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第二章後半【いざ東方へ】
2-36.改装の進捗は(2)
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スズの餌の保管庫の増設はまだ終わってはいなかった。とはいえ増設そのものはもう終えてあって、今は車内側の内装仕上げと魔力発生器の設置や調整をやっているところだという。メイン乗降口の改修もまだ途中で、だから車内への出入りは御者台の連絡用ドアを使っていた。
アルベルトは車内に戻り、自分の寝室に入る。持ち込んだ様々な道具類を収納した家具の引き出しや扉を次々に開けて中身を確認していく。
「良かった、全部あるね」
全部あって当然なのだが、それでもちゃんと確認できてホッと胸を撫で下ろす。使い慣れた道具類だけではなく、この遠征に必要になると思われるものを思いつく限り持ってきていて、中にはそれなりに高価なものもあったりするので、自分の目で確かめるまでは何となく不安だったのだ。
何しろ彼は普段質素な暮らしをしている低ランク冒険者なのだ。持ち込んだ道具類はそれまでの長いキャリアでコツコツと貯めて増やした、いわば彼の全財産なので、紛失したり盗まれたりしたら大損なのだ。
「その顔は、ちゃんと全部確認できたみたいね?」
寝室から出てきたのをレギーナが目ざとく見つけて、茶化したように声をかけてくる。
「うん。なくなってるものは無かったからホッとしたよ」
「そんな道具の有無なんて気にしなくたって、なくなってればそのくらい買ってあげるけど?」
実際にお金を出すのはレギーナでなくてミカエラなのだが、彼女は気安く断言する。まあミカエラの出す資金はパーティの資金なのでレギーナのものと言えなくもないが。
「いやあ、中には冒険で得たお金に替えられないものもあるからね」
「なあん?おいちゃん巻物でも持っとるん?」
「巻物もあるけど、まあ他にも色々ね」
巻物、とは戦闘用の魔道具で特定の術式を書き記した魔道書の一種だ。中にはひとつの術式しか書かれておらず、書かれている魔術は詠唱するだけで発動する。自分がその術式を覚えていなくとも書かれていれば使える、というか自分に使える霊力さえあれば巻物が使えるため、使いどころさえ間違わなければ非常に有用な魔道具である。
ただし巻物は一度使うと白紙になって使えなくなる。使えなくなるが新たに術式を書き込めばまた使えるようになるので、そういう意味では利便性が高い優秀な魔道具である。
なお複数の術式が記された“魔道書”という魔道具もある。こちらは本のように複数のページが綴じられていて、記載されている魔術も多岐にわたり、しかも複数回使える代物だ。ただし規定されている使用回数よりも多くの魔術が記されているのが普通で、しかも規定回数を使い切ればこちらは消滅してしまう。
アルベルトは巻物だけでなく魔道書も持ち込んでいた。巻物はともかく魔道書の方は買おうとしても買えない事の方が多いので、もしも盗まれでもしたら真剣に大損である。
「ところで、そっちはどうだったんだい?」
「紛失や盗難どころか入られた形跡さえなかったわよ。当然、中の私服や化粧品なんかも全部あったわ」
なんのかんの言って自分もちゃっかりチェックしていたレギーナである。
私服の多くはコテージに移してはいたものの全部ではなく、特にこの時季に使わない厚手の衣類なんかは全部置いてあったし、アルベルトほどではないが彼女たちも様々な道具を持っていて車内に置きっぱなしにしていた。それらの大半は鍵のかかる寝室と荷物室に収められていて、扉に触られた形跡さえなかった。
「じゃ、あとは保管庫かな」
調理台周りを確認して、調理器具や調味料などもきちんと確認してから、アルベルトは再び車外へと出て行く。
「これ、元の保管庫より少し小さくしました?」
車体左側に増設された保管庫は、右側のアルベルトの寝床の下にあるものより一回り小型のものだった。容量にして5分の1ほど少なめであろうか。とはいえこの量ならスズの一食分としては充分で、左右の保管庫を合わせて三食程度は確保できそうである。
「さよう。重量バランスの問題がありましてな」
商工ギルドの脚竜車製作の職人によれば、元の設計だと右前部の保管庫と左後部の荷物室天井部の水タンクとで重量バランスを取ってあったのだという。それでも水タンクの中身はトイレの流し水や調理台の洗い水で使われるため、基本的に右側ばかりが重い状態になっていたのだそうだ。
だから例えば急な左旋回などすれば、遠心力に煽られて最悪転倒する恐れもあったのだという。
それを解消するのが左側保管庫の目的のひとつでもあったが、右と同じサイズのものを取り付けてしまうと、今度は水タンクの分だけ左側が重くなってしまう。それで左側を小さくすることで重量配分に配慮したのだそうだ。
「ですので、脚竜に餌を与える際は片方の保管庫を先に使い切るのではなく、左右交互に取り出して双方の残量をなるべく合わせるようにして頂けますかな」
「なるほど、分かりました」
「…で?結局それって何か変わるの?」
アルベルトの後をついて出てきたレギーナがなんの気なしに質問する。
「左右のバランスが取りやすくなって走るときの安定性が増した、ってことだよ」
「ふーん、じゃあいいことなのね」
分かったのか分かってないのか、よく分からない感じのレギーナ。でも彼女はこう見えて、何となくの大雑把な理解でも割と正確に把握していたりする。
「相変わらず、姫ちゃんは大雑把やなあ」
「なによ、そんなにいちいち全部事細かに把握しなきゃいけないわけ?」
「まあそこまでは言わんばってん」
元々頭脳明晰で、ふわりとした雑な説明でもかなり正確に理解できるんだから、もっと怜悧な雰囲気が出せないものか。一見して考えなしのおバカにしか見えないのがこの娘の欠点なんよねえ、と苦笑するばかりのミカエラである。
「で?これいつ完成するの?」
「はい、早ければ本日中に、遅くとも明日の朝のうちには」
左側保管庫の蓋をパカパカ開けたり閉めたりしながらレギーナが質問し、職人たちが畏まって受け答えする。
「そう。じゃあ明日の昼には車両を受け取って出発できるわね」
「それじゃ、この後お昼を食べてからチェックアウトと宿替えだね」
「宿替え?なんで?」
「あらレギーナ忘れたのかしら?〈人魚の涙〉亭にも泊まるって決めたじゃない」
「あ、そっか。そうだったわね」
「ひめ…忘れちゃダメ…」
「ところで支部長さん。契約書の書面は準備できたとかいな?」
「はい、正確な費用も算出致しまして準備を整えております。事務所の方へご案内致しましょう」
そうしてミカエラは商工ギルド支部長について事務所へと向かい、アルベルトはあらかじめ商工ギルドに購入依頼していた冷蔵箱を担いで使いたい食材を回収するため車内へと戻っていく。ヴィオレは再び車内各所の鍵を確認して回る。
そしてレギーナとクレアはみんなが戻ってくるのを暇そうに待つのであった。
アルベルトは車内に戻り、自分の寝室に入る。持ち込んだ様々な道具類を収納した家具の引き出しや扉を次々に開けて中身を確認していく。
「良かった、全部あるね」
全部あって当然なのだが、それでもちゃんと確認できてホッと胸を撫で下ろす。使い慣れた道具類だけではなく、この遠征に必要になると思われるものを思いつく限り持ってきていて、中にはそれなりに高価なものもあったりするので、自分の目で確かめるまでは何となく不安だったのだ。
何しろ彼は普段質素な暮らしをしている低ランク冒険者なのだ。持ち込んだ道具類はそれまでの長いキャリアでコツコツと貯めて増やした、いわば彼の全財産なので、紛失したり盗まれたりしたら大損なのだ。
「その顔は、ちゃんと全部確認できたみたいね?」
寝室から出てきたのをレギーナが目ざとく見つけて、茶化したように声をかけてくる。
「うん。なくなってるものは無かったからホッとしたよ」
「そんな道具の有無なんて気にしなくたって、なくなってればそのくらい買ってあげるけど?」
実際にお金を出すのはレギーナでなくてミカエラなのだが、彼女は気安く断言する。まあミカエラの出す資金はパーティの資金なのでレギーナのものと言えなくもないが。
「いやあ、中には冒険で得たお金に替えられないものもあるからね」
「なあん?おいちゃん巻物でも持っとるん?」
「巻物もあるけど、まあ他にも色々ね」
巻物、とは戦闘用の魔道具で特定の術式を書き記した魔道書の一種だ。中にはひとつの術式しか書かれておらず、書かれている魔術は詠唱するだけで発動する。自分がその術式を覚えていなくとも書かれていれば使える、というか自分に使える霊力さえあれば巻物が使えるため、使いどころさえ間違わなければ非常に有用な魔道具である。
ただし巻物は一度使うと白紙になって使えなくなる。使えなくなるが新たに術式を書き込めばまた使えるようになるので、そういう意味では利便性が高い優秀な魔道具である。
なお複数の術式が記された“魔道書”という魔道具もある。こちらは本のように複数のページが綴じられていて、記載されている魔術も多岐にわたり、しかも複数回使える代物だ。ただし規定されている使用回数よりも多くの魔術が記されているのが普通で、しかも規定回数を使い切ればこちらは消滅してしまう。
アルベルトは巻物だけでなく魔道書も持ち込んでいた。巻物はともかく魔道書の方は買おうとしても買えない事の方が多いので、もしも盗まれでもしたら真剣に大損である。
「ところで、そっちはどうだったんだい?」
「紛失や盗難どころか入られた形跡さえなかったわよ。当然、中の私服や化粧品なんかも全部あったわ」
なんのかんの言って自分もちゃっかりチェックしていたレギーナである。
私服の多くはコテージに移してはいたものの全部ではなく、特にこの時季に使わない厚手の衣類なんかは全部置いてあったし、アルベルトほどではないが彼女たちも様々な道具を持っていて車内に置きっぱなしにしていた。それらの大半は鍵のかかる寝室と荷物室に収められていて、扉に触られた形跡さえなかった。
「じゃ、あとは保管庫かな」
調理台周りを確認して、調理器具や調味料などもきちんと確認してから、アルベルトは再び車外へと出て行く。
「これ、元の保管庫より少し小さくしました?」
車体左側に増設された保管庫は、右側のアルベルトの寝床の下にあるものより一回り小型のものだった。容量にして5分の1ほど少なめであろうか。とはいえこの量ならスズの一食分としては充分で、左右の保管庫を合わせて三食程度は確保できそうである。
「さよう。重量バランスの問題がありましてな」
商工ギルドの脚竜車製作の職人によれば、元の設計だと右前部の保管庫と左後部の荷物室天井部の水タンクとで重量バランスを取ってあったのだという。それでも水タンクの中身はトイレの流し水や調理台の洗い水で使われるため、基本的に右側ばかりが重い状態になっていたのだそうだ。
だから例えば急な左旋回などすれば、遠心力に煽られて最悪転倒する恐れもあったのだという。
それを解消するのが左側保管庫の目的のひとつでもあったが、右と同じサイズのものを取り付けてしまうと、今度は水タンクの分だけ左側が重くなってしまう。それで左側を小さくすることで重量配分に配慮したのだそうだ。
「ですので、脚竜に餌を与える際は片方の保管庫を先に使い切るのではなく、左右交互に取り出して双方の残量をなるべく合わせるようにして頂けますかな」
「なるほど、分かりました」
「…で?結局それって何か変わるの?」
アルベルトの後をついて出てきたレギーナがなんの気なしに質問する。
「左右のバランスが取りやすくなって走るときの安定性が増した、ってことだよ」
「ふーん、じゃあいいことなのね」
分かったのか分かってないのか、よく分からない感じのレギーナ。でも彼女はこう見えて、何となくの大雑把な理解でも割と正確に把握していたりする。
「相変わらず、姫ちゃんは大雑把やなあ」
「なによ、そんなにいちいち全部事細かに把握しなきゃいけないわけ?」
「まあそこまでは言わんばってん」
元々頭脳明晰で、ふわりとした雑な説明でもかなり正確に理解できるんだから、もっと怜悧な雰囲気が出せないものか。一見して考えなしのおバカにしか見えないのがこの娘の欠点なんよねえ、と苦笑するばかりのミカエラである。
「で?これいつ完成するの?」
「はい、早ければ本日中に、遅くとも明日の朝のうちには」
左側保管庫の蓋をパカパカ開けたり閉めたりしながらレギーナが質問し、職人たちが畏まって受け答えする。
「そう。じゃあ明日の昼には車両を受け取って出発できるわね」
「それじゃ、この後お昼を食べてからチェックアウトと宿替えだね」
「宿替え?なんで?」
「あらレギーナ忘れたのかしら?〈人魚の涙〉亭にも泊まるって決めたじゃない」
「あ、そっか。そうだったわね」
「ひめ…忘れちゃダメ…」
「ところで支部長さん。契約書の書面は準備できたとかいな?」
「はい、正確な費用も算出致しまして準備を整えております。事務所の方へご案内致しましょう」
そうしてミカエラは商工ギルド支部長について事務所へと向かい、アルベルトはあらかじめ商工ギルドに購入依頼していた冷蔵箱を担いで使いたい食材を回収するため車内へと戻っていく。ヴィオレは再び車内各所の鍵を確認して回る。
そしてレギーナとクレアはみんなが戻ってくるのを暇そうに待つのであった。
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