12 / 12
おまけページ②用語解説&世界観
しおりを挟む
【注意】
おまけページは小説ではありません。設定資料集です。
本編のネタバレを大量に含みますので、本編読了後の閲覧をオススメします!
本編で書ききれなかった裏設定などもてんこ盛りですので、本編をお読みになってからの方が楽しめます。
以上のことをご了承の上、お読み下さいますようお願いします。
作者拝
【用語解説】
・西方世界と東方世界
物語の舞台になっているのは「ラシア大陸」というこの星でもっとも大きな大陸になるが、この名を知っている(認識している)のは一部の学者だけ。というのもラシア大陸は中央やや西側に“大河”と呼ばれる巨大な河が世界を隔てる壁のように流れていて、その東西で世界が分断されているためである。ゆえに通常「世界」と言えば大河の西方か東方かに分けられるものであり、そこに住む人類にとっては大河の西方か東方かいずれかだけが「世界の全て」になる。
今では“大河”を越えられる船での行き来もあって東西の交流が生まれているものの、大河を越えるだけでも1日がかりの命懸けということもあって、わざわざ越えていくのはほとんどが商魂逞しい商人たちだけである。つまり大多数の一般人には相変わらず世界は分断されている。
ちなみに西方世界のはるか南には別に大陸があって、こちらはごく一部の人々に知られていて「南方世界」と呼ばれている。一部の海運商人たちが行き来しているようだが、まだまだ一般的には知られていない。
西方世界の世界地図は見る者に「竜」を思い起こさせる。ゆえに西方世界の地形は竜になぞらえて名付けられていることが多い。竜頭半島、竜額島、竜角山地、竜脚半島、竜尾平野、竜翼山脈、竜骨回廊、などなど。
ちなみにブロイス南部国境から南下すると竜翼山脈の最西部に出て、そこには西方世界の最高峰である竜心山があり、エトルリアはそのさらに南側、竜脚半島の北部一帯を領有する。つまりアンジェリーナとオーロラは西方世界有数の高山帯を越えてエトルリアに入ったことになる………と言いたいが、そこの地下にはドワーフの王国『岩都』があり、ふたりは岩都を経由してエトルリアに抜けていたりする。
・〈賢者の学院〉
アルヴァイオン大公国の首都ロンディネス近郊に所在する「大学」。
この世界は6歳から3年間通う初等学校、9歳から3年間通う中等学校とがあり、どの国でも子供の教育には力を入れていて比較的庶民でもよほどの貧困層以外は教育を受けている。それはほとんど誰もが霊力を持ち魔術が学べるからで、子供たちに力の使い方を学ばせ制御させるとともに社会常識を覚えさせないと犯罪が爆発的に増えるからでもある。
そして受験期間1年間をおいて13歳から3年間通うのが高等教育すなわち大学で、基礎教養に類する中等教育まで修めた者たちがより専門的で高度な教育を受けるために自ら志願して入学する学び舎になる。
賢者の学院はそうした大学の中でももっとも歴史と権威があり、世界中の優秀な人材がこぞって入学を目指す憧れの園である。
学院は3つの“塔”からなり、“知識の塔”は主に知識と魔術、魔力と霊力のコントロールを学ぶ。“奇跡の塔”は神の御業とそれをコントロールする法術を中心に学ぶ。そして“力の塔”は王侯貴族の帝王学や武力、権力などの力の使い方を学ぶ。
そうしたことから知識の塔の出身者は魔術師や学者を志す者が多く、入塔者ももっとも多くて毎年およそ5000~10000人にも及ぶ。奇跡の塔は毎年数百人、これは別に神教教団が運営する大学〈神学校〉があるからで、法術師を目指す者は〈神学校〉に進む場合が多いため。そして力の塔は各国の次世代の王たちや“勇者”候補などが入塔、卒塔を目指す。
各塔とも卒塔成績上位20名には席次が与えられ、それは肩書として一生名乗ることができる栄誉となる。力の塔の上位10名には特に“勇者候補”としての栄誉も与えられ、彼らは卒塔後に冒険者として研鑽を積み経験を重ねて勇者として認められるよう励んでいく。
ただし勇者を目指すか自国の王を目指すかそれとも別の道を歩むかは当人の意思に委ねられるため、毎年のように勇者が誕生するわけではない。すでに勇者が存在する場合は辞退することも多い。
・勇者
冒険者として活動する者たちの中から経験を積み実績を上げて、世の人々に平和と安寧をもたらすまでに至ったごく一部の者たちの尊称。特に資格があるわけではなく、自然発生的にそう呼ばれるようになるもので人類の英雄として称えられ尊敬されるのが勇者である。
つまり人間性最悪だけどスキル持ってるだけで勇者、とか、聖剣に選ばれたから自動的に勇者、なんてことはない。過去には人間離れした力を持つがゆえに畏怖され敬遠された勇者もいたというが、現代ではそういうこともない。
現在、勇者として認められているのはブロイス出身の勇者ヴォルフガング、アルヴァイオン出身の勇者リチャード、そしてエトルリア出身の勇者レギーナの3名。それぞれ670年度、671年度、672年度の力の塔の首席卒塔者である。
ちなみにマインラートが669年度の15席に留まっているのは、一学年下のヴォルフガングが勇者を目指すことでブロイス国内が意思統一されていたから。でなければ彼の席次はもっと上になっていたはずである。
・冒険者
この世界の冒険者はひとつの職業として公的に認められており、ある程度の社会的信用もある比較的人気の職業でもある。ただし人類の大半が魔力(霊力)を持つこともあり、冒険者には様々な社会的規範が求められる。(魔力を持たない人間、いわゆる“魔力なし”は総人口のおよそ1割程度)
冒険者ギルドは全国的な統一組織ではなく都市単位、あるいは個々の店舗単位で営業するが、冒険者の規範はどのギルドでも統一されている。これは冒険者が一般市民よりも武力(剣技や魔術など)を持っているためで、ギルド側というより冒険者側の取り決めと呼ぶべきか。
冒険者には実力を示す指標として「冒険者ランク」が設定されている。ランクによって社会的信用も変わり、高くなればなるほど名士として扱われる。
ランクは下から順に、以下の8階級がある。
“駆け出し”(認識票は白)
“見習い”(認識票は黄)
“一人前”(認識票は緑)
“腕利き”(認識票は青)
“熟練者”(認識票は赤)
“凄腕”(認識票は黒)
“達人”(認識票は銀)
“到達者”(認識票は金)
“一人前”までが低ランク、“凄腕”から高ランクになる。“腕利き”に上がれば収入が安定して生活に余裕ができ、“熟練者”ともなれば有力な冒険者として冒険者仲間からも一目置かれ、社会的にも尊重されるようになる。そして“達人”以上は世界的にも数が少なく、勇者とそのパーティメンバー以外には数えるほどしか存在しない。ちなみに作中に出てくる勇者レギーナは現在“到達者”である。
なお、勇者としてさらに実績を積んでいけば“到達者”を超えて“頂点”(認識票は白金)にまで至る。すでに引退した先代勇者ユーリや先々代勇者ロイなどが“頂点”として有名。
・魔力と霊力
この世界の森羅万象は全て魔力によって構成されており、ゆえに魔力は全ての根源にして構成元素でもある。その魔力は大別して黒、青、赤、黄、白の五色に分類され、森羅万象の全てが五色のいずれかに属する。それは人類も動植物も自然現象も、神々であってさえも例外ではない。
特定の色の魔力の影響を強く受けることを「加護」といい、特定の色の加護を持つ人々が同じ加護の神々を信奉することで宗派が成り立っている。そうした加護と宗派を取りまとめているのが「イェルゲイル神教」で、西方世界でもっとも信者数の多い多神教になる。
ちなみにどの色の加護を得ているかは瞳の色に現れる。つまり朱色のマインラートは赤加護、琥珀色のアンジェリーナは黄加護、藍色のオーロラは青加護ということになる。ついでに言えば加護は遺伝しないので、赤加護と黄加護の両親から生まれた子供が赤加護であってもそれは単なる偶然ということになる。
魔力の中でも人体を構成するものを特に呼び分けて「霊力」という。人類は他の動植物や自然現象とは違う特別な生物である、というある意味選民的な思想の現れだが、神々が自らを模して人類を作り出したという神話がある以上、自分たちを特別視するのはある意味でやむを得ないことでもある。
魔術は人類の体内に存在すると言われる「霊炉」と呼ばれる器官で霊力を生成し、それを燃料として術式によって霊炉を起動させ、自分の周囲の魔力をエネルギーに変えることで発動させる。つまり霊力は魔術の発動強度、魔力は魔術の威力に関わってくる。
魔力(霊力)は生命力や活力にも密接に関わっていて、魔力を失うことは生命力の枯渇、つまり死に直結する。いわゆる「魔力なし」の人々は、自身の霊力を生命力の維持にしか回せず魔術に振り分けられないため、魔術が使えない。仮に無理やり使っても一瞬だけで、それ以上は命に関わるとされている。
森羅万象を構成するものが魔力である以上、魔力は善なる神々や人類、動植物などと同じように闇の眷属、つまり魔物や魔王なども成立・具現化させてしまう。本来的には魔力そのものには善悪の別はないため、善なるものも悪しきものも等しく生み出してしまうのだ。
そのため人類社会には常に勇者の存在が欠かせない。この世界に潤沢に備わる魔力は、魔王でさえ「定期的に発生」させてしまうため、勇者とその候補たちは常にそうした事態に備えておくことを求められる。
・貴族称
貴族であることを示す「称号(称名)」で、姓の前に付けて名乗る。西方世界では一般的に当主とその正妻、嫡出の長男と長女(要は跡継ぎ)だけが称することを許される。なのでグロウスター伯爵家ではアンジェリーナだけが貴族称を名乗れない(次女なので)。
貴族称を名乗れないということは即ち、成人して独立すれば貴族ではなくなることを意味する。ゆえに貴族の次男以降は騎士を目指したり(士爵を得て貴族階級に残れるため)、独自に叙爵を得るために功績を挙げようとする。次女以降は他家に輿入れして正妻になれれば貴族としての立場が保証される。
そのため貴族子女の婚活はいつでも熾烈にして真剣勝負。アンジェリーナみたいに婚活に乗り気でない娘はまず間違いなく変人扱いされる。
貴族称は国によって違うのが普通で、アルヴァイオン大公国とガリオン王国では「ド」、ブロイス帝国、アレマニア公国、アウストリー公国などでは「フォン」、エトルリア連邦王国などでは「ディ」が用いられる。そのほか、「ヴァン」や「デ」などが貴族称として存在する。
・八裔国
古代ロマヌム帝国の直接の末裔を名乗る8ヶ国の総称。具体的にはリュクサンブール大公国、アルヴァイオン大公国、ブロイス帝国、アウストリー公国、エトルリア連邦王国、マグナ・グラエキア、イリシャ連邦、シェレンベルク=ファドゥーツ公国の8国のこと。
リュクサンブールとシェレンベルク=ファドゥーツを除けばいずれも大国ばかりであり、主要先進国でもある。上記2国はかつての領土の大半が独立してしまって国家としては都市国家レベルにまで衰退しているが、権威は相変わらず保持していて他国からの尊崇を集めている。特にリュクサンブールは古代帝国の皇帝一族の後裔であり、西方世界全体から特別な扱いを受けている。
このほかに西方世界の大国と言えばガリオン王国、イヴェリアス王国、帝政ルーシ、フェノスカンディア宗主国、王政マジャル、ヴァルガン王国、アナトリア皇国などが挙げられる。
・自由自治州スラヴィア
そのほか、「自由自治州スラヴィア」という地域がある。どこの国家にも属さず自由自治を勝ち取った特殊な地域であり、約20年前までの「スラヴィア争乱」で周辺大国の侵略を地域の都市住民が団結して退け独立自尊を勝ち取った稀有な地域である。
スラヴィアの各都市はそれぞれ“自由都市”として独立した自治を保っており、各都市の領主は「辺境伯」として扱われ独自の地位を築いている。中でも“自由都市”ラグはスラヴィアでも最初に自由自治を勝ち取った街で、そのため自由をこよなく愛するアンジェリーナみたいな冒険者が大勢集まって、今ではすっかり冒険者の街として有名になっている。
おまけページは小説ではありません。設定資料集です。
本編のネタバレを大量に含みますので、本編読了後の閲覧をオススメします!
本編で書ききれなかった裏設定などもてんこ盛りですので、本編をお読みになってからの方が楽しめます。
以上のことをご了承の上、お読み下さいますようお願いします。
作者拝
【用語解説】
・西方世界と東方世界
物語の舞台になっているのは「ラシア大陸」というこの星でもっとも大きな大陸になるが、この名を知っている(認識している)のは一部の学者だけ。というのもラシア大陸は中央やや西側に“大河”と呼ばれる巨大な河が世界を隔てる壁のように流れていて、その東西で世界が分断されているためである。ゆえに通常「世界」と言えば大河の西方か東方かに分けられるものであり、そこに住む人類にとっては大河の西方か東方かいずれかだけが「世界の全て」になる。
今では“大河”を越えられる船での行き来もあって東西の交流が生まれているものの、大河を越えるだけでも1日がかりの命懸けということもあって、わざわざ越えていくのはほとんどが商魂逞しい商人たちだけである。つまり大多数の一般人には相変わらず世界は分断されている。
ちなみに西方世界のはるか南には別に大陸があって、こちらはごく一部の人々に知られていて「南方世界」と呼ばれている。一部の海運商人たちが行き来しているようだが、まだまだ一般的には知られていない。
西方世界の世界地図は見る者に「竜」を思い起こさせる。ゆえに西方世界の地形は竜になぞらえて名付けられていることが多い。竜頭半島、竜額島、竜角山地、竜脚半島、竜尾平野、竜翼山脈、竜骨回廊、などなど。
ちなみにブロイス南部国境から南下すると竜翼山脈の最西部に出て、そこには西方世界の最高峰である竜心山があり、エトルリアはそのさらに南側、竜脚半島の北部一帯を領有する。つまりアンジェリーナとオーロラは西方世界有数の高山帯を越えてエトルリアに入ったことになる………と言いたいが、そこの地下にはドワーフの王国『岩都』があり、ふたりは岩都を経由してエトルリアに抜けていたりする。
・〈賢者の学院〉
アルヴァイオン大公国の首都ロンディネス近郊に所在する「大学」。
この世界は6歳から3年間通う初等学校、9歳から3年間通う中等学校とがあり、どの国でも子供の教育には力を入れていて比較的庶民でもよほどの貧困層以外は教育を受けている。それはほとんど誰もが霊力を持ち魔術が学べるからで、子供たちに力の使い方を学ばせ制御させるとともに社会常識を覚えさせないと犯罪が爆発的に増えるからでもある。
そして受験期間1年間をおいて13歳から3年間通うのが高等教育すなわち大学で、基礎教養に類する中等教育まで修めた者たちがより専門的で高度な教育を受けるために自ら志願して入学する学び舎になる。
賢者の学院はそうした大学の中でももっとも歴史と権威があり、世界中の優秀な人材がこぞって入学を目指す憧れの園である。
学院は3つの“塔”からなり、“知識の塔”は主に知識と魔術、魔力と霊力のコントロールを学ぶ。“奇跡の塔”は神の御業とそれをコントロールする法術を中心に学ぶ。そして“力の塔”は王侯貴族の帝王学や武力、権力などの力の使い方を学ぶ。
そうしたことから知識の塔の出身者は魔術師や学者を志す者が多く、入塔者ももっとも多くて毎年およそ5000~10000人にも及ぶ。奇跡の塔は毎年数百人、これは別に神教教団が運営する大学〈神学校〉があるからで、法術師を目指す者は〈神学校〉に進む場合が多いため。そして力の塔は各国の次世代の王たちや“勇者”候補などが入塔、卒塔を目指す。
各塔とも卒塔成績上位20名には席次が与えられ、それは肩書として一生名乗ることができる栄誉となる。力の塔の上位10名には特に“勇者候補”としての栄誉も与えられ、彼らは卒塔後に冒険者として研鑽を積み経験を重ねて勇者として認められるよう励んでいく。
ただし勇者を目指すか自国の王を目指すかそれとも別の道を歩むかは当人の意思に委ねられるため、毎年のように勇者が誕生するわけではない。すでに勇者が存在する場合は辞退することも多い。
・勇者
冒険者として活動する者たちの中から経験を積み実績を上げて、世の人々に平和と安寧をもたらすまでに至ったごく一部の者たちの尊称。特に資格があるわけではなく、自然発生的にそう呼ばれるようになるもので人類の英雄として称えられ尊敬されるのが勇者である。
つまり人間性最悪だけどスキル持ってるだけで勇者、とか、聖剣に選ばれたから自動的に勇者、なんてことはない。過去には人間離れした力を持つがゆえに畏怖され敬遠された勇者もいたというが、現代ではそういうこともない。
現在、勇者として認められているのはブロイス出身の勇者ヴォルフガング、アルヴァイオン出身の勇者リチャード、そしてエトルリア出身の勇者レギーナの3名。それぞれ670年度、671年度、672年度の力の塔の首席卒塔者である。
ちなみにマインラートが669年度の15席に留まっているのは、一学年下のヴォルフガングが勇者を目指すことでブロイス国内が意思統一されていたから。でなければ彼の席次はもっと上になっていたはずである。
・冒険者
この世界の冒険者はひとつの職業として公的に認められており、ある程度の社会的信用もある比較的人気の職業でもある。ただし人類の大半が魔力(霊力)を持つこともあり、冒険者には様々な社会的規範が求められる。(魔力を持たない人間、いわゆる“魔力なし”は総人口のおよそ1割程度)
冒険者ギルドは全国的な統一組織ではなく都市単位、あるいは個々の店舗単位で営業するが、冒険者の規範はどのギルドでも統一されている。これは冒険者が一般市民よりも武力(剣技や魔術など)を持っているためで、ギルド側というより冒険者側の取り決めと呼ぶべきか。
冒険者には実力を示す指標として「冒険者ランク」が設定されている。ランクによって社会的信用も変わり、高くなればなるほど名士として扱われる。
ランクは下から順に、以下の8階級がある。
“駆け出し”(認識票は白)
“見習い”(認識票は黄)
“一人前”(認識票は緑)
“腕利き”(認識票は青)
“熟練者”(認識票は赤)
“凄腕”(認識票は黒)
“達人”(認識票は銀)
“到達者”(認識票は金)
“一人前”までが低ランク、“凄腕”から高ランクになる。“腕利き”に上がれば収入が安定して生活に余裕ができ、“熟練者”ともなれば有力な冒険者として冒険者仲間からも一目置かれ、社会的にも尊重されるようになる。そして“達人”以上は世界的にも数が少なく、勇者とそのパーティメンバー以外には数えるほどしか存在しない。ちなみに作中に出てくる勇者レギーナは現在“到達者”である。
なお、勇者としてさらに実績を積んでいけば“到達者”を超えて“頂点”(認識票は白金)にまで至る。すでに引退した先代勇者ユーリや先々代勇者ロイなどが“頂点”として有名。
・魔力と霊力
この世界の森羅万象は全て魔力によって構成されており、ゆえに魔力は全ての根源にして構成元素でもある。その魔力は大別して黒、青、赤、黄、白の五色に分類され、森羅万象の全てが五色のいずれかに属する。それは人類も動植物も自然現象も、神々であってさえも例外ではない。
特定の色の魔力の影響を強く受けることを「加護」といい、特定の色の加護を持つ人々が同じ加護の神々を信奉することで宗派が成り立っている。そうした加護と宗派を取りまとめているのが「イェルゲイル神教」で、西方世界でもっとも信者数の多い多神教になる。
ちなみにどの色の加護を得ているかは瞳の色に現れる。つまり朱色のマインラートは赤加護、琥珀色のアンジェリーナは黄加護、藍色のオーロラは青加護ということになる。ついでに言えば加護は遺伝しないので、赤加護と黄加護の両親から生まれた子供が赤加護であってもそれは単なる偶然ということになる。
魔力の中でも人体を構成するものを特に呼び分けて「霊力」という。人類は他の動植物や自然現象とは違う特別な生物である、というある意味選民的な思想の現れだが、神々が自らを模して人類を作り出したという神話がある以上、自分たちを特別視するのはある意味でやむを得ないことでもある。
魔術は人類の体内に存在すると言われる「霊炉」と呼ばれる器官で霊力を生成し、それを燃料として術式によって霊炉を起動させ、自分の周囲の魔力をエネルギーに変えることで発動させる。つまり霊力は魔術の発動強度、魔力は魔術の威力に関わってくる。
魔力(霊力)は生命力や活力にも密接に関わっていて、魔力を失うことは生命力の枯渇、つまり死に直結する。いわゆる「魔力なし」の人々は、自身の霊力を生命力の維持にしか回せず魔術に振り分けられないため、魔術が使えない。仮に無理やり使っても一瞬だけで、それ以上は命に関わるとされている。
森羅万象を構成するものが魔力である以上、魔力は善なる神々や人類、動植物などと同じように闇の眷属、つまり魔物や魔王なども成立・具現化させてしまう。本来的には魔力そのものには善悪の別はないため、善なるものも悪しきものも等しく生み出してしまうのだ。
そのため人類社会には常に勇者の存在が欠かせない。この世界に潤沢に備わる魔力は、魔王でさえ「定期的に発生」させてしまうため、勇者とその候補たちは常にそうした事態に備えておくことを求められる。
・貴族称
貴族であることを示す「称号(称名)」で、姓の前に付けて名乗る。西方世界では一般的に当主とその正妻、嫡出の長男と長女(要は跡継ぎ)だけが称することを許される。なのでグロウスター伯爵家ではアンジェリーナだけが貴族称を名乗れない(次女なので)。
貴族称を名乗れないということは即ち、成人して独立すれば貴族ではなくなることを意味する。ゆえに貴族の次男以降は騎士を目指したり(士爵を得て貴族階級に残れるため)、独自に叙爵を得るために功績を挙げようとする。次女以降は他家に輿入れして正妻になれれば貴族としての立場が保証される。
そのため貴族子女の婚活はいつでも熾烈にして真剣勝負。アンジェリーナみたいに婚活に乗り気でない娘はまず間違いなく変人扱いされる。
貴族称は国によって違うのが普通で、アルヴァイオン大公国とガリオン王国では「ド」、ブロイス帝国、アレマニア公国、アウストリー公国などでは「フォン」、エトルリア連邦王国などでは「ディ」が用いられる。そのほか、「ヴァン」や「デ」などが貴族称として存在する。
・八裔国
古代ロマヌム帝国の直接の末裔を名乗る8ヶ国の総称。具体的にはリュクサンブール大公国、アルヴァイオン大公国、ブロイス帝国、アウストリー公国、エトルリア連邦王国、マグナ・グラエキア、イリシャ連邦、シェレンベルク=ファドゥーツ公国の8国のこと。
リュクサンブールとシェレンベルク=ファドゥーツを除けばいずれも大国ばかりであり、主要先進国でもある。上記2国はかつての領土の大半が独立してしまって国家としては都市国家レベルにまで衰退しているが、権威は相変わらず保持していて他国からの尊崇を集めている。特にリュクサンブールは古代帝国の皇帝一族の後裔であり、西方世界全体から特別な扱いを受けている。
このほかに西方世界の大国と言えばガリオン王国、イヴェリアス王国、帝政ルーシ、フェノスカンディア宗主国、王政マジャル、ヴァルガン王国、アナトリア皇国などが挙げられる。
・自由自治州スラヴィア
そのほか、「自由自治州スラヴィア」という地域がある。どこの国家にも属さず自由自治を勝ち取った特殊な地域であり、約20年前までの「スラヴィア争乱」で周辺大国の侵略を地域の都市住民が団結して退け独立自尊を勝ち取った稀有な地域である。
スラヴィアの各都市はそれぞれ“自由都市”として独立した自治を保っており、各都市の領主は「辺境伯」として扱われ独自の地位を築いている。中でも“自由都市”ラグはスラヴィアでも最初に自由自治を勝ち取った街で、そのため自由をこよなく愛するアンジェリーナみたいな冒険者が大勢集まって、今ではすっかり冒険者の街として有名になっている。
23
お気に入りに追加
755
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
Mee.
恋愛
王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。
森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。
オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。
行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。
そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。
※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。
里海慧
恋愛
わたくしが愛してやまない婚約者ライオネル様は、どうやらわたくしを嫌っているようだ。
でもそんなクールなライオネル様も素敵ですわ——!!
超前向きすぎる伯爵令嬢ハーミリアには、ハイスペイケメンの婚約者ライオネルがいる。
しかしライオネルはいつもハーミリアにはそっけなく冷たい態度だった。
ところがある日、突然ハーミリアの歯が強烈に痛み口も聞けなくなってしまった。
いつもなら一方的に話しかけるのに、無言のまま過ごしていると婚約者の様子がおかしくなり——?
明るく楽しいラブコメ風です!
頭を空っぽにして、ゆるい感じで読んでいただけると嬉しいです★
※激甘注意 お砂糖吐きたい人だけ呼んでください。
※2022.12.13 女性向けHOTランキング1位になりました!!
みなさまの応援のおかげです。本当にありがとうございます(*´꒳`*)
※タイトル変更しました。
旧タイトル『歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件』
愛しているだなんて戯言を言われても迷惑です
風見ゆうみ
恋愛
わたくし、ルキア・レイング伯爵令嬢は、政略結婚により、ドーウッド伯爵家の次男であるミゲル・ドーウッドと結婚いたしました。
ミゲルは次男ですから、ドーウッド家を継げないため、レイング家の婿養子となり、レイング家の伯爵の爵位を継ぐ事になったのです。
女性でも爵位を継げる国ではありましたが、そうしなかったのは、わたくしは泣き虫で、声も小さく、何か言われるたびに、怯えてビクビクしていましたから。
結婚式の日の晩、寝室に向かうと、わたくしはミゲルから「本当は君の様な女性とは結婚したくなかった。爵位の為だ。君の事なんて愛してもいないし、これから、愛せるわけがない」と言われてしまいます。
何もかも嫌になった、わたくしは、死を選んだのですが…。
「はあ? なんで、私が死なないといけないの!? 悪いのはあっちじゃないの!」
死んだはずのルキアの身体に事故で亡くなった、私、スズの魂が入り込んでしまった。
今のところ、爵位はミゲルにはなく、父のままである。
この男に渡すくらいなら、私が女伯爵になるわ!
性格が変わった私に、ミゲルは態度を変えてきたけど、絶対に離婚! 当たり前でしょ。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観です。
※ざまぁは過度ではありません。
※話が気に入らない場合は閉じて下さいませ。
攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
悪役令息の婚約者になりまして
どくりんご
恋愛
婚約者に出逢って一秒。
前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。
その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。
彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。
この思い、どうすれば良いの?
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
感想ありがとうございます!
そうですねえ、婚約破棄までは割とよくある恋愛物だと思いますが、その後が3回転半くらいひねってるので…(笑)。面白かったと言って頂けて良かったです!
私の作品は基本的にどれも同一の世界観で書いてますので、もしよろしければ他の作品もお読み頂ければ、細かいところで「あ、このシーンはあそこに繋がる」などとニヤニヤできるかも知れません。詳しい世界観に関しては長編『落第冒険者“薬草殺し”は人の縁で成り上がる』で少しずつ書いてますので、よろしければそちらもご一読頂ければ。
まあ宣伝になってしまいますが(笑)。
この話の続編、というかサイドストーリーに関しては色々構想もあるのですが、他にも書きたい話がたくさんあるので手が回らない状態です。基軸となる『落第冒険者〜』もまだ三章までしか書けていませんので、なかなか…(^_^;
初めて作品を拝見してファンになりました!
素敵なお話ありがとうございます。
[なろう]も登録していますが、アルファポリスの方が短編・ショートが多くて最近は専らこちらで読み耽ってます。
アンジェリーナとアンジェラの二重生活を送ることになっても【自由】を諦めない強い心根に感動しました。
他の作品も楽しみにお待ち申し上げます。