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24話

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 翌朝。ギルマスに呼び出された私たちは、ギルド内の会議室に居た。来て早々に、ギルマスは疲れた顔で話しかけてくる。

「嬢ちゃん、良い話と悪い話がある。どっちから聞きたい?」
「……良い話からで」

 少し迷って、前者を選ぶことにした。嫌いな食べ物は後回しにして最後に悩むタイプなのだ、私は。
 するとギルマスは、にっこりとした笑顔で。

「良い話は、嬢ちゃんは推測を外した時の心配をしなくて良くなったってことだな」

 おお、推測が当たったってことか。良かった、私の妄想で周囲に大迷惑……なんてことにはならなかったらしい。……うん? これ、全然良くないのでは?

「それってつまり、私の予想通りに……」
「ああ。悪いニュースは、嬢ちゃんの推測が全部当たってそうだってことだ。昨日送った調査隊が、原因不明ながら大量のスライムを発見した。それに嬢ちゃんたちが倒した謎の魔物の遺体から、スライムと同じ物質が検出されたぞ」
「そんなの、どちらも最悪のニュースじゃないか……」

 行方不明者が続出している地域で発見された、原因不明の大量のスライム。そして私たちが戦った謎の魔物の、スライムとの関連性。それは、『行方不明者事件の元凶は私たちが戦った謎の魔物である』ということと、『謎の魔物の正体がスライムである』という二つの推測が間違っていないと確信させるには充分だった。

「今後はどうするの」
「まずは銀狼の平原、金熊の森の立入禁止措置、貴族との協力に騎士団への援軍要請、討伐隊の編成も……いや、その前にスライムを狩りつくす必要があるな」
「スライムを全部やっちゃうの?」

 あくまであの謎の魔物が脅威なだけで、普通のスライムは別に問題ないと思うが。

「あの謎の魔物がスライムなのだとすれば、スライムの変異種か何かの可能性が高い。となれば、今後あの化けものに変異する可能性があるスライムは、居るだけでリスクだ」
「スライム退治ですか!? ふふふ、私の職人技のスライムつぶしをお見せしましょう!」
「何でマリナはそんなに乗り気なの……」

 スライム退治に意気揚々と立候補するマリナ。そ、そんなにあの気持ち悪い倒し方が気に入ってるのか。
 ドン引きする私の横で、しゅっしゅっとシミュレーションまで始めた彼女に対して、ギルマスはあっさりと。

「お前をスライムごとき相手に出す訳ねーだろ。スライムの変異種相手の切り札なんだから、基本待機だよ」
「そんなー!?」

 そりゃそうだ。変異すれば強力かもしれないが、普通のスライムは子供相手でも危険性がないとされるほど弱い魔物だ。そんな相手にAランクを使うとか、Aランクの無駄遣いもいいところ。私たちが戦った謎の魔物が再び出てくるような場合に備えて、温存しておくに決まっている。
 そういう相手、要は雑魚狩りは私みたいな二線級の魔法使いに任せておけば良いのだ。

「まあ、スライムは私たちに任せてくれよ。マリナは大物が出てきたときにその実力を発揮すれば良いんだから」
「おう、嬢ちゃんもその大物に備えて待機だからな」
「なんでー!?」
「嬢ちゃんだってスライム変異種相手に戦った一人だろうが。だいたい、この緊急時にAランクの二人をスライムごときに出す訳ねえだろ……」

 いやいやいや、確かにマリナは凄く強いしその意見に納得だけど、私は全然強くないんだが!? 例の謎の魔物(スライム変異種?)を相手にした時だってトドメをさしただけで、ほぼほぼマリナが相手にしてたし。

「というか、そもそも私本来の実力はせいぜいDランク程度で……」
「……嬢ちゃん、なんか勘違いしてねえか?」

 ギルマスが、呆れ顔でそう言ってきた。勘違い?

「良いこと教えてやるよ。あのスライム変異種の遺体、調査の過程で耐久性の検査をしててな」
「耐久性の検査?」

 そんなことまでしてたのか。まあ私の魔法でも効いたんだから、魔法に対しては案外脆かったんじゃあないだろうか。……そんな予想をしていたのだが。

「その結果、Cランクの魔法使いじゃ傷一つもつけれなかった」
「……え?」
「嬢ちゃん。俺も最初は嬢ちゃんの実力は大したことないと思ってたさ。だが……」

 そして、ギルマスは一言だけ。

「今の嬢ちゃん、Bランク以上の実力はあるぜ」

 そう呟いて、去っていった。そして後には……

「スライムつぶし、したかったのにぃ。何で出来ないんですか、もー!?」
「ランク詐欺が改善したのを喜ぶべきか、強敵相手の危険な役回りになりそうなことを悲しむべきか……うーん、複雑」

 悩む少女が二人、残されていた。



 それから数十分後。部屋には戻ってきたギルマスと、何人かの凄そうな人たちが集まっていた。マリナはともかく、私は場違いだろこれ。

「全員揃ったな。それではこれより、『銀狼の平原及び金熊の森制圧作戦』の作戦会議を始めるぞ!」

 会議を始めたのは、ギルマス。今回は彼も戦うつもりらしく、なんだか年季の入った装備を身にまとっている。

「第六騎士団団長、オネスト・ナイティーだ。王都からの応援がつくまで時間がかかるだろうが、それまでは我々が全力で戦うぞ」

 礼儀正しく挨拶をしたイケオジは、この街に常駐する騎士団の団長さん。ピッカピカの鎧と、誠実そうな雰囲気が特徴の典型的な騎士っぽい人だ。

「こんな緊急事態なんだ、ここは皆で力を合わせて戦おう」

 にこっと笑いながらそう話すのは、この街で四人(私がアレなので実質三人)しかいないAランク冒険者の一人、シトリス・ユダルフさん。なんか好青年ってイメージそのままの人だなあ。
 そして、最後に。

「……久しぶりね、シエラ」

 この街最強のAランク冒険者にして、かつての私の相方。ルヴィア・フレイヤだ。
 ……今すぐ帰りたい。



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