日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家

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45話 不穏

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 アグレシーズ帝国 港湾都市シャベド

 アグレシーズ帝国の中でも、沿岸部は特に発達している。
 その大きな理由の一つが、ナルカル連合との貿易である。

 両国はヤーロピアル大陸に存在し、隣接している地域はあるが、それらの地域は山が多く大量の商品の輸送は難しい。かといって他国を経由しようにも、険しい地形の国ばかりであったり、関税が非常に高かったりする。

 これらの問題を解決するために帝国が行おうとしていた両国の中間に位置する小国群への侵略も、結局は行われなかった。

 それらの小国群は連合との結びつきが強く、帝国としては連合に配慮した形で辞めざるを得なかったのだ。

 そうすると、残されたルートは海路だけとなる。だからこそ、沿岸部は発達しているのだ。

「連合産のキャロッツだよー!甘くて、みずみずしくて美味しいよー!」

「おいでおいでー!連合一の陶磁器職人、ガルナの作ったナルカル焼が今ならなんと一枚二千万エーンだよ!」

「さあさあ皆さん、今日も奴隷市の開幕でございます。本日の目玉はこちら!スィバ人の女性奴隷です!どうです皆さん?美人でしょう!こんないい女性を侍らせればあなたの生活も一段と変わりますよっ!」

 今日も、港近くで開かれる市場は賑やかだった。
 連合産の珍しいものや、近場の野菜、肉、近海でとれる魚、海藻に奴隷。なんでもそろっているここには庶民から貴族まで様々な人間が朝から集うのだ。

 しかし、今日の市場はいつもと様子が違った。一部の店に並ぶ商品が、異様に少ないのだ。

「おい、キャロッツはもう売り切れなのか!?」

「ご、ごめんねー。なぜかは知らないんだけど、今日は連合からの貿易船が一隻も港に来なかったんだよ」

 野菜が売られている店では、連合産の野菜が並ぶはずの棚は空っぽになっている。


「お、おい!儂なら三千万エーン出せる!さっきの客に返品させて儂に売れば千万得するぞ!?」

「男爵、ご冗談を。商売人として売った品物を返せなんて言えませんよ。申し訳ありませんが、もう今日は店じまいです」

 帝国貴族ご用達の陶磁器専門店も、普段取り扱っているナルカル焼がないせいでもう店じまいだ。


「お買い上げ有難うございまーす!へっへっへ。その女、貴方様のご命令には逆らえませんから、せいぜいください」

「がはは!言われなくとも!」

 ………平常運転なのは、奴隷市だけである。


「いったいどういうことなんだ?」

「なんか、ナルカル連合の商品だけ今日は少ないぜ」

「そういえば、二ホン攻めの第二陣の部隊がここから北の平野に集まってるらしい。食料を集めてるんじゃないか?」

「だとしたら、なんでナルカル焼とかまで保存のきかない野菜まで品薄になってるんだ?それもナルカル連合産のものだけ」

 人々が市場の品薄をいぶかしむ中。若い女の大声が響き渡る。

「ごーがーい!ごーがーい!号外ですよ皆さんっ!ナルカル連合が、先日のスィバ征服戦争と今やってる二ホンとの戦争への制裁として、対帝国貿易停止命令を出しましたよーっ!」

 その内容は、あまりにも衝撃的で。

「おいねーちゃん。その新聞一枚何エーンだ!?」

「くれ!おい、くれって!」

「なんてこった………おい、新聞を俺にもはやくよこせ!」

「可愛い子………ねえ貴方、私と一緒に今夜どう?」

 あっという間に人々が押し寄せる。

「号外だから無料ですよー!落ち着いてー!一杯ありますから、取り合いにならないでー!………最後のおねーさん、ちょっと後でゆっくりお話を………」

 大挙する人々に、号外を配る女性記者もへとへとになりながら………おい。

「いいから早く新聞よこせっ!」

「僕にもくれー---っ!!!」

「ティラナ新聞の号外とは珍しい!号外コレクターとしてこの戦い、負けるわけにはいきませぬ!」

(一部不純な動機のやつも居るが)人々は女性記者のもとに集まり、奪い取るように手に入れた新聞をすぐに読み始める。

「こりゃ、大変なことになってしまったなあ………」

「ああ、商売あがったりだ。仕方ない、こうなったらサベロ王国の商品を主力にして………」

「物価が上がりますなぁ。ならば今のうちに塩を買い占めておけば………ひひひ………」

 人々が号外に夢中になっている中。







 ゴオオオ………

 空の向こうから、かすかに音が響いていた。
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