63 / 321
間章1【瘴脈討伐】
勇者様御一行のお仕事(1)
しおりを挟む
ここからはレギーナたち“蒼薔薇騎士団”がラグ辺境伯に依頼され瘴脈を討伐した際のエピソード。『小説家になろう』版では5話構成でしたが、アルファポリス用に話を短めに区切ったら何故か全14話に(汗)。
おっかしいなー、なんでだろ?30,000字ちょっとくらいしかないのになあ?(←だからだ!)
ー ー ー ー ー ー ー ー ー
「でも、さすがは勇者ってところかな。飛んでる翼竜を剣のひと振りで倒すなんて、本当に凄いよね」
アルベルトが感心しきりなのも無理はない。空を自在に飛んで剣の届かない位置から一方的に攻撃してくる翼竜は、冒険者にとっては灰熊以上の難敵で、普通なら魔術師のサポートなしではまず倒せないのだ。
それをレギーナはひとりで宙を駆け上がって倒してみせたのだから、当然というものだ。
「別に、なんてことないわ。こないだも“巨竜”を狩ってきたし」
「え……………ええっ!?」
だがまたしても簡単に言ってのけるレギーナに、今度こそアルベルトは空いた口が塞がらなくなる。
「えっじゃあ、レギーナさんは“竜殺し”なのかい!?」
「そうよ?」
「こないだ、っていつのことなのさ!?ラグに来る前ってこと!?」
「ほら、“瘴脈”を討伐してきたって言ったじゃない。その時よ、倒したのは」
「ホントに最近じゃないか!」
「そういや、そん時の詳しか話をおいちゃんにはしとらんやったばいねえ」
そして彼女たちは、“瘴脈”討伐の顛末を話して聞かせるのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ラグ辺境伯、先々代勇者ロイからのほのめかしを受けて蛇王の情報を持つというアルベルトという冒険者を救い、そのまま彼を雇うことにしたレギーナたち蒼薔薇騎士団。彼の人となりや実力のほどを確かめるためその仕事に1日付きまとい、信用できると判断して翌日に辺境伯へと報告し、彼を連れて行くのなら黒一点になるがと指摘されてすったもんだしたさらに翌日。
蒼薔薇騎士団はまたしてもラグ辺境伯に呼ばれて辺境伯公邸を訪れていた。
「すまないね、何度も呼び立てして」
「いえ、予定などございませんので」
新調する脚竜車の完成までおよそ1ヶ月ほどかかるということで、その間彼女たちはラグに逗留することになっている。完成を待つまでの間何もしないというわけにもいかないので、どこか冒険者ギルドに顔を出して適当に依頼でもこなそうかと思っていたところだ。
「暇つぶし、というわけではないのだが、ひとつ仕事を依頼しようと思っていてね」
だが冒険者ギルドを経由するまでもなく、辺境伯が仕事を持ちかけてきた。
「ラグの北に中規模の瘴脈があるのだが、君たちは知っているだろうか」
「“レファ渓谷”ですね。この辺りではもっとも活発な瘴脈と聞いていますが」
レファ渓谷の瘴脈は竜骨回廊沿いではもっとも規模の大きな瘴脈だ。大地の下を流れる瘴気が地表に吹き出す瘴脈、それがちょうど渓谷の最深部にあるせいで地形的にも瘴気が溜まりやすく、魔物の棲息密度もかなり高く危険な瘴脈だと言われている。
ただ、至近にある都市がラグで、歴代勇者を多数輩出している〈竜の泉〉亭と〈黄金の杯〉亭という西方世界でも名の知れたギルドが本拠を構えており、その所属冒険者たちの定期巡回を受けているため、渓谷の外まで危険が広がることは滅多にない。
「そろそろ定期巡回の時期でね。今回は私が行こうと思っていたのだが、君たちが空いているのならば頼もうかと思ってね」
「なるほど。そういう事でしたらお請けいたします」
レギーナは即答だった。勇者としての一般的な業務なのだから当然だ。
ただ正式な依頼となると契約が発生する。報酬に関してはもちろん、どこまでやるかなど細かく決めなくてはならない。
「それで、今回は具体的にどう処理すればよろしいでしょうか」
「そうだね、単純に棲息密度を下げてもらえればそれで構わないよ。魔獣もだが、特に魔物を間引いてくれればいい。
谷の外に逃げ出した個体については追わなくてもよろしい。あまり逃がすと良くはないが、多少ならば地域のギルドの仕事になるからね」
「畏まりました。現在の『強度』はいかほどで?」
「うむ、今は『熟練者』といったところか。まだ『凄腕』までは行っておらんだろう」
つまり、熟練者に匹敵するような個体はいるが凄腕に伍するほどの個体はいなさそうだ、というのが辺境伯の見立てである。
「なるほど、その程度でしたら問題ありません。期間については?」
「それは君たちに任せるよ。というか数次第だろうからね」
つまり討伐数も討伐期間も明確に定めないというわけだ。敵の強度を考えても、レギーナにとっては片手間で終えられる緩い仕事と言えた。
「君たちが戻ったあと、情報部から人員を派遣して棲息数を確認する。それをもって報酬額を算定し振り込むとしよう。それでいいかね?」
「はい、結構です。では明日にでも出立いたします」
「よろしく頼む。現地の拠点としてはレファ山に見張り小屋を設けてあるから、そこを使うといい」
「ありがとうございます。そうさせて頂きます」
こうして、レギーナたち蒼薔薇騎士団は瘴脈の討伐へと向かうことになった。
おっかしいなー、なんでだろ?30,000字ちょっとくらいしかないのになあ?(←だからだ!)
ー ー ー ー ー ー ー ー ー
「でも、さすがは勇者ってところかな。飛んでる翼竜を剣のひと振りで倒すなんて、本当に凄いよね」
アルベルトが感心しきりなのも無理はない。空を自在に飛んで剣の届かない位置から一方的に攻撃してくる翼竜は、冒険者にとっては灰熊以上の難敵で、普通なら魔術師のサポートなしではまず倒せないのだ。
それをレギーナはひとりで宙を駆け上がって倒してみせたのだから、当然というものだ。
「別に、なんてことないわ。こないだも“巨竜”を狩ってきたし」
「え……………ええっ!?」
だがまたしても簡単に言ってのけるレギーナに、今度こそアルベルトは空いた口が塞がらなくなる。
「えっじゃあ、レギーナさんは“竜殺し”なのかい!?」
「そうよ?」
「こないだ、っていつのことなのさ!?ラグに来る前ってこと!?」
「ほら、“瘴脈”を討伐してきたって言ったじゃない。その時よ、倒したのは」
「ホントに最近じゃないか!」
「そういや、そん時の詳しか話をおいちゃんにはしとらんやったばいねえ」
そして彼女たちは、“瘴脈”討伐の顛末を話して聞かせるのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ラグ辺境伯、先々代勇者ロイからのほのめかしを受けて蛇王の情報を持つというアルベルトという冒険者を救い、そのまま彼を雇うことにしたレギーナたち蒼薔薇騎士団。彼の人となりや実力のほどを確かめるためその仕事に1日付きまとい、信用できると判断して翌日に辺境伯へと報告し、彼を連れて行くのなら黒一点になるがと指摘されてすったもんだしたさらに翌日。
蒼薔薇騎士団はまたしてもラグ辺境伯に呼ばれて辺境伯公邸を訪れていた。
「すまないね、何度も呼び立てして」
「いえ、予定などございませんので」
新調する脚竜車の完成までおよそ1ヶ月ほどかかるということで、その間彼女たちはラグに逗留することになっている。完成を待つまでの間何もしないというわけにもいかないので、どこか冒険者ギルドに顔を出して適当に依頼でもこなそうかと思っていたところだ。
「暇つぶし、というわけではないのだが、ひとつ仕事を依頼しようと思っていてね」
だが冒険者ギルドを経由するまでもなく、辺境伯が仕事を持ちかけてきた。
「ラグの北に中規模の瘴脈があるのだが、君たちは知っているだろうか」
「“レファ渓谷”ですね。この辺りではもっとも活発な瘴脈と聞いていますが」
レファ渓谷の瘴脈は竜骨回廊沿いではもっとも規模の大きな瘴脈だ。大地の下を流れる瘴気が地表に吹き出す瘴脈、それがちょうど渓谷の最深部にあるせいで地形的にも瘴気が溜まりやすく、魔物の棲息密度もかなり高く危険な瘴脈だと言われている。
ただ、至近にある都市がラグで、歴代勇者を多数輩出している〈竜の泉〉亭と〈黄金の杯〉亭という西方世界でも名の知れたギルドが本拠を構えており、その所属冒険者たちの定期巡回を受けているため、渓谷の外まで危険が広がることは滅多にない。
「そろそろ定期巡回の時期でね。今回は私が行こうと思っていたのだが、君たちが空いているのならば頼もうかと思ってね」
「なるほど。そういう事でしたらお請けいたします」
レギーナは即答だった。勇者としての一般的な業務なのだから当然だ。
ただ正式な依頼となると契約が発生する。報酬に関してはもちろん、どこまでやるかなど細かく決めなくてはならない。
「それで、今回は具体的にどう処理すればよろしいでしょうか」
「そうだね、単純に棲息密度を下げてもらえればそれで構わないよ。魔獣もだが、特に魔物を間引いてくれればいい。
谷の外に逃げ出した個体については追わなくてもよろしい。あまり逃がすと良くはないが、多少ならば地域のギルドの仕事になるからね」
「畏まりました。現在の『強度』はいかほどで?」
「うむ、今は『熟練者』といったところか。まだ『凄腕』までは行っておらんだろう」
つまり、熟練者に匹敵するような個体はいるが凄腕に伍するほどの個体はいなさそうだ、というのが辺境伯の見立てである。
「なるほど、その程度でしたら問題ありません。期間については?」
「それは君たちに任せるよ。というか数次第だろうからね」
つまり討伐数も討伐期間も明確に定めないというわけだ。敵の強度を考えても、レギーナにとっては片手間で終えられる緩い仕事と言えた。
「君たちが戻ったあと、情報部から人員を派遣して棲息数を確認する。それをもって報酬額を算定し振り込むとしよう。それでいいかね?」
「はい、結構です。では明日にでも出立いたします」
「よろしく頼む。現地の拠点としてはレファ山に見張り小屋を設けてあるから、そこを使うといい」
「ありがとうございます。そうさせて頂きます」
こうして、レギーナたち蒼薔薇騎士団は瘴脈の討伐へと向かうことになった。
10
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!
蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。
家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。
何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。
やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。
そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。
やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる!
俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!
異世界で作ろう「最強国家!」
ハク
ファンタジー
黒上 優斗は暴走車に跳ね飛ばされ死亡した。だが目を覚ますと知らないとこにいた。豪華な場所で右側には金髪美女がいる。
魔法が使えない優斗ことユート・オリビアは現代兵器やその他特殊能力で国を建国し様々な困難に立ち向かう!
注意!
第零章ではまだ国家を建国しません……おそらく!
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」に投稿しております
2021年5月9日 アルファポリスにも投稿開始!
【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇
藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。
トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。
会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
魔の女王
香穂
ファンタジー
リウ王国正史において初の女王が即位。
在位三日。
国を腐敗させ、己の私利私欲のために数多の民を虐げたとして、魔の女王チマジムと呼ばれる――。
これは、魔の女王と呼ばれることとなる王女と、ちょっと泣き虫なマナ使いの物語。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる