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一章
バトルレックス
しおりを挟む「怖い……流石に怖い…………」
――ダンジョン二階層への入口
ゴツゴツとした岩で作り上げられたその階段からは、ビュゥゥという不気味な風と共に、直ぐに土に返してやるとばかりのモンスターの唸り声が聞こえる。
未だかつて、二階層への進出をフェイはしたことが無い。
冒険者学校では先生による贔屓のせいでまともな成績を決められていない為、いつもビリだったが、知識には自信があるフェイ。
まぁその知識の中に嘘の情報も混じりまくっているのだが……。
それでも地図の履修は済んでいるフェイは、迷うことは流石にないだろうと唾を飲む。
「それでもやっぱり……」
ダンジョンの階層が変わるとどれ程までの違いが生まれるか。
それを今日初めて身を持って味わおうとしているフェイには、全面的に心許無い物が多すぎた。
武器、防具等の装備類。回復薬などのアイテム類……。仲間無しの単独冒険者…………。
それ以外にも経験による知識、レベルなどなど、足りない物だらけのフェイには正直自殺行為とも言える世界だ。
それでも友の為。と、震える足にムチを打ったフェイは、死へ吸い込まれるように石階段を降りて行った――
~~~~~~~~~~~~~~~~~
――ダンジョン二階層
苔が生えた岩が目立つそこは、一階層とは別世界。
所々冒険者が放った魔法の跡があり、じわじわと修復が始まっている。
ダンジョンは道が変わる恐れがある程のダメージを負うと、少しづつ修復を始めるのだ――
「早く見つけて帰ろう」
一階層で魔法の跡などほとんど見た事がないことを踏まえると、魔法に頼る程二階層は別次元という訳だ。
それに、道を慎重に歩くフェイの足元には所々、刀身の折れた片手剣や、ボコボコにクレーターの出来た胸当てなどが落ちている。
それが何を意味するのかは考えたくないが、悪い方向に考えてしまうフェイは己の姿に苦笑いを浮かべる。
「僕……冒険者の格好ですらない……」
鎧なんて一切付けてなく、切れるかどうかも怪しい片手剣一本のフェイ。
滴る汗を手の甲で拭いながら足を速め、どうかモンスターに出会いませんようにと切実に願う……が。
そんな事叶うはずがない――
ここはダンジョンなのだから。
「バトル……レックス……?」
それは少し大きめな広間。
フェイが足を踏み入れたその瞬間、目の前には大きな石斧を持った二足歩行の恐竜が現れた――
『ゴガァァァァッッッ!!!!』
「――――――っ!!!」
バトルレックス――
二階層に現れるモンスターで上位の強さを誇るそのモンスターは、ルーキー冒険者が本気で会いたくないと願う、初心者殺しのモンスターだ――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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