迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ

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116. 国境を越える

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 今日は朝からみんなが、ニコニコしているように思う……

 なにか、あったのかな?
 あっ!
 ガントのおかげで、すぐに理由がわかった……

 ガントがテーブルの上に、金の塊をだして眺めていた…… 
 
「おはようございます、パール。 よく眠れましたか? すぐ朝食にしますから…… ガント、それをしまって手伝ってください」

「おう、パールおはよう! 昨日はありがとうなっ!」

 金の塊を持ち上げて、いい笑顔だ。

「おはようございます! 気に入ってもらってよかったです」

「そら、気にいるさ! なんたっておれが、当たり人だぞ! ピアンタほどではなくても、ラメールでもやっぱり伝説だからな!」

「ガントは、金の塊が気に入っているのではないのですか」

 あきれたようにソードが告げた。

 笑いながらガントがそれもあると、もう 一段 声高く笑っている。

 それを楽しそうにライがみているのが印象的だった。

 仲のよい三人……  フ フッ。
 
 今日はお昼過ぎには国境を越えて、目的の宿屋に着くので、それからゆっくり昼食になるとソードが教えてくれる。
 少し遅めの昼食になるのかな?

 馬車はガントの御者ではじまる。
 わたしも少し横に乗せてもらえないか聞いてみた。

「そんなところに乗って、どうするのですか?」

 ソードが不思議そうに聞いてくる。

「まわりの景色を少し高いところから、見てみたいんだよ」

「別にいいけど、ひまだぞ? 風があるから寒くないカッコで乗れよ」

「ありがとう! マントを着ていくから大丈夫」

 ライが小さな声で、なにか ブツブツ言っていたけどわたしには聞こえなかったので、よしとする。

 ソードがライと話していた。

 預けていた荷物を返してもらい部屋に戻って、肩から背負うカバンの中からマントをだす。

「よかった、シワにもなってない。チェリー このマントも、もらったってバレるよね? 登録しておこうか」

「はい。もういろいろ知られていると思うので、登録しておいた方が無難でしょう」

 チェリー にも勧められマントを調べると、首のところにそれらしき モノ があった……  そこに少し魔力を流す。
 一瞬 フワッと輝いて、登録 完了。
 急いでガントのところにいく。

 御者の席は思っていたより高くて揺れる。
 あたりまえだけど、景色がすごく見えて…… 
 気になったことをガントに聞いてみた。

「ガント。もしかしてここは、標高が高いところだったんだね」

「あぁ、そうだ。上がったり下ったりしながら、少しずつ登っていく」

「知らなかった……」

「なのにあたりは、木だらけだろ? 魔素の影響なのか、ここら辺の森林限界は少しおかしいんだ。もしかしたらここもダンジョンなんじゃないかと冗談でいうヤツもいる。獣も魔獣もでるからな。いまは魔獣よけの香を馬車につけているから、これでもマシなんだよ」

「魔獣よけの香? そんなのがあるんだ……」

「魔力の強い魔獣は、もっと奥の樹海や森林の中だ。ここら辺にでてくるのは、まぁ しれている。 数が多いときは、ちょっとめんどくさいがな……」

 めんどくさいけど、大丈夫なんだ……
 シルバーウルフも問題なく倒していたしね。

 でも、こんなにうっそうと木が生えていたら、ホントにいろんな薬草がありそうで薬草ハンター としては、気になるなぁ~

「ガント。ここらへんの薬草は、どんな種類が生えているの?」

「ここらへんか? さあ、ホントにここらへんの薬草を採るヤツを知らないんだよな。 気になるなら、ゴタの図書館に行って調べてみたらどうだ?」

「そんな、いいところがあるの? だれでも入れるのかなぁ?」

「ああ。少し金はいると思うが、誰でも入れるぞ。 パールが馬車から降りる噴水広場の近くだからすぐわかるはずだ」

「うわーっ いいこと聞いた! ぜったいに行くよ!」

「なんだ、パールは本が好きなのか?」

「本というより知識がね、わたしにはもっといっぱい必要なのかな? モノ を知るってすごいことでしょう? それには、本が手っ取り早いからね。 わたしのような子どもが冒険者で生き延びようと思ったら、知識は大切なんだよ!」

「なるほどなぁ~ は、は、はっ そのとおりだ!」

 しばらくいくとガントが馬車を止める。
 もうすぐ国境だから、中に入ってライのそばにいたほうが安全だという。

 ピアンタ王国は入るのも出るのも面倒くさいそうで、ラメールの商人だとわかると、行きも帰りもお金を請求するそうだ。
 冒険者個人にはないから、よかったけど……

 もうひとつの国、ラメール王国はどうなのかと思ったら、王都の門をくぐるときに少し検問があるだけで お金はかからないそうだ。
 ホント、国によって違う……

 馬車の中ではライとソードが話し込んでいるようだった。

「パール、戻ってきたのですね。もうそろそろ国境ですか? あちらのダミー の席に移りますよ。 ギルドカードをだしてください。一応、預かります」

「えっと、まだ仮登録のカードなんですが、大丈夫ですか?」

「あぁ、そうですね。 まだ 九歳でしたね。 大丈夫ですよ」

 ソードがカードをまとめて持って、もしものときの対応をしてくれるようだ。

 席を移って、しばらくすると馬車が止まった。

 なんだか、ガントの声が聞こえる……

 ちょっと、緊張してきたみたい……
 大丈夫なんだろうか? 

 あぁ …………
 この三人に、迷惑はかけたくないなぁ……

 扉が開く。

 国境の兵士? 
 馬車の中をのぞいて聞いてきた。

「全員で、四人か? なんだ? まだ、子どもだな? なぜいるんだ?」

「あぁ、おれのよく泊まる宿屋にいる子なんだが、知り合いのところに行くから乗せてやってくれと頼まれてな、断れないだろ?」

 ガントが笑いながら答えてくれた。

「まぁ そうだな…… もう いいぞ」

 バタンッ

 ソードがドアを閉める。

 まだ、ガントのしゃべっている声は聞こえるけど……
 なんとか無事にギルドのカードも見せることなく、国境を越えることができた……

 ふーっ

「無事に国境を越えましたね。 このギルドカードは返しておきます」

 ソードが少し笑いながら、カードを返してくれた。
 今回はガントの知り合いの人だったそうで、簡単にすんでよかったと話してくれた。

「パール、もう大丈夫だ! ここからは、なんとでもなる」

 ライもなんだかうれしそう……

「ピアンタ王国から無事、脱出できました! ありがとうございます」


 さあ、いまからはラメール王国になるんだ!

 どんな 国 なんだろー?

 さっきとちがう ドキドキ がする……


 




 

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