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36. しおりと巾着袋
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やっとなんとか、イメージ通りに しおりができた。
思っていたより数段 難しかった。
今回の しおり作りで、わたしの魔法の精密さが 上がったように思う。
それとマークの しおりの薄板切りの腕も すごく上がったんじゃないかな。
これだけ協力してもらったのだから、これは もう わたしとマーク二人からのプレゼントで いいんじゃないかと提案したのだけど、なぜか マークにすごく イヤがられた。
なので感謝の気持ちを込めて マークとカイルさん 二人に、わたしからナイショで しおりをプレゼントすることにした。
あと、シーナにもプレゼントする。
シーナには、しおりを入れる巾着袋を作るため、生地屋さんに連れて行ってもらった。
布の切れ端と上等な布を数枚。
上等な布 数枚は 辺境伯様の分なので 別払い。
残りの布と数種類の糸 そして針を、ルート様との 手合わせで貰った 自分のお小遣いで 初めて買う。
実は、辺境伯様に渡す巾着袋は、ちょっと わたしの手縫いでは問題がありそうなので、シーナが作ってくれることになった。
そのときに カイルさんとマークが、大きく頷いていて なんだか ちょっと モヤっと する。
でも、ルート様とアース様の巾着袋はプレゼントだから わたしが自分で作りたいというと、これもカイルさんとマークが頷いでいた。
あれっ? 同じお貴族様なのに、息子は いいのか?
なんだか、不思議?
もちろん自分の しおりも作った。
これは自分に『頑張ったね』の ご褒美。
うれしいことに、わたしの巾着袋も シーナが縫ってくれた。
だからわたしは 全部で 五枚。
チクチクと しおりを入れる巾着袋を、自分の部屋でマークに隠れて縫ったんだけど……
これが案外、しんどかった。
自分の巾着袋を シーナが作ってくれたは、ホント 感謝だ。
あっという間に、最後の手合わせの日は やってくる。
なんとか間に合って、ルート様とアース様に しおりを渡すことができた。
意外にもルート様が、うれしそうに しおりを両手で受け取ってくれた。
そして笑顔に、怒ったような口元をつけて……
うんっ? 照れているのかな?
まあ、よろこんでいると思う。
「これはなんだ? 手作り! わたしにくれるのか…… ほんとうか、ありがとう…… 」
巾着袋から しおりを取りだすと、フワッと 香りが ルート様の鼻をくすぐるり、ハッと した顔を 一瞬みせた。
この香木のことを、この香りを もう知っているのかな?
しおりの自分の名前を しばらく眺めて、小さくうなずく。
そしてそっと、胸元のポケットに しまってくれた。
「わたしまで、いただいてよいのですか? ありがとうございます。 いい匂いですね。 大切に使わせてもらいます」
アース様も よろこんでくれたようだ。
「今日まで いろいろ教えてもらい、ありがとうございました。もう会えないかもしれませんが、学校でも頑張ってください。この しおりは 庭師のカイルさんやマークそれから侍女のシーナさんにも、協力してもらって 作ったものです。 王都でも しおりをみて、領内のことを 思い出してくださいね」
「 …… わかった」
ルート様たちに しおりを渡したあと、カイルさんのところに借りていた道具を返すため マークと 一緒に庭師小屋まで行く。
一人じゃ道具は 持てないからね。
「なんだ。 もう道具を持ってきたのか、そんなにいそがなくても 大丈夫だぞ? 」
「うん。 でも 道具、貸してくれてありがとう。 ルート様たちに 無事 しおりを渡せて、お二人とも すごくよろこんでくれたよ。 それから これが、辺境伯様のしおり 。 はい 」
先に 辺境伯様の しおり入り巾着袋を渡す。
「こっちこそ、いろいろ ありがとな。 これ 確認してもいいか? 」
「どうぞ、なにかあったら 大変だもんね」
カイルさんは、わたしたちに椅子をすすめる。
みんなが座ると、テーブルの上に自分のハンカチを敷き、そこに巾着袋を置く。
そのあと手を 自分の服で ゴシゴシ拭いてから、そ~ろっと 巾着袋の中から しおり を 取り出した。
香りを確かめるように吸い込んで。
「ほー 、いい匂いだ! よい できじゃないか。 名前を入れたのか いいアイデアだ。 貴重なものだから、これで 盗まれにくくなる。 ありがとう、ご苦労さま」
「これでよかった? 名前を入れたのは、一人ずつの デザインが浮かばなかったからで、そんな大層なこと考えてないよ。マークにも だいぶ協力してもらったし。 シーナには、この巾着袋の布を買いに生地屋さんへ連れて行ってもらって…… それにこれ縫ったのはシーナだし!」
「そうか、そうだな。 マークもありがとな」
マークも隣の椅子で 首を クイっと 傾けて笑っている。
「それからこれ! わたしから 二人に 感謝の気持ちと香木記念? に…… はい、どうぞ! 」
間違えないように カイルさんには緑色の巾着袋、マークには青色の巾着袋を手渡す。
二人とも驚いた顔をしていたけど、すぐにうれしそうな顔に変わった。
「ホントにオレも、もらっていいのか? 」
カイルさんは キラキラした目で、また そーっと 巾着袋の中から しおり を出して、香りを めーいっぱい吸い込んだ。
香木の匂いを堪能してから 自分の名前を眺めていた。
マークも自分がもらえると思ってなかったようで、うれしそうに 巾着袋を眺めて……
あれっ、巾着袋?
小さくうなずくと ボソッと。
「細かく縫えているな、大変だったろう…… 」
それから巾着袋をひとなでして、しおり を 取り出した。
そのまま鼻に近づけ スッと 匂いを嗅ぐ。
わたしの顔を チラッと みて ニコー っと 微笑んでから、自分の名前を確認していた。
マークに ちょっと びっくりしたけど……
しおりと巾着袋を自分で作って よかったなぁ~ 。
大変だったけど、二人の よろこぶ顔をみて……
自分も やっぱり うれしかった 。
思っていたより数段 難しかった。
今回の しおり作りで、わたしの魔法の精密さが 上がったように思う。
それとマークの しおりの薄板切りの腕も すごく上がったんじゃないかな。
これだけ協力してもらったのだから、これは もう わたしとマーク二人からのプレゼントで いいんじゃないかと提案したのだけど、なぜか マークにすごく イヤがられた。
なので感謝の気持ちを込めて マークとカイルさん 二人に、わたしからナイショで しおりをプレゼントすることにした。
あと、シーナにもプレゼントする。
シーナには、しおりを入れる巾着袋を作るため、生地屋さんに連れて行ってもらった。
布の切れ端と上等な布を数枚。
上等な布 数枚は 辺境伯様の分なので 別払い。
残りの布と数種類の糸 そして針を、ルート様との 手合わせで貰った 自分のお小遣いで 初めて買う。
実は、辺境伯様に渡す巾着袋は、ちょっと わたしの手縫いでは問題がありそうなので、シーナが作ってくれることになった。
そのときに カイルさんとマークが、大きく頷いていて なんだか ちょっと モヤっと する。
でも、ルート様とアース様の巾着袋はプレゼントだから わたしが自分で作りたいというと、これもカイルさんとマークが頷いでいた。
あれっ? 同じお貴族様なのに、息子は いいのか?
なんだか、不思議?
もちろん自分の しおりも作った。
これは自分に『頑張ったね』の ご褒美。
うれしいことに、わたしの巾着袋も シーナが縫ってくれた。
だからわたしは 全部で 五枚。
チクチクと しおりを入れる巾着袋を、自分の部屋でマークに隠れて縫ったんだけど……
これが案外、しんどかった。
自分の巾着袋を シーナが作ってくれたは、ホント 感謝だ。
あっという間に、最後の手合わせの日は やってくる。
なんとか間に合って、ルート様とアース様に しおりを渡すことができた。
意外にもルート様が、うれしそうに しおりを両手で受け取ってくれた。
そして笑顔に、怒ったような口元をつけて……
うんっ? 照れているのかな?
まあ、よろこんでいると思う。
「これはなんだ? 手作り! わたしにくれるのか…… ほんとうか、ありがとう…… 」
巾着袋から しおりを取りだすと、フワッと 香りが ルート様の鼻をくすぐるり、ハッと した顔を 一瞬みせた。
この香木のことを、この香りを もう知っているのかな?
しおりの自分の名前を しばらく眺めて、小さくうなずく。
そしてそっと、胸元のポケットに しまってくれた。
「わたしまで、いただいてよいのですか? ありがとうございます。 いい匂いですね。 大切に使わせてもらいます」
アース様も よろこんでくれたようだ。
「今日まで いろいろ教えてもらい、ありがとうございました。もう会えないかもしれませんが、学校でも頑張ってください。この しおりは 庭師のカイルさんやマークそれから侍女のシーナさんにも、協力してもらって 作ったものです。 王都でも しおりをみて、領内のことを 思い出してくださいね」
「 …… わかった」
ルート様たちに しおりを渡したあと、カイルさんのところに借りていた道具を返すため マークと 一緒に庭師小屋まで行く。
一人じゃ道具は 持てないからね。
「なんだ。 もう道具を持ってきたのか、そんなにいそがなくても 大丈夫だぞ? 」
「うん。 でも 道具、貸してくれてありがとう。 ルート様たちに 無事 しおりを渡せて、お二人とも すごくよろこんでくれたよ。 それから これが、辺境伯様のしおり 。 はい 」
先に 辺境伯様の しおり入り巾着袋を渡す。
「こっちこそ、いろいろ ありがとな。 これ 確認してもいいか? 」
「どうぞ、なにかあったら 大変だもんね」
カイルさんは、わたしたちに椅子をすすめる。
みんなが座ると、テーブルの上に自分のハンカチを敷き、そこに巾着袋を置く。
そのあと手を 自分の服で ゴシゴシ拭いてから、そ~ろっと 巾着袋の中から しおり を 取り出した。
香りを確かめるように吸い込んで。
「ほー 、いい匂いだ! よい できじゃないか。 名前を入れたのか いいアイデアだ。 貴重なものだから、これで 盗まれにくくなる。 ありがとう、ご苦労さま」
「これでよかった? 名前を入れたのは、一人ずつの デザインが浮かばなかったからで、そんな大層なこと考えてないよ。マークにも だいぶ協力してもらったし。 シーナには、この巾着袋の布を買いに生地屋さんへ連れて行ってもらって…… それにこれ縫ったのはシーナだし!」
「そうか、そうだな。 マークもありがとな」
マークも隣の椅子で 首を クイっと 傾けて笑っている。
「それからこれ! わたしから 二人に 感謝の気持ちと香木記念? に…… はい、どうぞ! 」
間違えないように カイルさんには緑色の巾着袋、マークには青色の巾着袋を手渡す。
二人とも驚いた顔をしていたけど、すぐにうれしそうな顔に変わった。
「ホントにオレも、もらっていいのか? 」
カイルさんは キラキラした目で、また そーっと 巾着袋の中から しおり を出して、香りを めーいっぱい吸い込んだ。
香木の匂いを堪能してから 自分の名前を眺めていた。
マークも自分がもらえると思ってなかったようで、うれしそうに 巾着袋を眺めて……
あれっ、巾着袋?
小さくうなずくと ボソッと。
「細かく縫えているな、大変だったろう…… 」
それから巾着袋をひとなでして、しおり を 取り出した。
そのまま鼻に近づけ スッと 匂いを嗅ぐ。
わたしの顔を チラッと みて ニコー っと 微笑んでから、自分の名前を確認していた。
マークに ちょっと びっくりしたけど……
しおりと巾着袋を自分で作って よかったなぁ~ 。
大変だったけど、二人の よろこぶ顔をみて……
自分も やっぱり うれしかった 。
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