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17. お風呂場
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四歳になってうれしかったことが、もう一つある。
お風呂場が小屋と井戸の間にできたんだよ!
シーナがマークとトムさんを動かして、なんとか作ってくれた。
もちろん辺境伯様の許可も得ている。
本当に簡単なつくりで、屋根もなく四方の途中まで木で囲ったお風呂場だけど、これで誰かが急にやってきても安心だ。
滅多にないと思うけど、小道や奥庭から見られるかも? っと、思いながらお風呂に入ることがなくなった。
今までは、まだ三歳。
馬小屋までくる人もそうはない。
わたしの中の『大人の思考』が、まだ三歳児は大丈夫だろうと安易に考えていた。
少し恥ずかしいとは思うけど、行水の気持ちよさには勝てない。
自分の負の気持ちに目をつぶっていたんだと思う。
でもシーナがマークに忠告してくれる。
「小さくても女の子なんだから、誰もこなくても行水するなら囲いは必要に決まっているでしょ!」
トムさんも賛同してくれた。
ありがたいことだ。
ついでにお風呂場の中に、1×2メートルぐらいの床板も作ってもらったよ!
裸足でも足裏に砂が付かないようにして、そこを脱衣場にする。
あとはトムさんに厨房で余っている、できるだけきれいな樽を探してきてもらう。
それを誕生日プレゼントにおねだりしてみた。
「樽なんてどうするんだ? 危険なことに使うんだったらやれないぞ。 わしがシーナに叱られるんだからな」
「危険なんてないよっ! 樽風呂にするだけだよ」
「樽風呂? なんだそれ?」
「えっ知らないの? トムさんたちってまったくお風呂に入らないの?」
この世界の平民には、お風呂に入る文化がないのか?
「よほどのことがないと入らないなぁ~? まず入るところがない。 ここらじゃぁ、あるのは上等な宿か金持ちの商家とお貴族様のお屋敷ぐらいだぞ。 まあ王都にいったら知らんがなぁ」
「じゃあ、すごく汗をかいたらどうするの?」
お風呂に入りたくなるよね?
「井戸の近くに、小さな小屋があるだろう」
「小屋?」
もしかして、2メートル四方もない物置小屋のことだろうか?
「馬小屋の方にはついていないが、あとは大概 井戸の近くに小さな小屋があるだろう。 あの中にバケツがあって、それに井戸の水を汲んで持って入って体を拭くのさ。 まあ水をかぶるだけのやつも多いがな」
「知らなかった……」
「そうだろうなぁ…… 小屋を使うときは、朝早くか夜だからな。 それもみんな毎日は使ってないと思うぞ、体は拭くだけで十分さ! それなら自分の部屋でもできる」
前世からお風呂に入っていて、今世でも毎日行水をしていた身としては、ちょっときびしいかなぁ。
住んでいるところが馬番の小屋でよかった。
においだけ我慢すれば、あとは自由だよ。
シーナはもちろんのこと、マークもトムさんも樽風呂を知らないようだ。
わたしの指示で風呂場に樽を設置してもらう。
3×3メートル四方ぐらいの木の板の囲い。
一辺の端のほうだけ出入り口のために少し空いていて、そこから草原がみえる。
樽は草原がみえる奥のほうに置いてもらう。
その横に脱衣場になる床板をおく。
そこからは草原はみえない。
あぁ…… 完璧だ!
「この樽の中に入って草原を眺めるのっ! ステキでしょう」
設置を手伝いにきていたシーナが目くじらを立てて、いつもより低い声で告げる。
「これじゃぁ、草原から丸見えじゃないのっ! 今までと何が違うのよ」
「ぜんぜん違うよ! 草原から人はそう来ないし、お屋敷を通らないと行けない道なんだよ。その先にある湖はもう…… 馬たちのもの! 豪華なお散歩コースだよ!」
納得したようなしてないような顔をしたシーナを横目に、タライの行水から卒業して、これからは草原や夜空の星をみながら樽風呂に入ることを想像するとニヤけてしまう。
みんなは呆れてみてたけど……
楽しみだ!
お風呂場が小屋と井戸の間にできたんだよ!
シーナがマークとトムさんを動かして、なんとか作ってくれた。
もちろん辺境伯様の許可も得ている。
本当に簡単なつくりで、屋根もなく四方の途中まで木で囲ったお風呂場だけど、これで誰かが急にやってきても安心だ。
滅多にないと思うけど、小道や奥庭から見られるかも? っと、思いながらお風呂に入ることがなくなった。
今までは、まだ三歳。
馬小屋までくる人もそうはない。
わたしの中の『大人の思考』が、まだ三歳児は大丈夫だろうと安易に考えていた。
少し恥ずかしいとは思うけど、行水の気持ちよさには勝てない。
自分の負の気持ちに目をつぶっていたんだと思う。
でもシーナがマークに忠告してくれる。
「小さくても女の子なんだから、誰もこなくても行水するなら囲いは必要に決まっているでしょ!」
トムさんも賛同してくれた。
ありがたいことだ。
ついでにお風呂場の中に、1×2メートルぐらいの床板も作ってもらったよ!
裸足でも足裏に砂が付かないようにして、そこを脱衣場にする。
あとはトムさんに厨房で余っている、できるだけきれいな樽を探してきてもらう。
それを誕生日プレゼントにおねだりしてみた。
「樽なんてどうするんだ? 危険なことに使うんだったらやれないぞ。 わしがシーナに叱られるんだからな」
「危険なんてないよっ! 樽風呂にするだけだよ」
「樽風呂? なんだそれ?」
「えっ知らないの? トムさんたちってまったくお風呂に入らないの?」
この世界の平民には、お風呂に入る文化がないのか?
「よほどのことがないと入らないなぁ~? まず入るところがない。 ここらじゃぁ、あるのは上等な宿か金持ちの商家とお貴族様のお屋敷ぐらいだぞ。 まあ王都にいったら知らんがなぁ」
「じゃあ、すごく汗をかいたらどうするの?」
お風呂に入りたくなるよね?
「井戸の近くに、小さな小屋があるだろう」
「小屋?」
もしかして、2メートル四方もない物置小屋のことだろうか?
「馬小屋の方にはついていないが、あとは大概 井戸の近くに小さな小屋があるだろう。 あの中にバケツがあって、それに井戸の水を汲んで持って入って体を拭くのさ。 まあ水をかぶるだけのやつも多いがな」
「知らなかった……」
「そうだろうなぁ…… 小屋を使うときは、朝早くか夜だからな。 それもみんな毎日は使ってないと思うぞ、体は拭くだけで十分さ! それなら自分の部屋でもできる」
前世からお風呂に入っていて、今世でも毎日行水をしていた身としては、ちょっときびしいかなぁ。
住んでいるところが馬番の小屋でよかった。
においだけ我慢すれば、あとは自由だよ。
シーナはもちろんのこと、マークもトムさんも樽風呂を知らないようだ。
わたしの指示で風呂場に樽を設置してもらう。
3×3メートル四方ぐらいの木の板の囲い。
一辺の端のほうだけ出入り口のために少し空いていて、そこから草原がみえる。
樽は草原がみえる奥のほうに置いてもらう。
その横に脱衣場になる床板をおく。
そこからは草原はみえない。
あぁ…… 完璧だ!
「この樽の中に入って草原を眺めるのっ! ステキでしょう」
設置を手伝いにきていたシーナが目くじらを立てて、いつもより低い声で告げる。
「これじゃぁ、草原から丸見えじゃないのっ! 今までと何が違うのよ」
「ぜんぜん違うよ! 草原から人はそう来ないし、お屋敷を通らないと行けない道なんだよ。その先にある湖はもう…… 馬たちのもの! 豪華なお散歩コースだよ!」
納得したようなしてないような顔をしたシーナを横目に、タライの行水から卒業して、これからは草原や夜空の星をみながら樽風呂に入ることを想像するとニヤけてしまう。
みんなは呆れてみてたけど……
楽しみだ!
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