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【公女が死ぬまで】
〖幕間〗何も知らない愚者たちは(1)〖R15〗
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※直接的な表現は避けていますが、ベッドシーンがあります。ご注意下さい。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー
ボアネルジェスは王宮内にある第二王子宮の、自らの寝室のベッドの上にいた。
余人の目がないせいか彼は一糸まとわぬ生まれたままの姿で、逞しく鍛え上げた肉体を惜しげもなく晒している。それを目にすることができるのは、この場でもそれ以外でも唯ひとりだけだ。
「⸺ふふ。今夜もとっても素敵でしたわ、ジェスさまぁ」
蜂蜜の蕩けるような甘え声を出して彼の逞しい胸板にしなだれかかるのは、他でもないマリッサである。彼と同じく一糸まとわぬ裸身の彼女はもうすでに、ボアネルジェスから幾夜にもわたって寵愛を受けていた。
「そなたは何度抱いても柔らかいのう」
こちらも蕩けた笑みを返すボアネルジェスは、右腕でマリッサを腕枕してやりながら、左手で彼女の豊満な胸を揉みしだく。
「やんっ、もう、ジェスさまったらぁ」
「今さら恥ずかしがるものでもあるまい」
ボアネルジェスは大柄で精悍で大人びて見えるだけで、これでもまだオフィーリアと同い年で成人したての15歳でしかない。思春期真っ只中で、異性の身体に一番興味を引かれる年頃で、専門の教育係の閨教育も受けてはいたが、閨教育係よりもずっと若いマリッサの肉体は彼にとって格別だった。
未婚の男女のしきたりなどどこへやら。要するに世間一般の大多数の男性の例に漏れず、ボアネルジェスも覚えたての何とやらで毎夜盛っていたわけである。その相手としてひとつ歳下のマリッサは、彼にとってちょうどよい相手だった。
とはいえ彼は、実のところオフィーリアを捨てるつもりなど毛頭なかった。仕事ができて有能で従順で顔も美しく、しかもヘレーネス十二王家の直系の次期女公爵。どの点をとってもマリッサなどとは比べ物にならず、伴侶としてはそれ以上を探すほうが難しい。体型が貧相で女としての魅力が薄いことだけがオフィーリアの唯一の欠点なのだ。
そう、オフィーリアが女として魅力的であれば何も問題などなかったのだ。だが胸も尻も身長でさえ同年代だけでなく歳下のマリッサにすら見劣りするようでは、自分の妃としては相応しくない。
数年経てばオフィーリアももっと女らしくなるのかも知れなかったが、大事なのは今なのだ。数年先まで待ってなどおれようか。
だからボアネルジェスは我慢しきれずマリッサに手を出した。マリッサの方でも寵愛を受けられることを喜んで、恥じらいつつも身を捧げてくれたのだ。
表向きはオフィーリアと婚約を続けて、婚姻まで至ることもやぶさかではない。というか公的な妃としては彼女以外にはあり得ない。そして法的な伴侶以外に女を囲うことは、社会的に黙認される風潮こそあるものの基本的には褒められたことではなく、オフィーリアもそれを認めないだろう。
だからこそ、嫌疑を呈しての婚約破棄なのだ。疑いをかけて3日ほど貴人牢に押し込めて不安に晒してやり、その上でマリッサとのことを認めるならば婚約破棄を撤回して無罪放免してやると持ちかければ、従順なオフィーリアはきっと頷くことだろう。
カストリア家の血筋を絶やすことは出来ぬから、そのうち嫌でも抱かねばならぬだろう、だがそんなのはもっと歳を重ねて、あやつの容姿が改善してからでよい。それまではマリッサで楽しめば良いのだから。
とはいえさすがにマリッサが男爵家の庶子のままでは恰好もつかぬ。だからボアネルジェスは彼女をサロニカ公爵の養子とすべく打診したのだ。サロニカ公爵は最初は驚いていたが、彼が諦めていた王妃の父の座を目の前にぶら下げてやればアッサリと同意した。
馬鹿な男だ、としかボアネルジェスは思わない。容姿、特に肢体だけが取り柄のマリッサと、その他すべてを持つオフィーリアとで、どちらがより王妃に相応しいかなど考えるまでもなかろうに。
「ねぇ……ジェスさまぁ」
物欲しそうな声を漏らして、マリッサが胸板に指を這わせてきたことでボアネルジェスは思考を中断する。
「なんだ、また欲しくなったのか」
「だあってぇ、ジェスさまったら本当に雄々しいんですもの」
「……ふふ、仕方のないやつめ」
たちまち瞳に熱を浮かばせて、ボアネルジェスは再びマリッサに覆い被さった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(うふふふふ。今頃オフィーリアさまは地下牢で泣いている頃ね)
ボアネルジェスの逞しい身体に組み敷かれ、その腰の下で存分に快楽を味わいながら、マリッサは内心でほくそ笑む。
(この素敵な身体も至尊の地位も、富も権勢も、全部ぜーんぶ、アタシのモノよ!)
望むものを全て手に入れた悦びに、彼女は嬌声を上げる。
マリッサは最初からボアネルジェスの持つ地位と権力、それに財産が目当てだった。彼自身は確かに雄々しく素敵だと思ったが、それはついでだ。
同年代の男なんて身体さえ開いてやれば割とチョロいものである。噂に聞くところによれば学習院での成績は公表される順位よりはだいぶ下だと言うし、オツムが弱いのならばなおさらだ。
だから彼女は、近くにボアネルジェスがいることを確認した上で、学習院内で騒ぎを起こしたのである。具体的には、中庭にある噴水に誤って落ちたふりをして飛び込んだのだ。
騒ぎを聞きつけて周囲の学生たちが集まってくる中、案の定ボアネルジェスもやって来た。他の学生たちが様子を見に行っているのに、学生会長たる自分が行かないのは恰好がつかないとでも考えたのだろう。そうして学生会長の王子まで来てしまえば、他の学生たちは遠慮して一歩引く。必然、ボアネルジェスがマリッサを助け出して経緯を聞くことになった。
この時に冤罪など捏造する必要はない。「うっかりしていて足を滑らせました。わたし、そそっかしくてよくあるんです」とでも言っておけば、ボアネルジェスはその後も何かにつけて気にかけるようになってくれた。そうして二、三度偶然を装って絡みを作ってやれば、ボアネルジェスは新鮮味を感じてよりマリッサに注目するようになった。
あとはもう、マリッサの思惑通りである。
『いつも助けて下さる殿下のことをわたしは……あっ、いえ、何でもありません』
『なんだ、そなたには珍しくハッキリせぬではないか』
『だって、だって……殿下には素敵なご婚約者さまがいらっしゃるのだし』
『……ああ、アレのことか。アレは我に従順だから気にせずとも良い』
『……マリッサ、その頬の跡はいかが致した』
『これは、その……何でもありません』
『何を恐れておる?心配するな、我はそなたの味方だ。言いたいことがあるなら何でも申してみよ』
『ありがとう、ございます。わたし、実は……オフィーリアさまに……』
『なんだと!?オフィーリアのやつめ、許せん!』
『ボアネルジェスさま……わたし、本当は初めてお会いした時から貴方様のことが……』
『可愛いことを言ってくれる。そんな口は我が塞いでやろう』
『あっ……』
はい楽勝~♪
マリッサの母は娼婦であった。彼女が市井で平民として暮らしていたというのはすなわち、母も在籍していた娼館で小間使いとして働いていた、である。そのまま成長して娼婦になるはずだったのに、母を身請けに来た男爵が母がすでに亡くなっていると知り、代わりにマリッサを引き取ったのだ。
男爵の思惑は明快だった。『誰でもいいから、金銭的に裕福な家の子息を捕まえて我が商会に援助を約束させろ』である。聞けばまだ顕著な影響こそ出ていないものの、経営が傾きかけているのだとか。
だからマリッサは狙いを定めたのだ。この国一番の金持ちに。
(ふふ。明日の朝になったら、オフィーリアさまの様子でも見てこよっかなぁ?)
自身の奥底でボアネルジェスが果てるのを感じながら、マリッサはそんなことを考える。地位も権力もあるお姫様が暗く薄汚い罪人牢に入れられて、さぞかし憔悴し絶望していることだろう。それを想像すると嗤いが止まらない。
実は貴人牢に入れようとしたボアネルジェスの指示を、「殿下は本当は……」などと言って騎士たちを唆し、罪人牢に入れるよう変えたのはマリッサだったのだ。
だって貴人牢に入っても軟禁されるだけで生活水準が変わらないって聞くし、そんなんじゃ精神的に追い込めないものね!やっぱり牢といえば不潔で不快な罪人牢でしょ!
「……ニヤニヤして、何を考えている?」
「…………ふふ。わたしはいつだって、ジェスさまのことだけを想っていますとも」
ボアネルジェスに問いかけられそう返事をして、マリッサは彼の唇に自分のそれを重ねた。彼の腕が自分の腰に回され、次いで体勢を入れ替えられてまたしても組み伏せられる。
ええ~またするつもりぃ~?もうホント絶倫なんだからぁ!
ふたりきりの世界で、文字通り乳繰り合う男と女はまだ気付かない。
まさにこの時、オフィーリアの生命の灯が消えたことに。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー
ボアネルジェスは王宮内にある第二王子宮の、自らの寝室のベッドの上にいた。
余人の目がないせいか彼は一糸まとわぬ生まれたままの姿で、逞しく鍛え上げた肉体を惜しげもなく晒している。それを目にすることができるのは、この場でもそれ以外でも唯ひとりだけだ。
「⸺ふふ。今夜もとっても素敵でしたわ、ジェスさまぁ」
蜂蜜の蕩けるような甘え声を出して彼の逞しい胸板にしなだれかかるのは、他でもないマリッサである。彼と同じく一糸まとわぬ裸身の彼女はもうすでに、ボアネルジェスから幾夜にもわたって寵愛を受けていた。
「そなたは何度抱いても柔らかいのう」
こちらも蕩けた笑みを返すボアネルジェスは、右腕でマリッサを腕枕してやりながら、左手で彼女の豊満な胸を揉みしだく。
「やんっ、もう、ジェスさまったらぁ」
「今さら恥ずかしがるものでもあるまい」
ボアネルジェスは大柄で精悍で大人びて見えるだけで、これでもまだオフィーリアと同い年で成人したての15歳でしかない。思春期真っ只中で、異性の身体に一番興味を引かれる年頃で、専門の教育係の閨教育も受けてはいたが、閨教育係よりもずっと若いマリッサの肉体は彼にとって格別だった。
未婚の男女のしきたりなどどこへやら。要するに世間一般の大多数の男性の例に漏れず、ボアネルジェスも覚えたての何とやらで毎夜盛っていたわけである。その相手としてひとつ歳下のマリッサは、彼にとってちょうどよい相手だった。
とはいえ彼は、実のところオフィーリアを捨てるつもりなど毛頭なかった。仕事ができて有能で従順で顔も美しく、しかもヘレーネス十二王家の直系の次期女公爵。どの点をとってもマリッサなどとは比べ物にならず、伴侶としてはそれ以上を探すほうが難しい。体型が貧相で女としての魅力が薄いことだけがオフィーリアの唯一の欠点なのだ。
そう、オフィーリアが女として魅力的であれば何も問題などなかったのだ。だが胸も尻も身長でさえ同年代だけでなく歳下のマリッサにすら見劣りするようでは、自分の妃としては相応しくない。
数年経てばオフィーリアももっと女らしくなるのかも知れなかったが、大事なのは今なのだ。数年先まで待ってなどおれようか。
だからボアネルジェスは我慢しきれずマリッサに手を出した。マリッサの方でも寵愛を受けられることを喜んで、恥じらいつつも身を捧げてくれたのだ。
表向きはオフィーリアと婚約を続けて、婚姻まで至ることもやぶさかではない。というか公的な妃としては彼女以外にはあり得ない。そして法的な伴侶以外に女を囲うことは、社会的に黙認される風潮こそあるものの基本的には褒められたことではなく、オフィーリアもそれを認めないだろう。
だからこそ、嫌疑を呈しての婚約破棄なのだ。疑いをかけて3日ほど貴人牢に押し込めて不安に晒してやり、その上でマリッサとのことを認めるならば婚約破棄を撤回して無罪放免してやると持ちかければ、従順なオフィーリアはきっと頷くことだろう。
カストリア家の血筋を絶やすことは出来ぬから、そのうち嫌でも抱かねばならぬだろう、だがそんなのはもっと歳を重ねて、あやつの容姿が改善してからでよい。それまではマリッサで楽しめば良いのだから。
とはいえさすがにマリッサが男爵家の庶子のままでは恰好もつかぬ。だからボアネルジェスは彼女をサロニカ公爵の養子とすべく打診したのだ。サロニカ公爵は最初は驚いていたが、彼が諦めていた王妃の父の座を目の前にぶら下げてやればアッサリと同意した。
馬鹿な男だ、としかボアネルジェスは思わない。容姿、特に肢体だけが取り柄のマリッサと、その他すべてを持つオフィーリアとで、どちらがより王妃に相応しいかなど考えるまでもなかろうに。
「ねぇ……ジェスさまぁ」
物欲しそうな声を漏らして、マリッサが胸板に指を這わせてきたことでボアネルジェスは思考を中断する。
「なんだ、また欲しくなったのか」
「だあってぇ、ジェスさまったら本当に雄々しいんですもの」
「……ふふ、仕方のないやつめ」
たちまち瞳に熱を浮かばせて、ボアネルジェスは再びマリッサに覆い被さった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(うふふふふ。今頃オフィーリアさまは地下牢で泣いている頃ね)
ボアネルジェスの逞しい身体に組み敷かれ、その腰の下で存分に快楽を味わいながら、マリッサは内心でほくそ笑む。
(この素敵な身体も至尊の地位も、富も権勢も、全部ぜーんぶ、アタシのモノよ!)
望むものを全て手に入れた悦びに、彼女は嬌声を上げる。
マリッサは最初からボアネルジェスの持つ地位と権力、それに財産が目当てだった。彼自身は確かに雄々しく素敵だと思ったが、それはついでだ。
同年代の男なんて身体さえ開いてやれば割とチョロいものである。噂に聞くところによれば学習院での成績は公表される順位よりはだいぶ下だと言うし、オツムが弱いのならばなおさらだ。
だから彼女は、近くにボアネルジェスがいることを確認した上で、学習院内で騒ぎを起こしたのである。具体的には、中庭にある噴水に誤って落ちたふりをして飛び込んだのだ。
騒ぎを聞きつけて周囲の学生たちが集まってくる中、案の定ボアネルジェスもやって来た。他の学生たちが様子を見に行っているのに、学生会長たる自分が行かないのは恰好がつかないとでも考えたのだろう。そうして学生会長の王子まで来てしまえば、他の学生たちは遠慮して一歩引く。必然、ボアネルジェスがマリッサを助け出して経緯を聞くことになった。
この時に冤罪など捏造する必要はない。「うっかりしていて足を滑らせました。わたし、そそっかしくてよくあるんです」とでも言っておけば、ボアネルジェスはその後も何かにつけて気にかけるようになってくれた。そうして二、三度偶然を装って絡みを作ってやれば、ボアネルジェスは新鮮味を感じてよりマリッサに注目するようになった。
あとはもう、マリッサの思惑通りである。
『いつも助けて下さる殿下のことをわたしは……あっ、いえ、何でもありません』
『なんだ、そなたには珍しくハッキリせぬではないか』
『だって、だって……殿下には素敵なご婚約者さまがいらっしゃるのだし』
『……ああ、アレのことか。アレは我に従順だから気にせずとも良い』
『……マリッサ、その頬の跡はいかが致した』
『これは、その……何でもありません』
『何を恐れておる?心配するな、我はそなたの味方だ。言いたいことがあるなら何でも申してみよ』
『ありがとう、ございます。わたし、実は……オフィーリアさまに……』
『なんだと!?オフィーリアのやつめ、許せん!』
『ボアネルジェスさま……わたし、本当は初めてお会いした時から貴方様のことが……』
『可愛いことを言ってくれる。そんな口は我が塞いでやろう』
『あっ……』
はい楽勝~♪
マリッサの母は娼婦であった。彼女が市井で平民として暮らしていたというのはすなわち、母も在籍していた娼館で小間使いとして働いていた、である。そのまま成長して娼婦になるはずだったのに、母を身請けに来た男爵が母がすでに亡くなっていると知り、代わりにマリッサを引き取ったのだ。
男爵の思惑は明快だった。『誰でもいいから、金銭的に裕福な家の子息を捕まえて我が商会に援助を約束させろ』である。聞けばまだ顕著な影響こそ出ていないものの、経営が傾きかけているのだとか。
だからマリッサは狙いを定めたのだ。この国一番の金持ちに。
(ふふ。明日の朝になったら、オフィーリアさまの様子でも見てこよっかなぁ?)
自身の奥底でボアネルジェスが果てるのを感じながら、マリッサはそんなことを考える。地位も権力もあるお姫様が暗く薄汚い罪人牢に入れられて、さぞかし憔悴し絶望していることだろう。それを想像すると嗤いが止まらない。
実は貴人牢に入れようとしたボアネルジェスの指示を、「殿下は本当は……」などと言って騎士たちを唆し、罪人牢に入れるよう変えたのはマリッサだったのだ。
だって貴人牢に入っても軟禁されるだけで生活水準が変わらないって聞くし、そんなんじゃ精神的に追い込めないものね!やっぱり牢といえば不潔で不快な罪人牢でしょ!
「……ニヤニヤして、何を考えている?」
「…………ふふ。わたしはいつだって、ジェスさまのことだけを想っていますとも」
ボアネルジェスに問いかけられそう返事をして、マリッサは彼の唇に自分のそれを重ねた。彼の腕が自分の腰に回され、次いで体勢を入れ替えられてまたしても組み伏せられる。
ええ~またするつもりぃ~?もうホント絶倫なんだからぁ!
ふたりきりの世界で、文字通り乳繰り合う男と女はまだ気付かない。
まさにこの時、オフィーリアの生命の灯が消えたことに。
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