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公女さまが殿下に婚約破棄された
断罪劇の後始末
しおりを挟む「まあ、タイチさま!ごきげんよう!」
久々に男爵領の領都本邸へ顔を見せると、公女さまが輝くような笑顔で出迎えて下さった。
「お変わりありませんか?よからぬことに巻き込まれておいでではありませんの?」
「大丈夫ですよ。全て丸く収まりましたから」
安心させるように俺がそう言うと、彼女はますます顔を綻ばせて、嬉しそうに「ふふ、そうなんですのね」と笑った。
いや知ってるはずなんだけどなあ。
ていうか可愛くない?在学中はツンと澄ましてて凛々しさばかりが目につく人だったのに、素はこんなに可愛い人だったのか。
あのパーティーから10日してお戻りになった陛下は、すでに連絡を受けていらしたようで帰国早々大激怒だったそうだ。王城に戻るより先に公爵家の王都公邸にお立ち寄りになって、公爵閣下に頭をお下げになったらしい。そして王太子は廃嫡し、公女さまを勝手に処刑させたことの責任を取らせて死罪にすると約束なさったとか。
さすがに公爵閣下もこれには慌てたらしく、ちゃんと保護してあるから問題ない、王家として責任さえ取って貰えればそれでいいと譲歩なさったそうだ。
いやあ、全然処刑でいいと思うんだけどなあ。あの馬鹿王太子、噂によると全く反省してないみたいだし。
王太子は廃嫡の上、去勢処理されて離宮に生涯監禁されることになったらしい。まあ妥当な処分かな。しばらくしたら、病死したって公表されることになるんだろう。
そもそも公女さまと婚姻することで公爵家の後ろ盾を得ることが立太子の前提だったらしく、それを自分から破棄したんだから王太子……廃嫡されたんだから「元」王太子か。とにかく殿下の将来は文字通り消えて無くなったわけだ。
あと殿下を誘惑した悪女ってことで、男爵家の娘は公開処刑された。見た目がちょっと可愛いからって調子乗りすぎだったし、何よりも王妃様が大激怒で裁判もほぼ出来レースみたいなもんだったと聞いている。
なんか「自分はヒロインだ、悪役令嬢を断罪して何が悪い」みたいなことを喚いてたみたいだけど、何言ってるのかサッパリ分からん。もう少しまともな言い訳のひとつもできんかったんかアイツは。
まあできんかったんだろうな。子供の頃から頭の足りてない、よく分からんことばかり言って周りを困らせてたダメな子だったしな。
そして実家の男爵家も責任取らされてお取り潰しだそうだ。あそこの親父さん、苦労性で常に胃に穴が空いてるような人だったけど、とうとうバカ娘のせいで何もかも失うハメになっちゃったなあ。
本当、あんなのが婚約者だったなんて恥ずかしくて誰にも言えんわマジで。
「どうなさったのタイチさま?なにかお悩みでもおありなのですか?」
特にこの人には絶対に言えん。まあ全貴族の情報を記憶してるっつうなら知られててもおかしくないけども。
ちなみに、公女さまの追放要因になったイジメというのは、どれもこれもほとんど全部が公女さまの関与はないと裁判で証明されたらしい。いくつか実際に起こってて関与したか疑わしいものもあるらしいが、まあ多分彼女はやってない。
「何でもありませんよ。ちょっと回想に耽っていただけで」
「そう。それなら良うございました」
「あの、ところで」
「はい?どうされました?」
なんで貴女は、まだ男爵家本邸に滞在してらっしゃるんですかね?
あれからもう半年近く経ってるし、もうぼちぼち公爵家へお戻りになっても構わない気がするんですが?
「わたくしがヨロズヤ家にいては、不都合でもおありですの?」
公女さまは俺の表情からだけで正確に見抜いて返事をなさる。
いや完璧に読み取らないで!?
「いえいえとんでもない。ですが、ここでは公爵家のような煌びやかな生活など望むべくもありませんし」
「わたくし、そんなもの望んだこともなくてよ?」
そう言って微笑った彼女の顔は、今までに見たこともないほど美しくて、思わず見とれてしまうほど輝いていた。
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