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162. アラクネの生地

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 ケップラー王国のスリッパを、マークもここにいるあいだは、使うことになった。
 登録していないから、誰でも使えるというとおどろいて。

「これは、危険だ! 良すぎる。 パールだけでも登録しておけないのか? 盗られたらどうするんだ!」

「えーっ、この中にはそう人を入れないから大丈夫だよー」

「あまいっ! もう少し、もしものときに備えるんだ!それから、その寝間着アラクネってなんだ? あの魔物のアラクネか?」

「わからないけど、たぶん?」

 少し、わたしの肩を撫でてアラクネの生地の感触を確かめ、また頭を抱えていた。

「パール、このアラクネの生地のことを知っているのは誰だ?」

「アラクネの下着も使っているから、侍女長とわたし付きの侍女 二人。 あとモナルダのところのアジュガにサルビアとセージには下着を試着や採寸のときに見せているから知っていると思うけど……」

「そうか、それならまだ大丈夫か……」

「なにが、大丈夫なの?」

「パール。おまえ、その寝間着すごく気に入っているだろう? 下着もアラクネっていってるしな。 ライさんのところで用意してくれている下着だって、寝間着だって、すべて平民が着ている以上の物。 生地はシルクじゃないのか? それを使わず使っているんだ、よっぽどいいんだろ?」

「…… そうだけど。 実は、ライの家では、まだ下着しか使ってないんだよ。 ホントは、ベッドだっていま使っているモノが疲れもとれてすごくいいし、シーツもアラクネのほうが肌触り最高だし、寝間着もスリッパも、ここのほうが快適なんだよね」

「なんだ、それは……  もしかして、おまえがライさんのところを出たがっているのは、まさか そんな理由なのか?」

「あっ、バレてた? そうなんだよ! あとは、最高に幸せなんだけど、寝るときだけが少し 不満なんだ……」

「ハァー、そんなことで、出たがってたのか……」

 呆れられてしまったけど、マークには正直に話してしまう。

「ベッドだってここのは、ぜんぜん違うし。 起きたときも、ホントにスッキリしているんだよ」

 マークにもお試しで今日寝てみるか聞くと、少し考えてやめておくという。
 いま使っているベッドも、すごく良いベッドなのにそれが物足りなく感じてしまうのは、なんだかさみしいし、違う気がするといっていた。

 この部屋は、テントをもらった家族の家長。
 おじいさんの部屋で、主寝室と同じかそれ以上に良いモノが多かったと伝えると、そういうことは早く言えと怒られた……
 なぜ?

「それにしてもパール、おまえ思っていた以上にすごい モノ をもらっているな……   これは、ちょっと……  安全面はどうなっている? そういった モノ は、もらわなかったのか?」


「いっぱいもらったけど、そういえばあんまり付けてないかな……」

「よし、今からパールの安全面の確認だ!」

 「えーっ! もう眠いよーっ! 明日にしようよ~」

 なんとか、明日に変更してもらう。

 明日は、朝から 安全確認なのかな……

 ハァー

 マークが、熱いよっ!?


  ♢♢♢


 朝から予告通り、わたしの安全面の確認をすることになった。

 まずは、いま付けているモノを確認。

「 十個まとめれるリングに、赤ちゃんが初めて身につけるホントに軽いバリアとお年寄りがもつ補助リング。 正解な時間がわかるリングと魔力をためておけるリング。 あとは、お知らせ光に小さな盾の腕輪ぐらいかな?」

「いろいろ付けてるな…… でも、バリアにあたるモノをおれに渡したから、そこがやっぱり弱い。 それに攻撃する モノ がぜんぜんない……」

「攻撃は、いいよ~ あと、バリア? んっー なにか、あったかなぁ~ あのとき、いろいろもらったからな……」

(チェリー。 何か、バリアみたいなモノってもらってたかなぁ?)

(はい。 自分の魔力が 一定の基準を下回らないあいだは、バリアを張り続けることができるリングはどうでしょう。 それに、マークと同じリングもまだありますよ)

 へーっ

「マークに渡したリングと、自分の魔力が 一定の基準を下回らないあいだは、バリアが張れるリングがあったけど」

「おーっ、それなら おれと同じ、一番強いバリアを 一時間張れたら そのあいだに、次の対策がとれるだろう? でも 二つ持ったらダメなのか?  十個までまとめれるリングにぜんぜん入ってないじゃないか?」

 たしかに? まとめて入れておく。
 それから、昨日の続きでアラクネの話になった。

 マークがいうには、アラクネの生地というのはこの世界にはまだないそうだ。
 これからの新しい商品になるから、悪い貴族や商人に知られたら、たいへんなことになるらしい。

 ライの侍女長が知っているなら、もうソードの耳には入っているだろうから、あとはライたち次第だと教えてくれる。

「でも侍女長は、部屋で見聞きしたことはライたちにも黙っているといってたよ?」

「あのなぁ~ パール。 個人的なことはさすがに黙ってくれているだろうけど、下着の材質がすごく良くて、見たこともないモノで、それがアラクネだとわかっているのなら、メルの洞窟にも、樹海にも探せばいっぱいいる魔物だぞっ! 新しい商品。 町の特産品になるかもしれない モノ だし、自分たちもほしいだろう? 黙っているわけがない」

 おまえは、あまいっ と言われてしまう。

 そうなのか? 
 まぁ、特産品が増えるなら、メルの町にとっても良いことだし、わたしは問題ないけどね。

「おまえは、金に困ってないからそれでいいだろうけど、普通は自分が儲かる話を人に横取りされたらイヤだろう? 」

 そういうところが、うとすぎるから人と話すときは、言動に気をつけるよう注意される。

 自分が知らないあいだに、人に利用させてしまうことにもなりかねないと チクチクいわれた。

 とっ、いうことは…… 
 やっぱり、アラクネの寝間着もシーツもベッドも当分は、知られないように見せてはダメだということか? 

 これらもついでに、注意される。

 やっぱりか……
 
「そうなると、あーっ このテントは最高だな……」

「ハァー パール。 これから先、どうしたいんだ?」

「んっ、こうやってマークとも 一緒に冒険できたから、あとはもう少し、モナルダたちにいろいろ教わって、マークの赤ちゃんとも遊びたいし……   それから、セルバ王国に、いつかはいってみたいと思っているんだ」

「セルバか?」

「うん」

「遠いな……」

「ボードでいったら、たぶん近いよ」

「ボードか…… そうだな…… 帰ってこいよ」

「当たり前じゃない! 冒険したら、すぐ帰ってくるよ!」

「ああ、待っているからな……」

 生まれてくる赤ちゃんに、いっぱいお土産を持って帰ってくるというと、ほどほどになっと 言われてしまった。

 なぜだ?

 そこからは、また冒険の話になっていく……

 やっぱり冒険は、心が弾む。

 ワクワクするよっ!


 
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