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08. 文字を覚える
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まずは 文字。
脳が若いからなのか、『大人の思考』があるからなのか、案外はやく文字を覚えることができた。
この世界にも紙はあるけどそこそこ高価なため、リエール辺境領ではまだ羊皮紙が主流だ。
そんな羊皮紙でもわたしたちにはそう安くはない。
何度も書いて覚えるという使い方は無理だ。
そこで大人の手のひら二つ分より少し小さいぐらいの平たく薄い木箱をマークに用意してもらった。
木箱にできるだけ細かい砂を入れ、細く削った木の棒で 砂に字を書く。
書いては砂をならして消し、また書くを繰り返して字を覚えた。
持ち運びができる大きさなので、外でも小屋の中でも勉強することができる。
「考えたなぁ」
木箱に字を書いている様子を見て、マークは感心していた。
「少しでもはやく、文字を覚えたいからね」
図書室にある本が読みたい。
辺境伯邸だけあってけっこう広い図書室があるのを、わたしは ブラブラ歩き回っていたので知っているんだよ。フッフフ
『前世の記憶』も関係しているのか、しゃべれるからなのか、文字は思っていたよりもすんなり覚えられたけど……
ウーン。
ここから、どうするか。
マークと相談してやっぱりお屋敷にいる人も少しは味方につけた方がなにかと動きやすいだろうということになった。
そこで、メイドのシーナそれからシーナのお父さん料理長のトムさん。
この二人にもわたしの『前世の記憶』について話すことにした。
二人はもともとマークと仲が良い。
マークの亡くなった奥さんのお父さん。
馬番だったベンさんは料理長のトムさん夫婦と幼なじみで、トムさん夫婦はベンさんを兄のようにしたっていた。
なのに四年前の流行病でマークの奥さんと義父ベンさん、それにトムさんの奥さんも亡くなってしまった。
「トムさん、ちょっと相談したいことがあるんだ。 シーナちゃんと仕事が終わったら、馬小屋の家の方まで二人で来てくれないかな」
「おう、いいぞ。 シーナも一緒ということは…… わかった。シーナにも伝えておくよ」
「すまないなぁ。よろしくたのむよ」
夕方厨房に顔をヒョイとだしてマークは料理長のトムさんに声をかけると、すぐに馬小屋へ戻って行った。
「わざわざ小屋まで来てもらってすまないな。他の人には聞かれたくない話しなんだよ」
小屋まで来てくれた二人にお茶をだし、マークが舌足らずな三歳児の代わりに 一生懸命ていねいにわたしの状況を説明してくれた。
「ウーン…… そんな話しは聞いたことがないが、もしかしたらユニークスキルと呼ばれているモノなんじゃぁないのかい?」
「ユニークスキル?」
「マークは知らないか? 稀に王族や貴族の人たちに現れるらしいぞ。わしも詳しくは分からんがな、珍しいスキルみたいだし」
「そんなスキルがあるのか、パールは知ってたか?」
「知らないよ。だって前世は魔法が使えなかったし…… えーっと。 二人とも、わたしたちの話しを信じてくれたの?」
「フッフッ…… 今さら? なんだか二人の様子がおかしいねぇって、お父さんと二人で話していたのよ」
シーナがトムさんと顔を見合わせてうなずきあっている。
よほどわたしたち二人は不審な感じだったのか……
「知らなかった」
「でも。理由がわかって、スッキリしたわ」
シーナがわたしに優しげな微笑みを向けて、頭を撫でてくれた。
「ありがとうシーナ、信じてくれて」
ちょっと目に、涙が にじんだ。
脳が若いからなのか、『大人の思考』があるからなのか、案外はやく文字を覚えることができた。
この世界にも紙はあるけどそこそこ高価なため、リエール辺境領ではまだ羊皮紙が主流だ。
そんな羊皮紙でもわたしたちにはそう安くはない。
何度も書いて覚えるという使い方は無理だ。
そこで大人の手のひら二つ分より少し小さいぐらいの平たく薄い木箱をマークに用意してもらった。
木箱にできるだけ細かい砂を入れ、細く削った木の棒で 砂に字を書く。
書いては砂をならして消し、また書くを繰り返して字を覚えた。
持ち運びができる大きさなので、外でも小屋の中でも勉強することができる。
「考えたなぁ」
木箱に字を書いている様子を見て、マークは感心していた。
「少しでもはやく、文字を覚えたいからね」
図書室にある本が読みたい。
辺境伯邸だけあってけっこう広い図書室があるのを、わたしは ブラブラ歩き回っていたので知っているんだよ。フッフフ
『前世の記憶』も関係しているのか、しゃべれるからなのか、文字は思っていたよりもすんなり覚えられたけど……
ウーン。
ここから、どうするか。
マークと相談してやっぱりお屋敷にいる人も少しは味方につけた方がなにかと動きやすいだろうということになった。
そこで、メイドのシーナそれからシーナのお父さん料理長のトムさん。
この二人にもわたしの『前世の記憶』について話すことにした。
二人はもともとマークと仲が良い。
マークの亡くなった奥さんのお父さん。
馬番だったベンさんは料理長のトムさん夫婦と幼なじみで、トムさん夫婦はベンさんを兄のようにしたっていた。
なのに四年前の流行病でマークの奥さんと義父ベンさん、それにトムさんの奥さんも亡くなってしまった。
「トムさん、ちょっと相談したいことがあるんだ。 シーナちゃんと仕事が終わったら、馬小屋の家の方まで二人で来てくれないかな」
「おう、いいぞ。 シーナも一緒ということは…… わかった。シーナにも伝えておくよ」
「すまないなぁ。よろしくたのむよ」
夕方厨房に顔をヒョイとだしてマークは料理長のトムさんに声をかけると、すぐに馬小屋へ戻って行った。
「わざわざ小屋まで来てもらってすまないな。他の人には聞かれたくない話しなんだよ」
小屋まで来てくれた二人にお茶をだし、マークが舌足らずな三歳児の代わりに 一生懸命ていねいにわたしの状況を説明してくれた。
「ウーン…… そんな話しは聞いたことがないが、もしかしたらユニークスキルと呼ばれているモノなんじゃぁないのかい?」
「ユニークスキル?」
「マークは知らないか? 稀に王族や貴族の人たちに現れるらしいぞ。わしも詳しくは分からんがな、珍しいスキルみたいだし」
「そんなスキルがあるのか、パールは知ってたか?」
「知らないよ。だって前世は魔法が使えなかったし…… えーっと。 二人とも、わたしたちの話しを信じてくれたの?」
「フッフッ…… 今さら? なんだか二人の様子がおかしいねぇって、お父さんと二人で話していたのよ」
シーナがトムさんと顔を見合わせてうなずきあっている。
よほどわたしたち二人は不審な感じだったのか……
「知らなかった」
「でも。理由がわかって、スッキリしたわ」
シーナがわたしに優しげな微笑みを向けて、頭を撫でてくれた。
「ありがとうシーナ、信じてくれて」
ちょっと目に、涙が にじんだ。
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