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119. レベル59からの魔法

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 みんなが笑顔でよかったといって、家に帰っていく。

 小さな集落だから、人が去っていくのも早かった。
 あっという間だよ。

 残ったのはまだ少しボーっとしているお兄さんと、そこへ抱きついているコウジュ。
 地面にペタンと座り込んで力の抜けたご両親とわたしの五人。

 はじめにお父さんが復活し、家に帰ると宣言した。
 わたしも 一緒に寄せてもらう。
 
 家に着く頃には少しずつ正気に戻ってきたみんなが、ポツリ ポツリと話し出す。

 わたしも考えながら歩いていた。

 ポーション買っておいてよかった……
 ホントにメリッサお姉さんには感謝だよ……

 家ではお母さんが、テキパキ動きだした。
 お茶を淹れてもらい、ひと息つく。

 んっ、これは なんのお茶?
 すっと爽やかで香りもスパイシー なのかな? 
 変わっているけど、おいしい!
 ふーぅ ひと息つけた……

 復活したご両親が頭を下げて、お礼をいってくれる。
 コウジュも復活して、こんどはお兄さんの腕を ペチ ペチ叩いていた。

「パール、ありがとう。 パールがいなかったらエント兄ちゃんはどうなっていたか……    そうだ、わたしシッソー を採ってくるね!」

 わたしがシッソー水を気に入って、売ってほしいといっていたことを両親に話し、家の裏に生えているシッソー を摘んでくると出ていった。

 なんだか色々あった後なので、ひとりは危なくないのか気になって聞いてしまう。
 ホントに家の裏だから大丈夫だと、お母さんが教えてくれたので少し安心する。

 コウジュが出ていくと、みんなの顔が急に真剣な顔つきになっていて……

 えっ、なに?
 怖いんだけど……

 お父さんとお母さん、お兄さんまでが横 一列に並んで頭を 三人で下げ、またお礼を伝えてくれた。
 お父さんが話しだす。

「パールさん。 今回は貴重な上級ポーションを譲ってくださり、ホントにありがとうございました」

 そのあとはお母さんが……

「こんな山の中まで、コウジュが無理やり連れて来たのではないですか? ヤハッシのハチミツも大量に買っていただいて…… なんていったらいいのか…… 」

「パールさん。あなたはぼくの命の恩人です。ポーション代はかならず、何年かかっても返します。 どうかそれまで待ってください。 お願いします」

 そうか、ポーション代を心配していたんだ……
 どうして急に神妙な顔をしているんだと思ったら……

「わたしが勝手にポーションを出してしまって、変な心配をさせてしまいましたね……  ポーション代は、いりませんよ」

「「「えっ!」」」

「それよりもこれからわたしがすることを、黙っていることができますか?」

「あなたはわたしの息子、エントの命の恩人です。だれにも言うなとおっしゃるなら、わたしたちは決して だれにも言いません。 安心して下さい」

 ひとつ、うなずいてから説明する。

「エントさんはまだケガが完治していないようです。お父さんもケガをしていますね……   これはナイショですが、わたしはヒールの魔法が使えます。二人をみたいので横になれるベッドと、椅子を ひとつ用意してください」

「えっ、この子はまだ治っていなかったのですか? それに、この人まで……   あなた、ケガをしているの?」

「うっ、どうしてそれを……」

「どうして 黙っているのよ! ケガは、どこなの?」

 夫婦喧嘩がおこる前に、エントさんにベッドルームへ案内してもらう。

 みんなで移動する。
 まずは、エントさんから……
 からだのケガを調べるので、ベッドにできるだけ薄着で寝てくれるように頼む。

 お母さんがすぐ、エントさんを上半身裸にしていた。
 まあ、男の人だし良いでしょう……
 お父さんもズボンも脱がせていておどろいたけど、二人でエントさんのからだのケガを全身チェックしているようだった。

 わたしもマークのときには、やっぱり全身チェックをしていたと思い出し、身内の人の気持ちがわかるから、騒がす黙ってみていた。

 見た目のケガは、上級ポーションで無くなっているからね。
 信じてもらえるか心配だったけど、お父さんがエントさんにベッドで横になるよう言ってくれる。
 椅子もお母さんが用意してくれた。
 軽くうなずいて、はじめることにする。

 まずは、どこが悪いのかチェックする。
 これはマークのときにはなかった魔法。

 強く念ずると、悪いところがある人の頭の上に少し モヤがかかる。
 詳しく知りたいと思うとその モヤ が悪い場所に集まっていく。
 そこを中心にヒールをかけたら治療がしやすくなるという モノ。
 ちょっと中途半端でわかりにくいし、地味な感じでどうなのかと思っていたけど……
 レベル59からの魔法だから、なかなか今まで人に使う機会がなかった。
 でも今回は、上級ポーションだけでホントにちゃんと治っているのか心配になって少し念じたら、お兄さんと 一緒にくっついていたお父さんまで、頭の上に モヤがかかっていてビックリだよ。
 こういうときには、便利で役立つと知った瞬間だった。

 寝ているお兄さんの上に手をかざして、悪いところはどこ?っと強く念じながら、頭から進めていこうとすると……

 あれっ?!
 まだ、頭? 
 頭に薄っすら モヤ がかかってる……
 これは……  
 そのあとも全身進めていく。
 うん、頭の中だな。
  こんどは、声にだして……

「エントさんのからだ。とくに頭が、正常に機能しますように……   なおれっ! ヒール!!」

 願いを込めて ヒールをかける。

 エントさんのからだ全体を、まぶしくはない優しい光が キラキラ 輝いて、光を放ちエントさんを包み込む。
 しばらくすると、最後にまばゆい光が ピカッと輝いて、スッと消えてしまった。

 わたしはからだの中から何かを持っていかれる感じがして、置いてあった椅子に座り込む。

「兄ちゃん!!」

 コウジュがシッソー を抱えて、すごい勢いで部屋に入ってきた……

 家の裏でシッソー を採っていたら、エントさんの部屋が 一瞬 ピカッと光ったみたいで、あわてて心配になって戻ってきたそうだ。
 お母さんたちも、我にかえってエントさんのところに集まっている。

 ベッドが端に置いてなくてよかった……
 しばらくすると、エントさんも目を パチパチして……

「母さん、父さん、コウジュ。もう大丈夫だ! 頭の ズキズキも治ったよ!」

「えっ? そんなのがあったなら、はやくに言いなさい!!」


 お母さんはおどろいて、少し怒っていた。

 みんなが 笑っている……

 よかった……

 さぁ、次は お父さんだよ!
 

 
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