迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ

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174. ブレンダとロゼット イチリン

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 まだその場所にも行ってないのに、ブレンダからお礼を言われる。

 そのあとマークとわたしに、絶対どんな状態になっても手をださないことを約束させられた。

「マーク、パール。 これは、わたしの 一生のお願いだ。 わたしが最後死ぬまで、イチリンには絶対、手を出さないでおくれ。 二年越しの悲願なんだよ! 特にパール。 わたしが傷つくのを見るのが辛いなら場所だけ教えてくれたら、ひとりで向かうからね。 安心していいよ。 さあ、場所を教えてくれるかい?」

 迫力いっぱいで、聞いてくるけど教えない。

「わたしたちと 一緒に行かないと、またイチリンに逃げられるよ」

「ウッ」

 テントを片付ける。

 ボードを出すと、おどろいていた。

 一応 二人乗り用だと伝えて、三人が安全に乗れるか確認してないけど、それでも乗るか聞いてから真ん中に乗せる。
 すぐ飛び降りようとするから、安全のために……

「ブレンダ。 何度も言うが、このボードはホントは 二人用なんだ。 わかっていると思うが、向こうのモノだからおれたちも使い方がイマイチわかっていない。 パールの安全のために、あまり雑なことはやめてくれ。 勝手に飛び降りたりしたらボードに残っているパールが危険なんだぞ」

「すまない…… つい、心が先走ってしまった。 そうだな…… わたしが悪かった。 もうおとなしく乗っているから、安心してくれていい」

 すぐにでも戦いたい感じだから、ぐるっと風下から近づいていく。

 上から下に指さして、ロゼット イチリンの居場所を教える。

 ブレンダのからだに力が入っていくのがわかる。
 静かに、少し離れたところにボードを降ろす。

「マーク、パール。 ありがとう。 ここでお別れだ。 マークあとは、話した通りよろしくたのむ」

「ああ、安心して戦ってこい」

「ブレンダ…… 気をつけて……」

「ありがとう!」

 ゆっくりボードから降りると、一度上を向き、なにかつぶやいていた。
 そのあと猛スピードで走ってロゼット イチリンに向かっていく。

 マークとわたしは、戦いの邪魔にならないように、もう 一度ボードで上空へいき、空から見学することにする。

「パール、どんな風にブレンダがなっても手を出すなよ! 出しそうになるぐらいなら見るな! いいか、絶対に見ているだけにしろよ! ブレンダの誇りと思いを守ってやれ!」

「わかった……」

 見るのも辛い…… でも見ないなんて、できない。

 ブレンダがイチリンのところまで近づく。


「ロゼット イチリーン! やっと出逢えたなーっ!  ハッハハ!  おまえだけは、絶対 許さない!  息子のかたきー!     ブラントのかたきだー!  死ねーーっ!!」

 うわーっ!?
 正面から、声をかけて戦うのか!
 よっぽど怒っているんだな……
 
 イチリンもなぜかおとなしく、ブレンダが話終わるまで止まっている。

 でも、あっ! 

 体勢を低くして、尻尾とお尻を振っているっ!

 これは? 見た! 
 危ないっ! 火を吐く?!

「マーク! イチリンのこのポーズは? 火を吐くんじゃないのっ?! ブレンダが危ない!!」

「パール。 黙ってみていろ! ブレンダの気が散る。 大丈夫だ! ブレンダを信じるんだ……」

 マークに言われて、ハッとする。
 気が散る……  
 それはダメ! 大きな声は絶対ダメ 危険だ!

 あっ! やっぱりっ! 

 イチリンがブレンダに向けて炎を吐いたーっ! 

 あーっ こわいー!!

 うわっ! ブレンダが、横に飛んだ。

「そうか! イチリンの吐いた炎の道筋からズレればいいんだっ」
 
「ああ、そうだな。 威力が強い分、火の道筋はハッキリしているからな。 ただ、逸れきるには、あの短時間では無理だろう……」

「えっ! ホントだ…… ブレンダ……右肩を押さえてる…… アッ ポーション! 緑色しているから、中級ポーションを飲んだんだ!」

「飲むのが早い」

「でも、ほらまた元気になったよ! よしっ 頑張れ!」

 その間も、飛びかかるイチリンを剣で逸らしたり交わしたり、ブレンダは戦っていた。


「どうーした! もーー 火は、吐かないのかー! それなら、こっちからいくぞ! アイスッ!」

 イチリンの足元と肩に氷の矢が刺さる。

「氷の魔法剣?」

「ああ、そうみたいだな 」

 イチリンが、けたたましい咆哮をあげ、威嚇している。

「痛いのか? わたしの息子ブラントは、熱かったはずだあー! おまえの痛いのと、どっちがましだろうな~ ハッハハ! アイスッ!!」

 イチリンの肩や背中に何本も氷の矢が突き刺さっているけど、致命傷までにはいかない……


 グゥオーッ!!


 イチリンが上をむいて 吠えたーっ!

 うわーっ イチリンのからだから、湯気がでて氷の矢が全部溶けたよ~!?

 イチリンがまた低い体勢をとったー!

 目が、イチリンの目が鋭く光っている……怒ってるんだ。

 ブレンダは、微笑んでいる……
  
「マーク……ブレンダ笑っているよ? なんで?」

「ああ、二年も探した息子ブラントさんのかたきがとれるんだ…… そらぁ、うれしいんだろう……」

「そうか、二年も探した相手だもんね……」

 そんな話をしているあいだに、イチリンの火を吐く準備ができたのか?

 そう、気がついた。

 あのからだを低くする体勢は、火を吐くための準備をしていたんだと……

 ブレンダが、片膝をつく。

「えっ、逃げないの?」

 魔剣をイチリンに向けて、炎に迎え討つ?

「イチリンが火を吐くぞっ!」

 ウワーッ 火がーーっ!

 ブレンダは片膝をついたまま叫ぶ!


「アイスシールド!!」


 氷の魔剣から氷が大量に出て、盾のようになっていく…… 

 こんな魔剣の使い方があるんだ……
 でも、最後まで持つだろうか?

「すごい、あんな魔剣の使い方があるんだね」

「ああ、だがあの盾はイチリンの炎に最後まで持ちこたえられるのか……」  

 イチリンの黄色い炎とブレンダの青い氷の盾が押し合って、だんだんブレンダの表情が険しくなってきた。

 こわいっ!


「あぁーっ 終わった~   ギリギリ持った~ よかったよ~ぉ」

「いや。 片手が真っ黒だ……  あれでは……」

「あっ、またポーションを飲んだ。 紫色だから今度は上級ポーション! これなら手も治る。 よかった!」

「ブレンダ……  あなたは……」

「さあ、イチリンよ これでふりだしだな! ハッハハ! おまえ、今日はもう火は、使えないだろう! バカなヤツ! さあ、こい!!」

「なんと!? ケンシコは、一日に 二回しか火が出せないの? マーク?」

「おれも知らなかった。 今まで避けて会ったことのない魔獣だったしな。 ブレンダは 二年のあいだに、どれだけのケンシコと戦ってきたのか…… これで、よくわかるな……」

「うん…… たいへんな 二年だったんだろうね……」

「パール、絶対じゃまするなよ!」

「わかってるよ! つらくなっなら見ないようにする…… よ」

 そんな話をしているあいだも、ブレンダは戦っている。

 こわくてつらいけど、見ない選択肢はない……  

 わたしはブレンダを、心の底から応援していた。


 ブレンダ、頑張って!!



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