らなかったぞっ!」

「あれっ? そうだっけ? いろんなところで使っているから気づかなかった…… ごめんマーク」

「ハアーっ もう 一緒に住んでないからな…… 仕方ないな……」

「たいへんだね……マーク。 これからは、安心していいよ。 わたしが、パールについてまわるからね」

「ついてまわる?」

「そうさ、どこでも 一緒だよ」

「寝る時も?」

「ハアーっ パール、おまえ…… アラクネだろ?」

「えへへっ、やっぱり あれが 一番いいんだよ!」

「なんだいそれは?」

「パールは、迷い人になっていろいろ向こうの国からもらって帰ってきているんだ…… その中にアラクネの生地でできた服があってな、気に入ってテントの中ではそればかり着ている。 特別な生地だから、外では禁止にしてしているんだが……」

「ほぉーっ そういう細かいところは、一緒に生活するようになってから覚えていこうかね…… アラクネ…… まあ、まずは『セイオクノモリ』だよ」

「そうだね! 今から行ってみよう!」


 道の案内人がいて、ボードで行くから、あっという間に到着だ。

 ピアンタのアストの森に似てる……

 それに人があまり来ない分、なんだかうっそうとしていて、緑も濃いかも?

「薬草が普通にあるだろう?」

「ホントだ!? ヨウモギ草もポポタン草もある」

 手に取ってみる。

「良いモノなんだよここのは。 普通に煎じてもよく効く」

「緑も濃いし、肉厚ですごく上質の薬草だね!」

「ホントだな…… これは、すごい……」

 どうして、こんないいところがあるのに知られていないのかな?

「ここは、ホントにA級の冒険者ぐらいしか来ないところだからね。 もしかしたら、いまA級の冒険者が少ないんじゃないかい?」

「ああ、そうだ。 そこまで級を上げなくても十分食べていけるしな。 A級のうまみが少ないんだよ」

「ああ、そうか……  前の王様がわがままで、A級の冒険者に無理難題を押し付けていたんだよ。 それで、減ったのかもしれないね」

「それはなんとなく昔に聞いたことがあるぞ。等級はB級が 一番稼げて安全だってな…… 理由までは伝わってないが、A級は名だけだと言われていたな」

「そうか、それでA級の冒険者が減ってここが忘れさられたのか…… この 二年で感じたことは、魔牛狩りをしている冒険者が多いことだね。 前にも狩ってはいたけど、あんなに人がいなかったよ。 あのエリアだけが異常に多い」

「魔牛は洞窟入り口から程よい距離で狩れて、大きくてうまいだろ? だから、金になるんだよ。 それ以上奥にいっても、たいへんな思いをする割には、うまみが少ない」

「ここの薬草を、集めてまわってもいい?」

「いいぞ」

 採取用スティックを出して、ちょんちょんと薬草を触り、集めていく。

 それにも、ブレンダはおどろいていた。

 マークがブレンダに、おどろくのも疲れてくるぞといってブレンダを笑わせている。

 意味がわからない?


 そんなことより ここの薬草。

 モナルダが よろこぶぞー!
 
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