上 下
152 / 221

152. ベビーベッドを注文する

しおりを挟む
 次の日、いつもよりだいぶ早くピアンタへ向かう。

「チェリー、最短コースを教えてね! 今日も休憩は一度で、日帰りを目指してみようと思うの」

「はい、今回は王都ゴタからですので、樹海の端を飛ぶコース。 メルの町からより長い距離のコースになります」

 最短コースで軽い休憩だけして頑張ったけど、お昼を過ぎてしまう。
 これでは、やっぱり用事を済ませてラメールに帰ると着くのが夜中になるな……  微妙だ。


 親方は、相変わらず店の前にある長椅子に座っていた。
 
「おーっ、パール! 待っていたぞ!」

「親方~ こんにちは! もうできたんですね! 見るのが楽しみ~ 」

「あっ、パールさん! いらっしゃい! ベッドできていますよ」

 店の奥にデンと置いてあるベッドは、複数のツタや花の模様が絡み合っていて、その中心に太陽のような大きな花のような複雑な模様が、浮き出るよう立体的に掘り込んである豪華な物だった。

「これは、すごいね……」

「予備で 三つ作ったから、全部持っていってもいいぞ!」

「いいの? ありがとう! 助かるよ。 ガントたちをもし泊めることがあるとしたら、三つ必要だからね」

「これを作るのは、やりがいがあって楽しかったぞ! またなにかあったら注文してくれ」

「じゃあ、ベビーベッド柵付きを 二つ?」

「なんだ? パールの伯父さんところの子どもは、双子なのか?」

「違うよ。 ひとつはマークたちにプレゼント。 もう一つは、わたしが持っていて、出先でもすぐに出してあげれるようにしようかなっと思って……」

「ほーっ、ひとつはおまえのだな?」

「まだあと 二ヶ月は大丈夫だと思うけど……」

「なにか希望はあるのか?」

「安全第一! あとは親方に任せるよ! なんなら、一つのベビーベッドは、あと 一ヶ月ぐらい遅くても大丈夫だよ。 そんなに早くは連れ回さないだろうしね」

「よし! 任せておけ!」

 元気な親方に返事をもらって、ベビーベッドの代金バンブの砂金を 三本渡す。
 足りるか聞くと 十分だと笑っていた。
 
 金のタマゴ入りお土産セットをまた渡してメリッサのところへ向かう。

 親方といると、元気をもらえるな……  ふふっ



 やっぱり今回も樹海の端で 一泊することにした。

 メリッサのところでは、マークたちに無事会えたと伝えて、モナルダの届け物とお土産セットも渡す。

 そして遅いけど、急いでアストの森に入った。

 慣れたポイントで薬草を採る。
 採取用スティックがあるから、簡単だ。
 ポーション作りの練習材料を集めておく。

 少し、深呼吸……
 緑が濃くて、気持ちがいい!


  ♢♢♢
 

 次の朝、モナルダのところへ先に寄る。

 メリッサからの荷物を渡し、また 三週間ほどメルの洞窟にマークと潜ると伝える。
 モナルダから、できれば何種類か薬草を取ってきてほしいと頼まれた。
 
「いいよ。 できるだけ探してみる!」

「無理はしないでいいから。 安全にたのむよ」

 笑ってうなずき、すぐライの家へ向かう。 


 裏庭の囲いに着くと、セバスチャンがやってくる。
 どうしてわかるのか聞いても、ふふふと笑って教えてくれない。
 謎だ?

 ライたちのところに通される。


「相変わらず早いな!」

 ガントが笑いながらいう。
 ソードはすぐに、わたし付きの侍女を呼んでくれた。

「パール、疲れただろ? この菓子は甘くておいしいから食べてごらん」

 ライが自分のお菓子を勧めてくれる。
 お茶が淹れられて、自分の前にもお菓子がきた。

 素朴な味。
 ナッツと干しブドウ入りだな……  おいしい。

「先にこっちに帰って来たから、マークにはまだ知らせてないんだ。 これから行ってくるよ」

「パール。 マークたちはいま食堂の準備でホントに忙しいでしょから、今日 一日ぐらいマークに自由な時間をあげてもいいのでは? パールがいくと、マークはパールに付きっきりですからね。 冒険の準備もあるでしょうし、パールも帰ってきた日ぐらいゆっくりしてはどうですか?」

「そうか…… そうだね。 明日の朝にいくことにするよ」

 ソードにいわれて、マークの自由時間まで考えてなかったと気づかされる。

 プラムとシルエラに、旅の汚れを落としましょうと部屋に連れていかれ、お風呂に入れられ ホッとすると疲れていたことに気がつく。

 マッサージ付きのストレッチをしてもらい、また新しい服に着替える。
 この服は、わたしの好みをもとに侍女 三人で意見を出し合い作らせた服だと教えてくれる。

 たしかに、わたし好みに近いのか?
 シンプルなラインで締めつけは少ないが……
 胸の上から切り返しがある、アジュガたちの服とはまた違う甘い、すごく女の子らしいかわいいワンピースだった。
 足首は見えないな。
 足先だけがみえている。

 これでは町にひとりで歩けない……
 誘拐されそうだよ。
 アジュガたちの服とは、なにかが違う?

 子どものうちにしか着れない、かわいい服も着てくださいと侍女長がいうから、うなずいたけど……

 色がピンクでこのデザイン。
 さすがにこれをおとなが着るとキツイかな?
 靴もセットのモノだし、侍女たちは ニコニコしているし……
 髪もパールの髪飾りで飾りつけられて、これからどこにいくのだろう。
 昼食だよね?
 
 いつものように最後に登場する。
 みんなにすごくほめてもらって昼食をいただく。

「パールはホントに飾りがいがあるから、侍女たちがよろこんで用意しているし、この頃の侍女たちは楽しそうだよな!」

「そうですね。 女の子がひとりいるだけでこんなに活気付くとは知りませんでしたよ」

「ホントに。 パール、ありがとうな」

「いろいろ良くしてもらっているのは、わたしだからお礼を言わなきゃいけないのはわたしだよ……」

「フフッ 明日は朝からマークのところへいくのですか?」

「うん、そこでいつからメルの洞窟に潜るか相談してくるよ!」

「パール、そんなに張り切ってケガしてくるなよ!」

「大丈夫! ちゃんとポーションは持っていくから」


 今日は少し時間に余裕がある。
 侍女長にもう少しお茶の淹れ方や歩き方などシーナに教えてもらっていたマナーよりも、もっと細かく教えてもらうことに。

「パール様は、食事のマナー も少しの手直しで大丈夫ですし、お茶の淹れ方もおおむね覚えられ歩き方も覚えられましたから、あとは実践ですね」

「別にそこまではいいよ。 どこにいっても困らない程度でいいから」

「それは、まだまだですね。では、これを覚えておいてください」

 プラムとシルエラがカートを押してやってきた。
 本?
 そういえば、ライの家の図書室にいってないな。
 
 大きなテーブルに どんどん置かれていく本を端から順番にスキルコピーしていく。

「これは、ラメール王国の貴族の系譜? 特徴と名簿もあるのかな? んっ、多いな。 アレッ ピアンタ王国のもある……  じゃあ、これはセルバ王国かな?」


 一度は行ってみたいな、セルバ王国……

 どんなところなんだろう……
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

きっと幸せな異世界生活

スノウ
ファンタジー
   神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。  そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。  時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。  異世界レメイアの女神メティスアメルの導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?  毎日12時頃に投稿します。   ─────────────────  いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する

清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。 たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。 神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。 悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...