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125. 大ドクダミの大行進

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 うわーっ!
 このブドウ畑には、幻影の魔法がかかっている?

 ホントに秘密のブドウ畑なんだ……
 ここは……  すごい?

 色が濃い黒ぽいブドウも、緑色に、赤いブドウも。
 これはなに? 混ざってる、レインボー?
 そんなブドウあった~?
 キレイに並んで、いっぱいある!

 こんなに いろんな種類が、あんな風に隣接して、いっぱい生る モノ なの?
 
「ここは、ワシらの秘密のブドウ畑じゃ」

 やっぱりー!

「パール、ナイショだぞ!」

「わかった、ナイショね!」

 しっかり、返事しておいた。

 そんなことを話しているあいだに、お年寄りの人たちが大ドクダミを囲うように立って、大ドクダミを見張っている。

 わ、わ、わっ

 ひゃ~ クネクネしだした……

 ちょっと気持ち悪いけど、おもしろい……   ぷふ

「踊りだしたぞー! みんな かまえろー!!」

 何事かと思うぐらい、みんな真剣な顔で大ドクダミの踊りをみている……

 ブハーッ!!

 カベルネが、吹き出した……

 やっぱりこれは、ちょっと笑える……
 あーっ、ダメだ!笑ちゃダメだと思うと……

 ブフーッ!!

 あーっ、笑ってしまった……

 ブブッ! 
 ブッ! 
 ブホッ!

 どこからか、聞こえる、こらえた笑い声。
 やっぱりみんな、おかしいと思っているんだよね!
 ちょっと笑ってしまったことに安心していると。

「根付いたぞー!!」

 どこかの大ドクダミが、ブドウ畑に根付いたようだ。
 これを合図にしてなのか、あっちこっちで大ドクダミが、根付き始めた……

 あわてて、近くに根付いた大ドクダミを ムンギュ と掴んで力まかせに引っこ抜く!

「フェ~~ 」

 うわっ くっさーーいっ!
 えーーっ! しゃべるの? イヤだ! 

 引っこ抜くたびに、そう大きな声ではなく、気の抜けた 悲鳴ぽい? へんな声がする……
 それに抜いたときが、一番くさい!

 横を見るとカベルネの大ドクダミからも……

「ヒヤ~~ 」

「くっさーーっ?!」

 カベルネも、顔をしかめ うなっている。
 二人で目が合ってしまった……

「すごいな……   これは 知らなかった……」

 そうなんだ 抜いたときの気の抜けたような、悲鳴のような声もこの強烈な匂いのことも知らなかったのか。

 まわりを二人でみると、みんなも少し顔をしかめて 抜いている。
 
「パール、大ドクダミの匂いはあきらめて、悲鳴のような声は、そういう音だと思おう……」

「そうだね! これは、音だよ!」

 こういうものだとあきらめて、二人でうなずきあって抜くことにした。

「 ヒィ~~」

「キャ~~」

「イヤ~~」

 力が抜けるイヤな音だ! これは音っ!

 あんがい力もいるし、根も微妙に長い。
 抜いても抜いても根付いていく大ドクダミの量に、頑張っていたお年寄りの人たちもぐったりしてきている。

 ガメイおじいさんもペクメズおばあさんも、抜くペースが段々と落ちてるみたい。

 カベルネが、しゃがみ込んで 頭を抱えて ボソッと。

「これは、無理じゃないか?」

 ペクメズおばあさんが、ガメイおじいさんに近づいて告げる。

「あんた、今回はあきらめよう……これだけの量を こんな連中だけじゃ無理よ……」

 まわりを見ると、もうしゃがみ込んでしまっている人たちもいる……

 ガメイおじいさんも つらそうだ……

そんな二人の様子を見て、しゃがみ込んで隣に根付いた大ドクダミを、抜かずに ポコポコ 叩きながら不意にカベルネが……

「ふーーっ、これだけの量を抜くのはたいへんだよ! こうやって頭を叩いたら ポンっと 抜けてくれたら楽なのにな~ぁ」

「そんなのがあったら、もう とっくにやっているよ!」

 ペクメズおばあさんがカベルネのぼやきを聞いて答えていた。
 そうだよね……
 おばあさんの言葉にうなずきながら、身体強化した腕で 抜いていく。
 もう、悲鳴は気にしない……   

「ヒェ~~」

 頑張っている者は、もう 数名しかいない。
 匂いは慣れた悲鳴さえ我慢したら、まだいける!

 カベルネが、あんまり無理するなよっといって休憩していて、ペクメズおばあさんに頭を ペチッと されていた。

 悲鳴ぽい音のあいだに。

「いたっ!」

 あきれて見ていて フッと ひらめく!?

 アレっ?

 わたしの採取用スティック使えるんじゃないのかな?
 あわてて、ズボンのポケットに手を入れスペシャルな指輪からだす。

 スティックを伸ばして、ブドウ畑に根付いている大ドクダミの頭? 土から出ている部分に触れる。

 やったー!!

 変な音もなく 消えてくれた。
 あーっ、もっとはやくに気づくべきだった……

「パール、おまえそれ なんだよ! そんないいのがあるなら、早くだせよー!」

「わたしも、いま気がついたんだよ! これで、一気に数を減らしてくるね!」

「「「おーーっ!!」」」

 見ていた人たちが、声を上げてよろこんでくれる。

 近くにある大ドクダミから、ポンポン 消していく。

 頭の部分を叩くだけだから、早いよ!

 わたしと 一番離れていたお年寄りの近くまで大ドクダミを叩いていくと、急に ワサワサ 葉が揺れる音が大きくなる。

「「「ヒヤ~~ッ!!」」」

 大音量の悲鳴に似た音が響くと、大ドクダミがいっせいにその場所で グルグル まわりだし、そのあと移動しだした。
 
 ブドウ畑を横断して 一瞬でみんなどこかへいってしまったようだ……

 「終わったな……」

「終わったぞ」

「終わりだ」

 どこからともなく聞こえてくる安堵の声。

「今回は、もう無理かとあきらめかけたよ……」

 ペクメズおばあさんがつふやいた……

 それからだんだん歓声に変わっていく。

「「「うわーーっ! やったーー!!」」」

 みんなが、わたしのところに集まってくれる。

「よくやってくれた! ありがとうよ」

「頑張ってくれたね!」

 みんなが、ほめてくれる……よかった。

 一番のお年寄りだと思われる人がやってきた。
 わたしの顔をじっとみて……

「その魔道具は、こっちの世界の モノ じゃないね……  お前さんは、迷い人かい? 今回の迷い人は、えらく若いんだねぇ……」

「「「えっ!」」」

 すごく直球で聞いてきた……
 しょうがないか……  
 やっぱりこんな便利な魔道具を使ったら、バレちゃうよね……

 カベルネが少し 震えている?

「パール、ホントなのか? 迷い人なのか?」

 あーっ、なんて説明しよー?
 そう考えていると……

 ドカドカ 人が数名 走ってくる音と 一緒に。


「どこだー!? 大ドクダミは、どこにいるーー? みんなーーっ! 大丈夫かーーっ?!」

 あーっ 聞いたことのある声が、また……

 向こうのほうから聞こえてきた声は、最近 同じようなことがあったときに聞いた……あの声。


 ガントだ!

 わたしが見えたのか、大きな声で……


「パーール!! またーーっ おまえかーーっ!?」


 今回は、ライにソードも やってきた…… 

 あはっ。

 




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