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12話 決断
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アグレシーズ帝国 アグレシア大宮殿
「な、なんだと!?」
帰ってきた交渉団の説明(主にキーマが説明した)は、ファリバンを始めとした帝国上層部にとって衝撃的なものであった。
「で、では二ホンとの交渉に完全に決裂したという訳か!?」
「は、はい。副代表のシャーリーもインベルドの者に手を出したせいで二ホンに捕らえられています………」
「そんなバカな………」
ファリバンにとっては、今回の交渉結果は想定すらしていない最悪の結果も同然である。本来なら、最初の交渉で穏便に出て二ホンと表向きは友好的な関係を築いていくのが理想であった。
そして、お互いに使節団を派遣し合ったりする中で二ホンの国力や軍事力を探り、格下なら戦争で技術を奪い取る。もし同格だったり格上ならそれまで通りに友好的な関係を続けてあわよくば二ホンに技術を援助してもらう………
そんな彼の計画は完全に破綻してしまったのだ。こうなった以上は二ホンの力を探るどころか、友好的など夢のまた夢である。
「………マークよ。二ホンの実力を正確に探ることは出来るか?」
しばらく考え込んだ後、ファリバンは側近のマークに質問を投げかける。
「残念ですが、それは非常に難しいでしょう。これまでの情報から、二ホンはウィストラ大陸の北西側に位置する島国であることが分かっています。すでにそちらの方へ、漁船に偽装させた私の手の者たちを何度も送っていますが二ホン側にすべて発見されています」
「では、ウィストラ大陸やクラート王国に侵入しているスパイから二ホンの情報を探れないか?」
「その手も打ってはいますが、二ホンの情報統制が強いのか、詳しい情報が全く分かりません。大陸に居る二ホンの部隊も、厳重な警戒をしておりすでに何名かが二ホンに捕らえられています。そちらの線も厳しいかと」
「むむむ………」
ファリバン自身で様々な案を考えマークに出しているが、マークからは全て不可能に近いと返されてしまう。他の者たちもまだ何かないかと頭を悩ませているが、もはや打つ手なしであろう。
「外交官が他国に捕らえられるなど、列強としての面目丸つぶれだ。何が何でもシャーリーは助け出さねばならん」
「だが、二ホンはキーマ殿の反対を無視して彼女を捕まえたのだろう?それに二ホンは我が国との国交を拒否している………もはや平和的な解決は不可能だぞ?」
「ふん。我らが帝国の恐ろしさを知らんのだろう。ここは奴らとの格の違いを見せつけてやればいい!」
「二ホンを打ち破ってその技術を得れば、我が国はラファーやシルフィアラにも対等に渡り合えるに違いあるまい!」
ファリバンがよく読めない二ホンの戦力に不安を感じる中、他の貴族たちの間で段々と二ホンとの開戦を望む声が強くなっていく。
「マークよ、本当に二ホンはそこまでの軍事力がないのだな?」
ファリバンが、マークへと再度問いかける。
「ええ、これまでの情報から考えるに技術力は我々より上でもラファーやシルフィアラより下です。それに、もし軍事力が極めて高いなら隠すことなどせず堂々とそれを示すはずです。隠すということはそこまでではないのでしょう」
そんなマークの論理的な回答に、ファリバンの言いようのない不安も薄れていく。そして、彼は決断する。
「………二ホンとの戦争を開始しよう。敵は今までの小国と別格なのは間違いない。油断せず全力で叩き潰せ!」
「な、なんだと!?」
帰ってきた交渉団の説明(主にキーマが説明した)は、ファリバンを始めとした帝国上層部にとって衝撃的なものであった。
「で、では二ホンとの交渉に完全に決裂したという訳か!?」
「は、はい。副代表のシャーリーもインベルドの者に手を出したせいで二ホンに捕らえられています………」
「そんなバカな………」
ファリバンにとっては、今回の交渉結果は想定すらしていない最悪の結果も同然である。本来なら、最初の交渉で穏便に出て二ホンと表向きは友好的な関係を築いていくのが理想であった。
そして、お互いに使節団を派遣し合ったりする中で二ホンの国力や軍事力を探り、格下なら戦争で技術を奪い取る。もし同格だったり格上ならそれまで通りに友好的な関係を続けてあわよくば二ホンに技術を援助してもらう………
そんな彼の計画は完全に破綻してしまったのだ。こうなった以上は二ホンの力を探るどころか、友好的など夢のまた夢である。
「………マークよ。二ホンの実力を正確に探ることは出来るか?」
しばらく考え込んだ後、ファリバンは側近のマークに質問を投げかける。
「残念ですが、それは非常に難しいでしょう。これまでの情報から、二ホンはウィストラ大陸の北西側に位置する島国であることが分かっています。すでにそちらの方へ、漁船に偽装させた私の手の者たちを何度も送っていますが二ホン側にすべて発見されています」
「では、ウィストラ大陸やクラート王国に侵入しているスパイから二ホンの情報を探れないか?」
「その手も打ってはいますが、二ホンの情報統制が強いのか、詳しい情報が全く分かりません。大陸に居る二ホンの部隊も、厳重な警戒をしておりすでに何名かが二ホンに捕らえられています。そちらの線も厳しいかと」
「むむむ………」
ファリバン自身で様々な案を考えマークに出しているが、マークからは全て不可能に近いと返されてしまう。他の者たちもまだ何かないかと頭を悩ませているが、もはや打つ手なしであろう。
「外交官が他国に捕らえられるなど、列強としての面目丸つぶれだ。何が何でもシャーリーは助け出さねばならん」
「だが、二ホンはキーマ殿の反対を無視して彼女を捕まえたのだろう?それに二ホンは我が国との国交を拒否している………もはや平和的な解決は不可能だぞ?」
「ふん。我らが帝国の恐ろしさを知らんのだろう。ここは奴らとの格の違いを見せつけてやればいい!」
「二ホンを打ち破ってその技術を得れば、我が国はラファーやシルフィアラにも対等に渡り合えるに違いあるまい!」
ファリバンがよく読めない二ホンの戦力に不安を感じる中、他の貴族たちの間で段々と二ホンとの開戦を望む声が強くなっていく。
「マークよ、本当に二ホンはそこまでの軍事力がないのだな?」
ファリバンが、マークへと再度問いかける。
「ええ、これまでの情報から考えるに技術力は我々より上でもラファーやシルフィアラより下です。それに、もし軍事力が極めて高いなら隠すことなどせず堂々とそれを示すはずです。隠すということはそこまでではないのでしょう」
そんなマークの論理的な回答に、ファリバンの言いようのない不安も薄れていく。そして、彼は決断する。
「………二ホンとの戦争を開始しよう。敵は今までの小国と別格なのは間違いない。油断せず全力で叩き潰せ!」
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