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87. 寿命が伸びる?!

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 お店の間口はタルボさんのお店と変わらないけれど、奥が広くてよく見たら、大きな家の 一部がお店になっているようだった。
 中に入ってすぐタルボさんに降ろしてもらい、お店を観察する。

「ただいま! 帰ったぞ! アリオ! 店を閉めろ!」

「父さん、おかえり。 そんなに急に店を閉めろとか、お客さんがいたらどうするんだよ! また母さんに怒られるよ」

 息子さんのアリオさんは、そういいながらお店を閉めにいった。
 
「えっ? ここ もしかして、タルボさんのお家ですか?」

「そうだぞ! タルボさん家は魔道具屋さんだけど、タルボさんだけ 迷いの森の近くで魔法袋の店をしているんだ!」

 そんなこと、聞いてないけど……
 もしかして、迷い人に会うために かな? 

「アレッ 父さん、お客さんですか?って  テトリじゃないか? どうしたんだ? その子は?」

「アリオ、おどろかずによく聞け。 この子はパールちゃん 迷い人だ! そして、わたしは 四人目に選ばれた!  当たり人に 選ばれたんだよ!」

「えーっ! ホントですか?! ホントに? 父さんが 当たり人に選ばれた……  か、か、かーさん!! 母さん! たいへんだ! 父さんがっ!」

「なにを店で大声をだしているんだい! 父さんがどうしたって? アラッ あなた、帰ってきてたの? いつもより はやいんだね。   んっ、テトリも 一緒。 その子は? もしかして……  テトリの ツガイ かい?」

 テトリをみると、またかっという顔をして、ため息をひとつ つくと、おもしろいほど冷静に。

「ちがいます……」

 ぷっふ。

 タルボさんが、わたしとテトリにお店のソファで座って待っていてほしいという。

 少し離れたところで、奥さんと息子さんに説明するみたいだ……

 ソファにテトリと並んで座る。
 向こうの方から大きなおどろく声が聞こえてきた。

 この間に、テトリにさっき腰のマジックバックの中で見つけたモノ。
 まだ誰に渡すか決まっていない、残っている リンゴが欲しいか、聞いておこうかな っと考えていると……

「また くるぞ……  黙って 飲めよ」

 えっ、なに?

「テトリ! もう少し、これを飲んで 待っててね!」

 タルボさんの奥さんがまた、あの 飲みモノ を持ってきて渡してくれる。

 もう少し時間がかかるそうだ……

 向こうから聞こえてくる声が、可笑しい……

「ヒィーッ 鉄ーーっ!! ぜんぶーー!!」

 テトリは、すまして飲んでいる。
 わたしもまた、飲んでおく……

 でもこれ、すごく飲みやすい。
 お腹もこれだけ飲んだら タプタプ しそうなのに、ぜんぜん大丈夫だ? なぜ?

 テトリに聞くにも時間があまりないから、まずはリンゴから、小さな声で話しだす。

「テトリ 実はね、もう 一種類。 果物が 二個あるの、リンゴ っていうんだけど……  テトリどうする? テトリが育ててみる? テトリが決めていいよ」

「パ、パ、パール! おまえ 急に、なにいうんだ……よ……  ま、まってくれ、考えるから……な。 リンゴが 二個か……   なぁ、それ オレがもらって育てられると思うか?」

「ウーン わたしの国では、普通に家の庭でなっている木だけどね……  どうだろう? もう これ、先に渡しておこうか?  どうする?」

「果物は、王家が欲しがるからな。  オレ 一人ではどうしていいか、わからないよ…… タルボさんに素直に相談してみるから、渡すのはちょっと待ってくれるか?」

「うん、テトリの好きにしてね」

 それから、この飲みモノ のことを聞いてみた。

 これはすごく高価なモノで  一本で 二十年、病気知らずだとか、寿命が伸びるとか、いわれているモノだそうだ。
 お金持ちの人しか買えないみたい。

 一日に 十本までならぜんぜん大丈夫なモノだけど、そんなに飲める機会はまずないので、ありがたく飲んだらいいと教えてくれる。
 すべてからだが吸収するから、お腹が タプタプ にはならないそうだ。

「もし 毎日飲んだら、死なない人になるの?」

「なんでも 限度があるだろ?  万能の薬じゃないぞ。でも、普通にオレなんかが飲んだら、寿命は確実に伸びる」

 寿命がもし、二十年伸びるのならわたしは 四本飲んだから 八十年だ。
 おどろいて いうと、あきれたようにテトリが話しだす。

「パール。 おまえ、赤ちゃん用のモノも飲んだだろ? あれも 二十年寿命が伸びるモノだぞ。 それにジュウネンは 百年元気に暮らせるといわれているモノだから、パールの寿命はだいたい今日で 二百歳は伸びたはずだぞ?」

「えっ、うそ! 人族の寿命は 百年ないんだけど……  わたし、どう なるんだろう……」

「なに いってんだよ! こっちにいる人族はみんな 五百歳は超えているぞ? パール、百歳までしか生きられないのか?」

「それは、おかしいよね? もしかして他の 迷い人は人族じゃ ないのかも?」

 そんなことを話していると、みんながやってきた。

「待たせたな。んっ、どうした?」

 テトリが簡単に説明する。
 ここにいる人族が長生きすぎるみたいだと。

 タルボさんは、なんだ そんなことかと話してくれたけど……

 この国。
 ケップラー王国にくるときに変わった 金色の花。
 トケイソウを見なかったかと聞かれた。

「金色の花…… 見た けど?」

「やっぱり そうなのか……」

 ひとり納得したあと……

 迷い人はどうも、そのトケイソウによってこっちの世界に連れてこられるそうだ。

 金の粉、光の粒を浴びたかと聞かれて、たぶん浴びたと答える……

「その金の粉を 一度 浴びると 五百年寿命が伸びると いわれている。 だからパールちゃんは人族だけど、長生きできるはずだ」

 そう、タルボさんが教えてくれた。

「えーーっ!! こわいよ~?! じゃあ、わたしは お婆さんになって、何百年も 生きていくの?」

「は、は、はっ 大丈夫だ! こっちの人族たちは、わたしたちと同じで、成人まではある程度はやいが、そこからはゆるやかに 歳をとる。 婆さんの時代が 長いわけじゃぁないぞ!」

 よかったーー!


「パール、よかったな! 長生き できるぞ!」
 
 タルボさんによると、帰りも金色のトケイソウを探して金の粉を浴び、トケイソウに自分の国へ 連れて帰ってもらわないといけないようだ。

 ふ~ぅん? そうなんだ?

「でもなんで、そんことがわかるんだ? 帰った ヤツには聞けないだろ? それは、ホントなのか?」

 たしかに……  
 なんで わかるの?

「祖父さんから聞いた、だいぶ前の話になるが……  ここの王族 何代か前の王弟が、いつまで待っても自分のツガイが現れず、痺れを切らしてな。 もう、ケップラー王国にはいない 、パールちゃんの国まで探しにいくと 迷いの森に入ったまま帰ってこなかったそうだ」

「その王弟が、帰ってきて 話したのか?」

「いいや。 その王弟は魔法袋と砂をもって、トケイソウを見つけたときのことを王城にいる 迷い人、数人から いろいろ聞き出していたといわれているんだよ。  だから 迷いの森から帰ってこないのは、成功したんだろうと 伝えられている」

 なるほどね……
 あの トケイソウか……

 迷いの森に入ったら、一番に探そう。

 なんとか、帰れる道がみえてきた……


 ちょっとだけ なんだか 安心かな?

 よかった……





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