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9話 日ア国交樹立交渉①
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「使節団の皆様、こちらへどうぞ。日本国代表の方々がお待ちです」
使節団が馬車から降りて、警備兵に案内されながらインべリアーロ城に入る。すると、城内でもひときわ大きな部屋に案内された。
室内にいる黒い服を着た一団のうち、筆頭格であると思われる男が挨拶をしてくる。
「お待ちしておりました。日本国の外務副大臣を務めている大田原と申します。本日はよろしくお願いいたします」
「帝国使節団代表のキーマだ。以後よろしく頼むぞ」
(とりあえず黒い肌の連中では無かったか……まあそれなら良いだろう)
キーマがそんなことを考えていると、大田原の方から質問を投げかけてくる。
「さて、アグレシーズ帝国の皆様。本日はどのような要件でこちらに参られたのでしょうか」
「うむ。二ホン国へ我が国の皇帝陛下より寛大な提案があり、それを我々は持ってきたのだ」
鷹揚な態度でキーマがそう返答すると、大田原はいきなり切り込んでくる。
「恐らくそれは、国交樹立のためのものですよね?そのための条約を結びにいらしたということで宜しいですかね?」
「お、おお。察しがよくて助かる。これが我々からの提案だとも」
キーマがやや驚きながらも話を続ける。
(インベルド王国兵への拡声魔法の内容を掴んでいたのか……情報の管理はそれなりに上手くやっているようだな)
「ふむ、拝見させていただきます」
キーマの方から渡された書類の束を大田原が黙読しだす。
…
…
「これなら、問題ないでしょう。我が国としても、貴国との国交樹立へ前向きな姿勢を示させていただきます」
大田原のその言葉を聞いて、キーマはホッとする。
(ここで拒否をされたら二ホンの実力を探ることが難しくなるからな……)
「ところで、この最後の部分にあるお互いへの使節団の派遣についてなのですが……」
大田原がその件に触れると、キーマが説明をしだす。
「ああ、外交関係を築くにもお互いのことを全く知らないのでは話にならない。だからこそ使節団をお互いに派遣し、両国の経済や技術、軍事力や政治体系についての知識を深めようという訳さ」
「なるほど、それは良い提案ですね。そちらに関しても本国にいったん持ち帰って検討させていただきます」
「うむ。いい返事を期待しているぞ」
交渉は何の波乱もなく順調に進んでいた。
(二ホンがこの場で決めないのはまあ仕方あるまい。あちらも列強である我が国への対応に苦慮しているのだろう)
この場で決まらないことに他の使節団のメンバーは不満げだったが、キーマは満足していた。彼は帝国の重鎮である父から二ホンの技術力が高いことを知らされていたため、二ホンをさほど見下していなかったのである。
「ああ、それとだな。次の帰国への使節団派遣の前に念のため聞いておきたいのだが」
「はい。何でしょうか?」
上機嫌の中で、彼が放った一言はそれまでの順調さを一気に吹き飛ばすこととなる。
「まさかとは思うがもし貴国に肌の黒いものが居るなら、極力帝国使節団の目に入らないようにしてくれたまえ。ここまでの道も肌の黒いものが多く見ていて不快だったぞ?」
使節団が馬車から降りて、警備兵に案内されながらインべリアーロ城に入る。すると、城内でもひときわ大きな部屋に案内された。
室内にいる黒い服を着た一団のうち、筆頭格であると思われる男が挨拶をしてくる。
「お待ちしておりました。日本国の外務副大臣を務めている大田原と申します。本日はよろしくお願いいたします」
「帝国使節団代表のキーマだ。以後よろしく頼むぞ」
(とりあえず黒い肌の連中では無かったか……まあそれなら良いだろう)
キーマがそんなことを考えていると、大田原の方から質問を投げかけてくる。
「さて、アグレシーズ帝国の皆様。本日はどのような要件でこちらに参られたのでしょうか」
「うむ。二ホン国へ我が国の皇帝陛下より寛大な提案があり、それを我々は持ってきたのだ」
鷹揚な態度でキーマがそう返答すると、大田原はいきなり切り込んでくる。
「恐らくそれは、国交樹立のためのものですよね?そのための条約を結びにいらしたということで宜しいですかね?」
「お、おお。察しがよくて助かる。これが我々からの提案だとも」
キーマがやや驚きながらも話を続ける。
(インベルド王国兵への拡声魔法の内容を掴んでいたのか……情報の管理はそれなりに上手くやっているようだな)
「ふむ、拝見させていただきます」
キーマの方から渡された書類の束を大田原が黙読しだす。
…
…
「これなら、問題ないでしょう。我が国としても、貴国との国交樹立へ前向きな姿勢を示させていただきます」
大田原のその言葉を聞いて、キーマはホッとする。
(ここで拒否をされたら二ホンの実力を探ることが難しくなるからな……)
「ところで、この最後の部分にあるお互いへの使節団の派遣についてなのですが……」
大田原がその件に触れると、キーマが説明をしだす。
「ああ、外交関係を築くにもお互いのことを全く知らないのでは話にならない。だからこそ使節団をお互いに派遣し、両国の経済や技術、軍事力や政治体系についての知識を深めようという訳さ」
「なるほど、それは良い提案ですね。そちらに関しても本国にいったん持ち帰って検討させていただきます」
「うむ。いい返事を期待しているぞ」
交渉は何の波乱もなく順調に進んでいた。
(二ホンがこの場で決めないのはまあ仕方あるまい。あちらも列強である我が国への対応に苦慮しているのだろう)
この場で決まらないことに他の使節団のメンバーは不満げだったが、キーマは満足していた。彼は帝国の重鎮である父から二ホンの技術力が高いことを知らされていたため、二ホンをさほど見下していなかったのである。
「ああ、それとだな。次の帰国への使節団派遣の前に念のため聞いておきたいのだが」
「はい。何でしょうか?」
上機嫌の中で、彼が放った一言はそれまでの順調さを一気に吹き飛ばすこととなる。
「まさかとは思うがもし貴国に肌の黒いものが居るなら、極力帝国使節団の目に入らないようにしてくれたまえ。ここまでの道も肌の黒いものが多く見ていて不快だったぞ?」
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