101 / 104
58話 何が何だか分からない
しおりを挟む
市場の制圧を終えて、都市部へと進軍する自衛隊。
その中でも特に先行していた偵察部隊は、走ってくる男を発見した。
「う、うん?………誰か走ってくる!あれは帝国兵じゃないか!?」
一人の隊員がそう言うと、他の隊員たちも気づき一斉に銃を向ける。緊張が場を支配する中で、走ってくる男は………
「や、やった!人だ、生きている!生きている人だ!」
そう言うや否や、ぐらりと倒れてしまった。
「あ、あいつ倒れたぞ?」
「お、おい!大丈夫か!」
心配した隊員たちが近寄ってみると、男はただ倒れているだけでは無かった。
「脈がない………おい、仰向けにしろ!」
慌てて仰向けにして、一人の隊員が男の目を開く。
「瞳孔が開いてる………光を当ててもダメだ。こりゃ死んでるぜ 」
「身なりからして一般人では無さそうだな。にしても、『生きている人』か。まるで死人ばかり見てきたかのような言い草だったな」
「こいつが来たのはあっちから………ちょうど、この港湾都市の中心部分か。そこで何かが起きているのかもしれん」
隊員たちの視線の先には、都市シャベドの中心部である城壁とそれに囲まれた多くの家があった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
偵察部隊から無線で報告を受けた本隊は、何らかの罠である可能性が高いとして都市中心部から数キロ離れた場所に陣取っていた。しかしながらF35での空撮や偵察の結果、帝国軍に動きがないどころか内部が大量の自殺らしき死体で溢れていることが分かると動けずにいた。
理由は簡単。未知の病気である可能性が高いと上層部が判断したからである。もしそうだとしたら、大規模な部隊を突入させれば大変なことが起こってしまう。そこで、防護服などで固めた少数の調査隊を派遣。持ち帰ったサンプルなどを研究して原因を探っているのだが………
首相官邸 閣議室
「原因は分からないまま、ですか」
岸川が厳しい顔でそう話すと、厚生労働大臣の前藤がおどおどしながら説明をする。
「は、はい。魔法などが関連している可能性もあると考え、リマ国やクラート王国、インベルド王国の研究機関などとも協力しましたが、これといった成果は得られませんでした」
木市も微妙な雰囲気で報告をする。
「それと、帝国軍全体の動きが全く無くなっています。衛星写真で見ても大規模な艦隊や部隊が動いている兆候はありませんし、それどころかドラゴンの一匹すら出てきません。帝国全体で似たようなことが起きているのかもしれませんね」
「帝国全体で………そういえば、現地の部隊に異常は見られませんか?」
心配そうな表情で岸川がそう問うと、木市はすぐに返答する。
「それが、今のところほぼ全員問題ないようでして。唯一不調を訴えた隊員も隔離しましたが、ただの風邪である可能性が高いそうです」
「それでは、本当に何が原因なのやら………」
全員が頭を悩ませる中で、葉名だけは迷いない口調で報告をする。
「外務省の方では、ナルカル連合ともコンタクトを取っていますが、連合側の侵攻した地域でも同じような事態に陥っているそうです。連合側は何らかの病気だと考えているようですが、何故か連合の兵士は一切症状が見られないとかで相当に事態の原因究明に困っているようです」
「連合でも同じようなことになっているのですか………もう、訳が分かりませんね」
岸川がそうぼやくと、葉名も同意しながら話を続ける。
「そうですね。本当に何が何だかよく分かりません。一応インベルド王国、リマ国、クラート王国の政府に外務省からも人員を送っていますが、期待はしない方が良いでしょう」
「うーん………どうしたものですかね………」
帝国との戦争以上に解決が出来そうにないこの難題に、閣議室に集まった内閣一同は困っていた。
その中でも特に先行していた偵察部隊は、走ってくる男を発見した。
「う、うん?………誰か走ってくる!あれは帝国兵じゃないか!?」
一人の隊員がそう言うと、他の隊員たちも気づき一斉に銃を向ける。緊張が場を支配する中で、走ってくる男は………
「や、やった!人だ、生きている!生きている人だ!」
そう言うや否や、ぐらりと倒れてしまった。
「あ、あいつ倒れたぞ?」
「お、おい!大丈夫か!」
心配した隊員たちが近寄ってみると、男はただ倒れているだけでは無かった。
「脈がない………おい、仰向けにしろ!」
慌てて仰向けにして、一人の隊員が男の目を開く。
「瞳孔が開いてる………光を当ててもダメだ。こりゃ死んでるぜ 」
「身なりからして一般人では無さそうだな。にしても、『生きている人』か。まるで死人ばかり見てきたかのような言い草だったな」
「こいつが来たのはあっちから………ちょうど、この港湾都市の中心部分か。そこで何かが起きているのかもしれん」
隊員たちの視線の先には、都市シャベドの中心部である城壁とそれに囲まれた多くの家があった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
偵察部隊から無線で報告を受けた本隊は、何らかの罠である可能性が高いとして都市中心部から数キロ離れた場所に陣取っていた。しかしながらF35での空撮や偵察の結果、帝国軍に動きがないどころか内部が大量の自殺らしき死体で溢れていることが分かると動けずにいた。
理由は簡単。未知の病気である可能性が高いと上層部が判断したからである。もしそうだとしたら、大規模な部隊を突入させれば大変なことが起こってしまう。そこで、防護服などで固めた少数の調査隊を派遣。持ち帰ったサンプルなどを研究して原因を探っているのだが………
首相官邸 閣議室
「原因は分からないまま、ですか」
岸川が厳しい顔でそう話すと、厚生労働大臣の前藤がおどおどしながら説明をする。
「は、はい。魔法などが関連している可能性もあると考え、リマ国やクラート王国、インベルド王国の研究機関などとも協力しましたが、これといった成果は得られませんでした」
木市も微妙な雰囲気で報告をする。
「それと、帝国軍全体の動きが全く無くなっています。衛星写真で見ても大規模な艦隊や部隊が動いている兆候はありませんし、それどころかドラゴンの一匹すら出てきません。帝国全体で似たようなことが起きているのかもしれませんね」
「帝国全体で………そういえば、現地の部隊に異常は見られませんか?」
心配そうな表情で岸川がそう問うと、木市はすぐに返答する。
「それが、今のところほぼ全員問題ないようでして。唯一不調を訴えた隊員も隔離しましたが、ただの風邪である可能性が高いそうです」
「それでは、本当に何が原因なのやら………」
全員が頭を悩ませる中で、葉名だけは迷いない口調で報告をする。
「外務省の方では、ナルカル連合ともコンタクトを取っていますが、連合側の侵攻した地域でも同じような事態に陥っているそうです。連合側は何らかの病気だと考えているようですが、何故か連合の兵士は一切症状が見られないとかで相当に事態の原因究明に困っているようです」
「連合でも同じようなことになっているのですか………もう、訳が分かりませんね」
岸川がそうぼやくと、葉名も同意しながら話を続ける。
「そうですね。本当に何が何だかよく分かりません。一応インベルド王国、リマ国、クラート王国の政府に外務省からも人員を送っていますが、期待はしない方が良いでしょう」
「うーん………どうしたものですかね………」
帝国との戦争以上に解決が出来そうにないこの難題に、閣議室に集まった内閣一同は困っていた。
13
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」


日本は異世界で平和に過ごしたいようです。
Koutan
ファンタジー
2020年、日本各地で震度5強の揺れを観測した。
これにより、日本は海外との一切の通信が取れなくなった。
その後、自衛隊機や、民間機の報告により、地球とは全く異なる世界に日本が転移したことが判明する。
そこで日本は資源の枯渇などを回避するために諸外国との交流を図ろうとするが...
この作品では自衛隊が主に活躍します。流血要素を含むため、苦手な方は、ブラウザバックをして他の方々の良い作品を見に行くんだ!
ちなみにご意見ご感想等でご指摘いただければ修正させていただく思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
"小説家になろう"にも掲載中。
"小説家になろう"に掲載している本文をそのまま掲載しております。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

平和国家異世界へ―日本の受難―
あずき
ファンタジー
平和国家、日本。 東アジアの島国であるこの国は、厳しさを増す安全保障環境に対応するため、 政府は戦闘機搭載型護衛艦、DDV-712「しなの」を開発した。 「しなの」は第八護衛隊群に配属され、領海の警備を行なうことに。
それから数年後の2035年、8月。
日本は異世界に転移した。
帝国主義のはびこるこの世界で、日本は生き残れるのか。
総勢1200億人を抱えた国家サバイバルが今、始まる――
何番煎じ蚊もわからない日本転移小説です。
質問などは感想に書いていただけると、返信します。
毎日投稿します。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる