28 / 221
28. お貴族様のコース
しおりを挟む
次の日、乗馬の訓練の帰りにルート様とアース様が馬小屋まで馬を連れてやってきた。
今までは馬乗馬場に馬を繋いで帰っていたのに、なにしにきたのか?
ちょうどマークと外のテーブルで休憩をしていたから簡単に挨拶をする。
マークとアース様は馬小屋の馬房に向かい、話しをするようだ。
ルート様は馬小屋の外で待つみたいなので、わたしも外にいることになる。
「おい。おまえは毎日何回、素振りをしているんだ?」
「わたしですか。マークに朝と夕方、千回ずつするようにいわれていますけど。 あっ 、でももうすぐ倍に増やすっていってたし、どうなるんでしょうね?」
「二千の倍……四千……」
「魔法は使えるのか? 昨日は身体強化を使っていたよな」
「身体強化を使わないとわたしは小さいから、なにもできないので頑張っています」
あえて他の魔法には触れず、身体強化だけ取りあげておいた。
「六歳で冒険者だったか、おまえも大変だな……」
なんだ? 今日は気持ち悪い。
昨日のあの鬼のような顔はどうした?
ここは無難に答えておこう。
「六歳までここに置いてもらえて、とても感謝しています」
「そうか、感謝しているのか……」
ちょっと、なに考えてるのか? わからない……
どうしたんだっと思っていると、マークとアース様がやってきた。
「パール、昨日はご苦労様。また来週も楽しみにしていますよ。ルート様も素振りの回数を少し増やしましょうね。それでは、ルート様まいりましょう。マークもまた」
「んっ、……わかった。じゃあな 」
二人はお屋敷に帰っていった。
本当になにしにきたのか?
マークに聞いても、たいした話はしていないという?
週に一回の剣の手合わせは、アース様の教えで基本に忠実におこなう。
剣の基本を身につけると、自分の無駄な動きに気がつく。
正確な技術が身についてきたようだ。
アース様も基本は上達への効率的な近道になるんだよっと、わたしに向けて話しながらルート様に聞かせている。
なんとなくだけど、わたしの役割も理解してきた。
やっぱりお貴族様はめんどくさい。
意外にもあれからルート様は真面目に稽古を重ねていて、あの性格にもだんだん慣れてくる。
そうすると剣についてや、それ以外の話もできるようになってきた。
その中でもルート様とアース様から貴族の常識を少し教えてもらえたことが、貴重でわかりやすく勉強になったかな。
驚くことに、ルート様はもうすぐ王都の名門学校で六年間を過ごすことになる。
アース様も、もちろん護衛でついていく。
八歳から十二歳までの四年間が、基本コース。
十二歳からニ年間は、専門的なコースを学ぶらしい。
この学校はお貴族様とお金持ちの商人などが寮生活を送りながら学ぶ名門校だそうで、貧しいが賢い平民も学校の奨学制度で少数だが入ることはできる。
しかしそれは簡単ではない。
基本お貴族様のための学校だ。
でもこの名門校を平民が卒業すれば、就職先のグレードがぐんと上がり、王宮に就職も夢ではないらしい。
頭もそう飛び抜けておらず、ギリギリの財力で入った商人の子どもは基本コースの四年間で卒業してしまう。
四年だけのコースでも、この学校の卒業生だと聞こえがいい。
お貴族様との商売もしやすくなり、子どもの縁談も格上が狙える。
なので少し無理をしてでも、平民の親はこの学校に入れたがるそうだ。
十二歳から後のニ年間は専門的なコースで、いろいろとわかれていく。
ここからは寮生活と通いが選べるようになる。
金持ちの商人か王都にお屋敷を持っている子息子女たちばかりになるから配慮されている。
文系や騎士のコース、お嬢様コースいわゆる花嫁コースもある。
上級侍女のコースや執事のコースなど貴族様の爵位を継げない子どもたちのためのコースと多種多様。
ルート様は当主様など後継者を育成するコース、いわゆる帝王学のようなものを学ぶコースだ。
十四歳で卒業し、一年間は領地で実践して十五歳で成人。
そして社交界デビューをする。
もうお貴族様のコースはだいたい決まっているらしい。
特に貴族のお嬢様たちは、この成人するまでの最後の一年間。
十四歳から十五歳の間に婚約者を見つけ、婚約する人が大半なようで、将来がみえてくるこの一年が、男女ともに忙しい年になるそうだ。
いつまで続くのかと思っていた剣の手合わせも、今七歳のルート様が八歳で王都の名門学校に入学することで終わりを告げるとわかった。
終わりがもうすぐやってくると思うと、やる気も増してくるというもの。
今のあいだに、いろいろ教えてもらおう。
ためになる話しもしてくれた。
手合わせも、わたしのお小遣いになった。
そんな諸々に終わりが見えてきた。
いろんな感謝の気持ちを込めながら、話しの最後に伝える。
「……そうなんですか、寂しくなりますね」
「えっ 、 ホントか……さ、さびしいのか?」
「はい。手合わせもできなくなるし、ためになる話しも聞けません。特に剣の手合わせはちょっと、なにか、つかみかけてる気がするんですよね。アース様も一緒に行かれるんでしょ? 残念で寂しいです」
「なにが、寂しいと……。うっ 、アースか……あ、 あたりまえだ! 一緒に行くに決まってるだろ!!」
急に怒り出したルート様に目を丸くする。
マークとアース様が残念な子を見るような目で、わたしをみてきた。
えっ 、 まちがった?
わたし なにか、 やっちゃった?
今までは馬乗馬場に馬を繋いで帰っていたのに、なにしにきたのか?
ちょうどマークと外のテーブルで休憩をしていたから簡単に挨拶をする。
マークとアース様は馬小屋の馬房に向かい、話しをするようだ。
ルート様は馬小屋の外で待つみたいなので、わたしも外にいることになる。
「おい。おまえは毎日何回、素振りをしているんだ?」
「わたしですか。マークに朝と夕方、千回ずつするようにいわれていますけど。 あっ 、でももうすぐ倍に増やすっていってたし、どうなるんでしょうね?」
「二千の倍……四千……」
「魔法は使えるのか? 昨日は身体強化を使っていたよな」
「身体強化を使わないとわたしは小さいから、なにもできないので頑張っています」
あえて他の魔法には触れず、身体強化だけ取りあげておいた。
「六歳で冒険者だったか、おまえも大変だな……」
なんだ? 今日は気持ち悪い。
昨日のあの鬼のような顔はどうした?
ここは無難に答えておこう。
「六歳までここに置いてもらえて、とても感謝しています」
「そうか、感謝しているのか……」
ちょっと、なに考えてるのか? わからない……
どうしたんだっと思っていると、マークとアース様がやってきた。
「パール、昨日はご苦労様。また来週も楽しみにしていますよ。ルート様も素振りの回数を少し増やしましょうね。それでは、ルート様まいりましょう。マークもまた」
「んっ、……わかった。じゃあな 」
二人はお屋敷に帰っていった。
本当になにしにきたのか?
マークに聞いても、たいした話はしていないという?
週に一回の剣の手合わせは、アース様の教えで基本に忠実におこなう。
剣の基本を身につけると、自分の無駄な動きに気がつく。
正確な技術が身についてきたようだ。
アース様も基本は上達への効率的な近道になるんだよっと、わたしに向けて話しながらルート様に聞かせている。
なんとなくだけど、わたしの役割も理解してきた。
やっぱりお貴族様はめんどくさい。
意外にもあれからルート様は真面目に稽古を重ねていて、あの性格にもだんだん慣れてくる。
そうすると剣についてや、それ以外の話もできるようになってきた。
その中でもルート様とアース様から貴族の常識を少し教えてもらえたことが、貴重でわかりやすく勉強になったかな。
驚くことに、ルート様はもうすぐ王都の名門学校で六年間を過ごすことになる。
アース様も、もちろん護衛でついていく。
八歳から十二歳までの四年間が、基本コース。
十二歳からニ年間は、専門的なコースを学ぶらしい。
この学校はお貴族様とお金持ちの商人などが寮生活を送りながら学ぶ名門校だそうで、貧しいが賢い平民も学校の奨学制度で少数だが入ることはできる。
しかしそれは簡単ではない。
基本お貴族様のための学校だ。
でもこの名門校を平民が卒業すれば、就職先のグレードがぐんと上がり、王宮に就職も夢ではないらしい。
頭もそう飛び抜けておらず、ギリギリの財力で入った商人の子どもは基本コースの四年間で卒業してしまう。
四年だけのコースでも、この学校の卒業生だと聞こえがいい。
お貴族様との商売もしやすくなり、子どもの縁談も格上が狙える。
なので少し無理をしてでも、平民の親はこの学校に入れたがるそうだ。
十二歳から後のニ年間は専門的なコースで、いろいろとわかれていく。
ここからは寮生活と通いが選べるようになる。
金持ちの商人か王都にお屋敷を持っている子息子女たちばかりになるから配慮されている。
文系や騎士のコース、お嬢様コースいわゆる花嫁コースもある。
上級侍女のコースや執事のコースなど貴族様の爵位を継げない子どもたちのためのコースと多種多様。
ルート様は当主様など後継者を育成するコース、いわゆる帝王学のようなものを学ぶコースだ。
十四歳で卒業し、一年間は領地で実践して十五歳で成人。
そして社交界デビューをする。
もうお貴族様のコースはだいたい決まっているらしい。
特に貴族のお嬢様たちは、この成人するまでの最後の一年間。
十四歳から十五歳の間に婚約者を見つけ、婚約する人が大半なようで、将来がみえてくるこの一年が、男女ともに忙しい年になるそうだ。
いつまで続くのかと思っていた剣の手合わせも、今七歳のルート様が八歳で王都の名門学校に入学することで終わりを告げるとわかった。
終わりがもうすぐやってくると思うと、やる気も増してくるというもの。
今のあいだに、いろいろ教えてもらおう。
ためになる話しもしてくれた。
手合わせも、わたしのお小遣いになった。
そんな諸々に終わりが見えてきた。
いろんな感謝の気持ちを込めながら、話しの最後に伝える。
「……そうなんですか、寂しくなりますね」
「えっ 、 ホントか……さ、さびしいのか?」
「はい。手合わせもできなくなるし、ためになる話しも聞けません。特に剣の手合わせはちょっと、なにか、つかみかけてる気がするんですよね。アース様も一緒に行かれるんでしょ? 残念で寂しいです」
「なにが、寂しいと……。うっ 、アースか……あ、 あたりまえだ! 一緒に行くに決まってるだろ!!」
急に怒り出したルート様に目を丸くする。
マークとアース様が残念な子を見るような目で、わたしをみてきた。
えっ 、 まちがった?
わたし なにか、 やっちゃった?
45
お気に入りに追加
626
あなたにおすすめの小説
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
きっと幸せな異世界生活
スノウ
ファンタジー
神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。
そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。
時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。
異世界レメイアの女神メティスアメルの導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?
毎日12時頃に投稿します。
─────────────────
いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
薬屋の少女と迷子の精霊〜私にだけ見える精霊は最強のパートナーです〜
蒼井美紗
ファンタジー
孤児院で代わり映えのない毎日を過ごしていたレイラの下に、突如飛び込んできたのが精霊であるフェリスだった。人間は精霊を見ることも話すこともできないのに、レイラには何故かフェリスのことが見え、二人はすぐに意気投合して仲良くなる。
レイラが働く薬屋の店主、ヴァレリアにもフェリスのことは秘密にしていたが、レイラの危機にフェリスが力を行使したことでその存在がバレてしまい……
精霊が見えるという特殊能力を持った少女と、そんなレイラのことが大好きなちょっと訳あり迷子の精霊が送る、薬屋での異世界お仕事ファンタジーです。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる