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129. カベルネのわがまま

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 今日も昨日と同じメンバーで、岩を片付けていく。
 今日の家は山が近いせいか密集して建っているので、移動時間が短く サクサク 作業できる。

 ここらへんの家には、少し ゴツゴツ して ザラっとした丸い石が多く、粉っぽいモノ? が 持つと手につく。
 だから食べ物、料理のオモシにも使えないと、その家のおばあさんが愚痴っていた。
 まとめて積み上げてあったので全部片付ける。
 
「このへんの石は、ガントの顔の大きさぐらいのモノが多いね! 」

 ガントがおれの顔はこんなに大きいか? と笑いながらいったあと、こそっと近寄ってきて、でも 金の塊 はこのぐらいがいいといって笑わせてくれた。
 ソードもガントの顔の大きさはこれぐらいあると、笑いながらいったあと……

「そうですね。これぐらいの大きさだと、持とうと思うと持ててしまい、量があるとお年寄りには少し腰にきますね」

「そうなんじゃ! はじめはいいが、段々と 地味にくるんじゃよ」

「じゃあ、ここらへんの石も片付けてしまいましょうか?」

「おーっ! よろしく頼むよ」

 庭の端のほうによけてある石と家の横にある石も、すべて片付けてあげるとすごくよろこんでもらえた。

 どの家も同じような感じで簡単な作業ばかり、昼食を食べて午後からの作業もサクサク進み、今日の夜の宴会までだいぶ時間に余裕ができてしまった。
 
 カベルネが神妙な顔をしてやってくる。

「パール、これはオレのわがままなんだけど……      昔からどうしても中がみたい洞窟があるんだ……      その入り口に大きな岩があって、少しの隙間から チラッと 中がみえて……」

「カベルネっ! おまえ、三、四歳の頃に岩の間に挟まれて大泣きして、村中の人たちに大迷惑をかけた あの洞窟のことをいっているのか?」

「……父さん。 ああ そうだよ」

「あそこの洞窟近辺は、それから子どもの立ち入りが禁止になったはずだが…… おまえ、あんなにみんなに迷惑をかけておいて、まだ行っていたのかっ!」

 うわー カベルネのお父さんが、怒ってるよ。
 よっぽどみんなに迷惑かけたんだな……

「違うって、行ってないよ……  でも、忘れてもいない……  中が、どうしても 気になるんだ……」

 冒険者としても、年齢的にも カベルネの気持ちが ちょっとわかる。
 
 時間にまだ余裕があるから、まあいいか……

「いいよ! カベルネ。 その岩を 一度どけて、中を見てみよう。 危なそうなら、もっと隙間がないぐらいに置き直すよ。 そうしたら、カベルネみたいな子どもが またでてきても挟まれないし安心でしょ?」

「ホントか! 行ってくれるのか! パールありがとう!」

 よほどうれしかったのか、わたしに飛びつこうとして、ギリギリで 踏みとどまっていた。
 バリアがあるからね。 

 家族のみんなもその言葉で納得したようだ。
 挟まれたときはホントにみんな心配したんだな……

 場所もここから近いみたい……
 んっ? 
 あれっ もしかしてカベルネは、最初からこれが 目的なのかも……

 わたしが気づいたぐらいだから、他のみんなも気づいたようで……

 ソードが、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
 カベルネのお父さんは、カベルネの頭を ベチッと 叩いていた。

 痛いはずなのに、カベルネは笑っている。
 これは、確信犯だな……

 そこは山の端、木の影に ひっそりとあった。
 
「おまえ、よくこんな細いところに挟まれたな?」

 ガントがその岩の隙間を見て感心していた。

「ここにこんな場所があったのか……」

 ライも何度も集落に来ていたのに知らなかったといっていた。

 ソードが穴を覗いて、空気は流れているようですねといっている。

 ドア 三枚分ぐらいのまあまあ大きい岩だけど、もう サクッと 取り除く。

「おーっ!」

 カベルネが興奮していて、今度は ガメイおじいさんに ペチッと 叩かれていた。

 思ってた以上に中は広い。
 まずはガントが中に入って様子を見てくることになった。
 すぐに戻ってきて、中の様子を教えてくれる。

「中はしばらくいくと地下に続いている。うまい具合にもう 一段、下に降りれる場所があるから、今から少し降りてみる」

 そういうと、もう隠すのをやめたのか 魔法袋を取り出して灯りの魔道具? を出す。

 それにも、カベルネが反応していた。


「わたしも ガントと 一緒にいきたい!」
 
「パールがいくなら、オレだっていくっ!」

 カベルネがいいだして、だれもいけなくなる。
 わたしはカベルネと違って、冒険者なのに……

「パール、ガントが安全を確かめたら みんなで降りてみましょう」

 ソードにいわれ、諦めて待つことにする。

 待っている間、お父さんがカベルネに少し、お小言をいいだしたあたりでガントが戻ってきた。

 なにか 手に持っている?

 ちょっと興奮しているような? 
 目がいつもより開いて力が入っているような顔をして、真っ直ぐライのところにいくと、手の中の モノ を渡してなにか話していた。

 それから、お小言をいわれていたカベルネのところに走ってきて、ギュッと カベルネを抱きしめ……

「おまえ、カベルネすごいぞ! すごい発見だよ! ここは 宝の山だ! 水晶の山だったんだ!」

 カベルネを抱いたまま、グルグル まわって 大笑いしている。

 ライをよく見ると、手にはキレイな水晶の塊が握られていた。

「「「水晶!?」」」

 みんなで、ガントの言葉を聞き返す。

 なんでも、一段下に降りたあと 同じような間隔の、もう 一段下があったようで。
 報告に戻るのもめんどうだからまとめて報告することにして、安全を灯りで確認してからまた もう 一段下に飛び降りて探索したそうだ。
 そこはなにもない ガランとした 家 二軒分ぐらいの広さのところで、念のため灯りを当てて グルっと あたりをみて 帰ろうと思ったとき、ピカッと 光っている突起物を見つけたという。

 証拠に持って帰ろうと剣の鞘で砕いていたら、まわりの土が崩れて……

「カベルネ! すごい発見だ! 中はすごいことになっているぞ! おまえ すごいなー!」

 カベルネ 一家とわたしは、おどろきすぎて言葉がでない……

 ただ、ライの手にはキレイな透明の水晶が握られているからホントだとわかるけど……

 横にきたカベルネが 小さくひと言。

「やっぱり、夢 のとおりなんだ……」

 んっ、夢?

 カベルネくん? 夢 と おっしゃいましたか?

 どういうこと……

「なんだって? カベルネ、いま 夢 と いったか?」

 ガメイおじいさんが、カベルネの小さな声を拾う。

 カベルネは、正夢でも見たのかな?


 金 の 国 次は 水晶 の 山 ……


 あーーっ はやく中を見てみたい!

 どっちが、キレイかな~? 





 

  

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