66 / 104
24話 駆け巡る衝撃①
しおりを挟む
アグレシーズ帝国 帝国軍統括機構
「な、何だと!?」
アグレシア大宮殿の隣には城のような豪華な建築物である『帝国軍統括機構』が存在する。
世界でも最上位クラスの規模と質を誇る帝国軍を指揮する本部であるそこで、一人の男の驚いた声が響いた。
「二ホンへ侵攻した艦隊と連絡が取れない、だと!?」
男の名はシャーカー。帝国の軍部大臣を務めている。
そんな彼の声に、部下であるセリアも動揺を隠せない様子で報告を続ける。
「は、はい………勝ったにしても万が一負けたにしても、アークドラゴンがサーベルト基地に結果を報告するために来るはずなのですが一向に来ません………」
「む、むむむ。魔法通信は距離が遠すぎて無理であろうし、確認のために艦隊を派遣してもだいぶ時間がかかるであろうな………あちらからの報告を待つしかないわけだが………」
「その報告が来ておりませんゆえ、何らかの問題が起きたと思われます」
「こ、これは困ったな………そ、そうだ!アークドラゴンを向かわせて艦隊の確認をすれば良いのではないか?」
シャーカーがそんな考えを言ってみるが、セリアが即座にこう返す。
「それなのですが、すでにサーベルト基地から二度アークドラゴンでセルバダ海へ向かわせているのですがどちらも帰還しておりません。………あの辺りは二ホン国の位置に非常に近いと推定されていますし、二ホン軍の動きも活発でしょう。二ホン軍に撃墜された可能性が高いかと」
「高速なアークドラゴンが二度もやられたということか。仮に敵の部隊と遭遇しても、逃げるだけなら普通の国の軍隊相手なら容易なはずだ。間違いなく二ホン軍はかなりの能力を持っている。………ということは、まさか艦隊も二ホン軍に………」
「流石にそれはないでしょう。恐らく伝令役のアークドラゴンもこちらに来る途中で撃墜されたのではないでしょうか?敵の航空戦力は思った以上に強力なのかもしれません」
二人が深刻な顔をして話し合う中で、廊下の方がドタバタとうるさくなる。
「なんだ!?騒がしいぞ貴様ら!今セリア一等将官と重要な話をしているのだ、もう少し静かにしろ!」
怒りをにじませながらシャーカーがそう大声で注意すると、扉がコンコンコンとノックされる。
「た、大変申し訳ありません。しかし、先ほど非常に重要な情報が入ってきたためこちらも対応中なのです。軍部大臣閣下、大至急報告させていただいて宜しいでしょうか?」
そんな扉越しに聞こえてくる声に、シャーカーは顔をしかめつつ渋々許可を出す。
「………仕方あるまい、入ってこい。だが、どうでもいい話だったのなら許さんぞ!」
それを聞くや否や、一人の男が扉を開けてすぐに話し出す。
「魔法研究省で開発中の魔力探知機に、上位魔族級の魔力があったそうです!ちょうどその位置がセラバダ海付近であったため、二ホンへ派遣した艦隊が魔力の持ち主と遭遇した可能性が高いと考えられます!」
「な、何ですって!?」
「………開発中の魔力探知機の範囲はせいぜい500mだろう?それが数千kmと離れたセラバダ海のところまでなぜ探知できる?有り得んな」
セリアがその報告に大慌てになるが、シャーカーは落ち着いて疑問を呈す。だが、それに対しての答えは彼の想像を絶するものであった。
「魔力探知機の探知範囲は、魔力の大きさで変化します。通常の軍艦に乗せられる魔法結晶程度の魔力の大きさなら500mというだけです。しかし今回は数千km離れたものを探知したわけでありまして………」
「ま、待て待て待て!通常の軍艦と言ってもかなりの魔法結晶は乗せるんだぞ!アークドラゴンの何倍もの魔力の大きさにはなるはずだ。それですら500mほどしか探知範囲がないのに、今回の相手は数千キロ先でも探知できた………それほどとなると………まさか!?」
シャーカーが考えを巡らせながらそう話しているうちに。彼は最悪の事態が起きた可能性に思い当たる。
「しかし、しかし………そんなことが有り得るはずが………だがだとしたら艦隊と連絡が取れないことにも説明がつく………」
「いや、流石にそんな訳が………」
セリアもその可能性を考えながらも、流石に違うだろうと思っている。いや、思いたいのだろうか。
「お二人とも、ど、どうかしたのですか?」
二人のただならぬ様子に報告に来た男も緊張した面持ちでそう聞く。
「………どうせお前も帝国軍統括機構の一員だ。知っていても問題はないな」
シャーカーがそう述べ、その直後に衝撃の一言を口に出す。
「南方から魔王が来たかもしれん」
それを聞いて、男は卒倒した。
「な、何だと!?」
アグレシア大宮殿の隣には城のような豪華な建築物である『帝国軍統括機構』が存在する。
世界でも最上位クラスの規模と質を誇る帝国軍を指揮する本部であるそこで、一人の男の驚いた声が響いた。
「二ホンへ侵攻した艦隊と連絡が取れない、だと!?」
男の名はシャーカー。帝国の軍部大臣を務めている。
そんな彼の声に、部下であるセリアも動揺を隠せない様子で報告を続ける。
「は、はい………勝ったにしても万が一負けたにしても、アークドラゴンがサーベルト基地に結果を報告するために来るはずなのですが一向に来ません………」
「む、むむむ。魔法通信は距離が遠すぎて無理であろうし、確認のために艦隊を派遣してもだいぶ時間がかかるであろうな………あちらからの報告を待つしかないわけだが………」
「その報告が来ておりませんゆえ、何らかの問題が起きたと思われます」
「こ、これは困ったな………そ、そうだ!アークドラゴンを向かわせて艦隊の確認をすれば良いのではないか?」
シャーカーがそんな考えを言ってみるが、セリアが即座にこう返す。
「それなのですが、すでにサーベルト基地から二度アークドラゴンでセルバダ海へ向かわせているのですがどちらも帰還しておりません。………あの辺りは二ホン国の位置に非常に近いと推定されていますし、二ホン軍の動きも活発でしょう。二ホン軍に撃墜された可能性が高いかと」
「高速なアークドラゴンが二度もやられたということか。仮に敵の部隊と遭遇しても、逃げるだけなら普通の国の軍隊相手なら容易なはずだ。間違いなく二ホン軍はかなりの能力を持っている。………ということは、まさか艦隊も二ホン軍に………」
「流石にそれはないでしょう。恐らく伝令役のアークドラゴンもこちらに来る途中で撃墜されたのではないでしょうか?敵の航空戦力は思った以上に強力なのかもしれません」
二人が深刻な顔をして話し合う中で、廊下の方がドタバタとうるさくなる。
「なんだ!?騒がしいぞ貴様ら!今セリア一等将官と重要な話をしているのだ、もう少し静かにしろ!」
怒りをにじませながらシャーカーがそう大声で注意すると、扉がコンコンコンとノックされる。
「た、大変申し訳ありません。しかし、先ほど非常に重要な情報が入ってきたためこちらも対応中なのです。軍部大臣閣下、大至急報告させていただいて宜しいでしょうか?」
そんな扉越しに聞こえてくる声に、シャーカーは顔をしかめつつ渋々許可を出す。
「………仕方あるまい、入ってこい。だが、どうでもいい話だったのなら許さんぞ!」
それを聞くや否や、一人の男が扉を開けてすぐに話し出す。
「魔法研究省で開発中の魔力探知機に、上位魔族級の魔力があったそうです!ちょうどその位置がセラバダ海付近であったため、二ホンへ派遣した艦隊が魔力の持ち主と遭遇した可能性が高いと考えられます!」
「な、何ですって!?」
「………開発中の魔力探知機の範囲はせいぜい500mだろう?それが数千kmと離れたセラバダ海のところまでなぜ探知できる?有り得んな」
セリアがその報告に大慌てになるが、シャーカーは落ち着いて疑問を呈す。だが、それに対しての答えは彼の想像を絶するものであった。
「魔力探知機の探知範囲は、魔力の大きさで変化します。通常の軍艦に乗せられる魔法結晶程度の魔力の大きさなら500mというだけです。しかし今回は数千km離れたものを探知したわけでありまして………」
「ま、待て待て待て!通常の軍艦と言ってもかなりの魔法結晶は乗せるんだぞ!アークドラゴンの何倍もの魔力の大きさにはなるはずだ。それですら500mほどしか探知範囲がないのに、今回の相手は数千キロ先でも探知できた………それほどとなると………まさか!?」
シャーカーが考えを巡らせながらそう話しているうちに。彼は最悪の事態が起きた可能性に思い当たる。
「しかし、しかし………そんなことが有り得るはずが………だがだとしたら艦隊と連絡が取れないことにも説明がつく………」
「いや、流石にそんな訳が………」
セリアもその可能性を考えながらも、流石に違うだろうと思っている。いや、思いたいのだろうか。
「お二人とも、ど、どうかしたのですか?」
二人のただならぬ様子に報告に来た男も緊張した面持ちでそう聞く。
「………どうせお前も帝国軍統括機構の一員だ。知っていても問題はないな」
シャーカーがそう述べ、その直後に衝撃の一言を口に出す。
「南方から魔王が来たかもしれん」
それを聞いて、男は卒倒した。
13
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

日本は異世界で平和に過ごしたいようです。
Koutan
ファンタジー
2020年、日本各地で震度5強の揺れを観測した。
これにより、日本は海外との一切の通信が取れなくなった。
その後、自衛隊機や、民間機の報告により、地球とは全く異なる世界に日本が転移したことが判明する。
そこで日本は資源の枯渇などを回避するために諸外国との交流を図ろうとするが...
この作品では自衛隊が主に活躍します。流血要素を含むため、苦手な方は、ブラウザバックをして他の方々の良い作品を見に行くんだ!
ちなみにご意見ご感想等でご指摘いただければ修正させていただく思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
"小説家になろう"にも掲載中。
"小説家になろう"に掲載している本文をそのまま掲載しております。

俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

世界異世界転移
多門@21
ファンタジー
東京オリンピックを控えた2020年の春、突如地球上のすべての国家が位置関係を変え異世界の巨大な惑星に転移してしまう。
その惑星には様々な文化文明種族、果てには魔術なるものまで存在する。
その惑星では常に戦争が絶えず弱肉強食様相を呈していた。旧地球上国家も例外なく巻き込まれ、最初に戦争を吹っかけられた相手の文明レベルは中世。殲滅戦、民族浄化を宣言された日本とアメリカはこの暴挙に現代兵器の恩恵を受けた軍事力を行使して戦うことを決意する。
日本が転移するのも面白いけどアメリカやロシアの圧倒的ミリタリーパワーで異世界を戦う姿も見てみたい!そんなシーンをタップリ含んでます。
43話までは一日一話追加していきます!

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる