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65. バンブと親方

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 水抜きか~

 すごい勢いで親方は 聞いてきたけど、チェリー が『冒険者』と 『おばあちゃん』で ごまかしてしまう 提案を してくれた。

 冒険者のスキル、それと 採取場所や方法は 冒険者にたずねないのが マナー になっている。
 冒険者からしたら、死活問題だからね。
 よし、これならいける!


「水抜きは……   まあ、いろいろね……   わたしは ほら、冒険者だから…… 」

「 …… わかった、それは いい。だが、コップを 持っているなら、見せてくれるか…… 」

 親方は 悪い人でもなさそうだし、しょうがないから 見せることにした。
 斜め肩かけのカバンから だして、コップを 親方に わたす。

 受け取った 親方は、コップを ひっくり返して 裏まで じっくり見て、側面をさすり 軽く うなずく。

「おまえさんの これは、上手に できてる……    誰に作り方を 教わったんだ?」

 む、むっ  今度は「お」は ついたけど  おまえさん。

 わたしの呼び方が、つぎつぎ 変わる。
 お嬢ちゃん で バンブのお嬢ちゃん 次は 「お」 が 抜けて  嬢ちゃん それから  おまえさん…… 多いな。

「わたしの名前は、パール。これは…… おばあちゃんに教わった…… 」

「ほーっ、その おばあちゃんは いま……  」

 もう、これ以上 聞かれても 答えられないから 首を 横に 振っておいた。

「そうか……    普通は 二ヶ月ぐらい 天日干しを してから 水抜きして 作るんだが……  パ、パールだな?  は 違う やり方だな」

「まあね、冒険者だし…… 」

 親方は もう これ以上は、あきらめたようで。

「 …… ふーーっ、バンブの木は あの林に行けば いくらでも 手に入るが、なんせ ホワイトベアー とゴールデンタイガー がなぁ~ それに バンブのホントに太い木は 林のだいぶ 奥にあるから 遭遇しやすいんだよ。 水抜きに 時間も手間も そこそこかかるしな 他の木よりも その分 高くなる。 それに、キレイ だろー?  お貴族様や 金持ちの商会が 外に 持っていく食器として 好んで 使っているからな。 そりゃー  、まぁ こんな 子どもが  屋台で出したら 驚くわなー  」

 そうなんだ……   使いにくいなぁ~
 思いもしなかったことに、ちょっと 落ち込む……

 それに、親方 いまなんて?
 バンブの太い木は 林のだいぶ 奥にある……?
 ホワイトベアー とゴールデンタイガー に 遭遇しやすいって いったよね……

 はーっ

 そんなこと、聞いてないよー

 よく、こんな子どもに そんなところのモノを 頼むよね……
 わたしじゃなかったら、これは 危ないところだったんじゃ ないだろうか?

 おとなは、なんだかなぁ~
 大切な ところは、教えて くれない……

 ふっと、気分が沈んで 目線が下がり ちょっと濃い 赤焦げた茶色の腰巻きが 目に入った。

 アッ

「親方 この、コップを 目立たなくする方法は ないかなぁ~   カバー とか、薄い木のコップをかぶせるとか? 」

「なんだ、これを 目立たなく したいのか? 」

「バンブの木は 軽くて、すごく丈夫だし 衛生的にも 色も キレイで いいでしょ?   そこが 他の モノ より 気に入って いるんだけど……  親方が言うように 子どもの わたしが 一人で 使っていて、 いいこと ひとつも ないんだよね…… 」

 これをずっと 使いたいから、思い出した シャークの革方式で なんとかならないか 聞いてみた。
 相談を するのだから、親方のことを 信じて 他に 水筒や お皿も 作ったと 全部 伝えた。

「水筒?」

 親方は また 変なところに 食いついてくる。
 しょうがないので 斜め肩かけのカバンから出して 見せると、使い方を 聞いてきた。
 これは、もう めんどくさいし コップと水筒を 返してもらって 帰ろうかと 思ったとき。

「なぁパール、このコップと水筒を 目立たなくする方法を なにか考えて作るから、この水筒を おれが真似して作ることを 許可して くれないか? もちろん これらは、タダで 作る…… それと これだけじゃない、バンブの木を持参したら、欲しいもの すべて タダで 作くってやる。どうだ ……ダメか?  少しぐらいなら 金も だせる…… 」

 なるほど、そう きたか……
 職人さんだから、作りたく なるんだね。

「いいよ! また、明日も バンブの林にいくから これは 預けておくね! べつに お金は いらない。いいもの 作ってよ! そのかわり、わたしのスキルに関することは すべて ナイショね」

「おーー!! わかった。 それで いいのか ナイショだな!  ありがとよ!」

 これで、なんとか バンブのコップが これからも 使えそうだ。

「なぁ、パール、明日 バンブの林にいったら、また バンブを 持って帰ってきて くれるのか?  注文を 変えたいんだ。太いバンブより これがいい!  このぐらいのバンブの木を 持って帰ってきてくれ。 帰りは いつだ?  ここに よってくれるだろ?  また 一緒に ギルドに いくからな!」

「明日、一泊して 帰ってくる予定だけど、いつ頃になるかは わからないよ。よることは できるけど、それと ホントに 太いバンブの木は いいの? 持って帰れて 五、六本 だからね…… 」

「できるだけ太いバンブで、皿と細工ものでも 作る つもりでいたが、これを見たらな。これが 作りたくなるってもんだろうー」

 親方は、ホントに 今すぐ 作りたそうだ。

 親方がいつもは どんな モノ を 作っているのか?
 ちょっと 気になって 店の中の商品を 見せてもらう。

 木の食器や木彫りの彫刻、テーブルまである。
 でも、なんとなく 生活に必要なものが 多いな。
 やっぱり、森が近いから 木の製品だらけだ。

 あれ、この木のコップ かわいい!
 宿屋で 使っているのと 違う…… 
 こんなに薄くも できるんだ……
 手に 取らしてもらう。
 あっ これいい!
 持ち手と一体化しているのに薄くて軽い……

 銀貨 一枚!

 ギルドで売った バンブの木、一本と 同じ値段だ!

 ホントに 危険な割に バンブの木は 微妙な値段だな……

 親方は、わたしの考えていることが わかったようで、苦笑いしている。
 これは、親方の弟子で ケルスさんが 作ったモノ だと教えてくれた。

 部屋の隅で 作業をしていた ケルスさんが こちらに やってくる。

「それ、あげます。 受け取って ください!! どうかそれで バンブと……   明日 取ってくる バンブ 一本と、交換してください! お願いします!!」


「「 んっ 」」


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