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173. 見つけた!ブレンダさん!

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 えっ、この人が? ブレンダさん?
 見つけたの?!
 うそっ よかったーー!!

「あれ?でも、えっ、ホントにこの人なの? そう思えば騎士らしく大柄な女性だけど、モナルダよりは若く見えるね。 でもシーナと比べると、年上に見える……   じゃあマークと同じぐらい? 八代目の王妃様から仕えているなら、ホントは百歳をとうに超えているはずの人だよね~?」

「えらく長い難しいたとえだな……  人族じゃないとまあ、そうなるな」

「初めて会ったときから、そう変わっていない。 少しやつれてはいるけど、間違いないブラントさんのお母さんブレンダさんだ」

「それじゃあ、もう下級ポーションじゃなく、ヒールかけとく?」

「いや、見たところ怪我もないし、疲労と寝不足だろう。 下級ポーションで目覚めたら、きっとすぐロゼット イチリンのところに行こうとするだろうしな…… どうしたものか? 寝かせておくか?」

「そうだよね、からだが寝たがってるなら睡眠をとってスッキリした方が魔法で癒すよりいいよね」

 マークと相談して、この場所にわたしのバリアを張り、中が空のテントをだす。
 そこに親方が作ってくれたベッド、お客様用を 一つ置き、ブレンダさんを寝かせておいた。

 その側にわたしたちのテントを出して、前にはドカッと目立つようにテーブルと椅子を出しておく。

 マークが今日はここで、見張りをかねて寝ると言っていた。
 わたしは家族用テントで、いつものように休む。

 食事はテント前のテーブルに出し、簡単にすませる。

 いつ起きてもいいように、魔道具の水瓶とリンゴとオレンジは出しておく。
 マークがひとつ木桶がほしいというので、数枚の布と 一緒に出しておいた。

「マーク、ブレンダさんにクリーンの魔法をかけようか?」

「そうだな。 女性だし、それだけはかけておくか。 でも、木桶と布もそのまま置いといてくれよ」

 軽くうなずいて、そのままブレンダさんが寝ているベッドまで近づき、クリーンの魔法をかける。

 ホントは、ヒールもかけたい……
 からだは、大丈夫なんだろうか?
 怪我してないよね……

 寝ているブレンダさんの前で、そんなことを心配してしばらく考えていると……

 わっわっわー?!

 ブレンダさんのからだの上にグレー のモヤが、現れた!?

 ひぃぇ~っ!

 そのあと、そのグレー のモヤが広がっていき、フワッと ブレンダさんの全身を覆うようにして スッと 消えてしまった。

 あっ!? 

 なんとなく、怪我しているところがわかる?!

 深い怪我はない……
 やっぱり疲労だね。

 よかった……
 
「パール? 何しているんだ? ヒールはかけてないよな?」

「うん。 怪我してないかなぁ~って心配してたら、なんとなくグレー のモヤが現れて、ブレンダさんのからだに フワッと 広がって、からだの様子がわかったんだよ。 ビックリしたーっ!」

「えっ、からだの様子がわかったのか?」

「うん、なんとなくだけど。 たいした怪我はしてないし、やっぱり疲労みたい」

「そうか…… よかったけど…… おまえ、すごいな。 これも、人に言うなよ! おれにはモヤなんて見えてなかったからな」

「えっ、うそ! フワッと、グレー の?  見えなかったの?」

「見えてないぞ」

 なんとっ! わたしだけが見えるのか?
 ヒールの光なんかは、みんなが見えるのに……

 でも、その方がやりやすいし、いいよね!
 いいこと知ったっ!

 わたしは早めに部屋で休むことにする。
 マークにもベッドをだそうかっと聞いたけど、もしブレンダさんが目覚めて、マークがベッドで寝ていたら変だからいらないと断られた。
 せめて、向こうの椅子にしようかと思ったら。

「パール、変な椅子はいらないぞ。 おれはできるだけ知らないですむ楽なことは、みんなと同じで知らないでいい。 向こうのモノは、もらった人が言っていたように、おまえがこれから作る家族たちだけのモノにして、それらは使った方がいいと思うぞ」

「わかった……  おやすみ マーク」

「ああ、おやすみ パール」


  ♢♢♢


 朝になってすぐ、イチリンの居場所をチェックする。

「よし、そんなに離れていないな……」

 顔を洗って、家族用のテントをでる。

 あっ!

 もう 二人は、起きていた。
 テーブルの椅子で、なにか話し込んでいるのかな?

「おはようー!」

「「おはよう」」

「ブレンダさん! からだは大丈夫ですか?」

「ああ、ありがとう。 昨日は、あまり覚えていないんだが、助かったよ。 さっき起きて、横のマークに詳しく教えてもらった…… 助けてくれたようだね。 パール殿」

「ぶ、は、はっ! ブレンダ、パールのことは呼び捨てでいい。 パールもおどろいているよ」

「ブレンダさん、そうしてくださいっ!」

「そうなのかい? 命を助けてもらった恩人を呼び捨てにするのは、気が引けるんだがねぇ」

「かまいません! パールで!」

「ふ、ふ、ふっ かわいいねぇ~ あんな小さかったマーク坊に姪っ子いや、子どもがねぇ~。 時が経つのは早いよ……」

「マーク坊……  ブッ! マーク……を、覚えていたんですか?」

 あらっ? マークに、にらまれた……  プフ。

「ああ。 仕事がら、人の顔は 一度見たら忘れないからね。 大概の人は、覚えているよ」

「すごい!?」

「すごいのは、パールじゃないか。 マークから聞いたよ。 迷い人になったんだって? このテントもすごいねぇ。  わたしも魔道具のテントは持っているけど、一人用だ。 こんなに大きくはない」

「パール。 ブレンダにはある程度話したけど、他言無用でお願いしておいたから、安心していいぞ」

「うん。 ありがとうマーク。 ブレンダさんも、よろしくお願いします」

「わたしのことは、ブレンダと呼んでおくれ。 それから、敬語もいらない。 迷い人のことは安心していいよ。 噂は良く聞くけどね、迷い人に会ったのは初めてだよ。 いい土産話ができた……」

「ブレンダさん…… ポーションは、飲んだの?」

「ああ、下級ポーションをマークに分けてもらってね」

「わたしも持っているから、中級も上級も魔力ポーションもあるから、遠慮なく言ってね!」

「ああ、ありがとう。 でもわたしも持っているから大丈夫だよ」

 話を聞くと、ロゼット イチリンと戦うために、中級と上級はとっておいたそうだ。

 三人で朝食を食べる。

 一応、家族用のテントから運んだけど、わたしが時間停止か遅くなる魔法袋を持っているとバレていると思う。
 
 そんなことより本題。
 
 魔獣ケンシコ。
 ロゼット イチリンの居場所。

 今は、ここから 一キロ以内のところにいる。
 そう、ブレンダに伝えた。

 伝えた途端に、椅子から立ち上がって少し上を向いたあと目を瞑っている……  
 手を見ると握り締めて、力がすごく入っているのがわかる……


「やっと…… やっと、出逢えそうだな…… イチリン」


 目を開けるなり、そう つぶやいていた……

 ちょっと だけど……

 こわかった。


 迫力ありすぎーーっ!!
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