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24.ロベルタ公爵の出陣と卑劣な罠
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ルーダさんからの報告内容は驚くべきものでした。
私のお父様、スフィア伯爵からペンゾラム侯爵の謀反を密告するものだったのです。
「ペンゾラム侯爵が謀反だと!? 馬鹿な、確かに野心の強い男ではあるが、今はことを起こす戦力もないはず」
「ですが、こちらをご覧ください。スフィア伯爵家の正式な捺印が押された正式な手紙です。家紋の印章が押されているので無視するわけには参りません。スフィア伯爵領は十分な兵力がないため、今後縁戚関係になる我が公爵家に連絡をするのはおかしなことではありませぬ」
「……その通りだ。それに何より、王家に危機が迫っているとするなら、最速で馳せ参じるのが我が公爵家の務めであろう。あの王太子が簡単にくたばるとは思わんが……。しかし、ルーダよ、何か嫌な予感がする。我が公爵家の密偵からの報告はないのか?」
「それがまだないのです。ですので、本来ならば真偽を確かめるべきところでしょう。しかし、手紙の内容は危急《ききゅう》を要するとのこと。手遅れになれば取り返しがつきません。……手紙も家紋の印章を使っておりますから、まさか嘘の内容を連絡するような馬鹿な真似は考えにくいですし……。もしそんなことをすればお家取り潰しも免れないわけですからな……」
「そうだな」
旦那様とルーダさんが厳しい表情で議論を交わされる。
降って湧いたような謀反の話、しかもそれが自分の実家からなのに、何だか現実感がなかった。
伯爵家は疲弊しきっていて、他領の様子を知る力なんて残っていないような気がする。でも、家族として扱われていなかった私は、そのことをはっきりと断言することも出来ない。
その情けなさに心が痛くなる。
せめて、スフィア家が係るこういう時くらい、旦那様のお役に立たないといけないのに、と自分を責めた。
しかし、
「大丈夫だ、何も心配することはない、シャノン」
旦那様が今一番悩まれているはずなのに、私を慮《おもんぱか》ってくださり、手を握ってくれる。
こんな時だというのに、弱い私は思わず安心感を覚えてしまう。
でも反面申し訳なさも強く感じる。
「ありがとうございます。でも、こんな大事な時に私などに係ってお時間をとらせてしまっては……」
そうお詫びすると、
「いや、逆だ」
「え?」
何をおっしゃっているのか分からず、私は首を傾げると、
「俺がお前に触れたいと思ったのだ。これから戦いになる。命をかけるし、俺の采配が国の存亡を決めるだろう。しかし」
旦那様は微笑まれて、
「お前の手を握ると不思議と恐怖が薄れて、力が湧いてくるような気がしたんだ。必ずシャノン、勝利の女神の君の元に帰ってこよう、とな」
「だ、旦那様……。そんな過分なお言葉を……」
熱のこもった言葉に、こんな時なのに、はしたなく頬を熱くしてしまう。
だけど、
「だから、ずっと言っているだろう」
旦那様ははっきりとおっしゃった。
「ありのままの君でいてくれるだけでいいと。それだけで俺には十分だと」
そう優し気に口元をほころばされたのだった。
「私が、旦那様のお役に……」
「ああ、お前の元に必ず帰ってこよう」
その言って、旦那様は改めて頷いてくださったのだった。
旦那様は武人としてのたくましい表情に変わられる。
「騎馬隊を大至急出発させよ。俺はグリフォンでいち早くかけつけ国王、王妃、王太子殿下らを守護する」
「気を付けてください、旦那様」
「ああ、すぐに戻る。……そしてシャノン、お前も気を付けるように。お前に何かがあっては取り返しがつかん。王家と君を守ることを天秤にかけるほどに」
「ご、ご冗談でもそのようなことは言ってはいけませんわ、旦那様。王家をお守りください。そして御武運をお祈りしています」
「お前を困らせてしまったな。よし、行くぞ、グリフォン! 天を駆けよ! ルーダ! 後の指揮は従前の第二次計画通りにせよと将軍たちには伝えよ! シャノンのことも頼んだぞ!」
「心得ました!」
事前に幾つもの戦術パターンを用意してあるのでしょう。
旦那様は明快な指示を残すと、グリフォンにまたがって天空へと舞い上がる。
銀色の髪が太陽に映えて戦神の如く力強く輝き、アイスブルーの瞳が神秘的に輝く。
そんな旦那様がグリフォンにまたがる姿は、彼がこの王国一の騎士であることをまさに証明するように思えた。
こうして公爵領はたちまちあわただしく動き始めたのでした。
とっぷりと日も暮れて、夜になった。
そろそろ旦那様は王都へ到着されたでしょうか?
私は旦那様の無事ばかりを祈って、そわそわとして寝付けないでいるのでした。
「お嬢様、きっと公爵様は大丈夫です」
「アン、ありがとう、励ましてくれて。ええ、旦那様のことだもの、絶対大丈夫に決まっているのに、ね。ごめんなさい、あなたの睡眠時間を奪ってしまって」
「何をおっしゃいますか。お嬢様にお仕えできることこそ私の生きがいですよ」
「本当に、ありがとう、アン」
私は心から感謝の言葉を述べる。
すると、アンはよく分からないことを言い始めた。
「本当にお嬢様は誰にでも分け隔てなく接してくれる。そんなお嬢様のお心が、公爵様をお癒しになったんでしょうね」
「癒す? 私が?」
よく意味が分からずに、思わず首を傾げてしまう。
「妹のリンディとは違って、私にそんな力はないけれど……」
でも、アンは首を横に振って、
「リンディ様は確かに癒しの力をお持ちですが……。お嬢様にはもっとすごい力がありますから」
と言う。
私はますます首を傾げるのだけど、なぜかアンの方は自信満々に、まるで私のことを自分のことのように自慢するかのように、
「最近の公爵様はすごくリラックスされているように思います。以前は張り詰めた糸みたいだと思ったものですが……。お嬢様のお心根に触れることで、少しずつお変わりなったのでしょう」
「まさか」
私にそんな力があるはずないわ。
「もう、お嬢様は、ご自分の魅力にもっと自信を持ってください!」
「ふふ、お世辞をどうもありがとう」
「もう、お世辞じゃないのに!」
アンは時々こういうお世辞を言ってくれる。
本当に優しい子なのだ。
それにしても、こんな風なおしゃべりも含めて、実家では到底できなかったことが、公爵家に来てからは出来るようになっている。
こんな風に少しづつ出来ることを増やしていければ嬉しい。そして、必ず公爵家に少しでもお役に立ちたいと思う。
(こんなにもたくさんのものを頂いたのだから)
自然と感謝の気持ちで胸があふれるのだ。
やっと、睡魔が襲ってきたので、アンを解放することが出来た。
彼女が出て行くと、思いのほか部屋はシンとしていて、窓の外には真っ暗な帳《とばり》が下りている。
少し先も見えず、物音一つしない。
「私に魅力なんて……」
そんなものがあるとは思えないのだけど。
でも、この公爵家の人々もみんな優しくて、本当に沢山のことをしてもらった。
だから、旦那様にも、ルーダさんにも、色々と料理を教えてくれるシェフのノレフさんにも。
ついて来てくれたアンにも。
「私が出来ることならなんでもしてあげたい」
そう自然と言葉が出た。その時でした。
「そうか。ならばリンディ様のために役立ってもらうとしよう」
「え? うっ……」
突然、耳元で聞こえた声が、その時の私の最後の記憶でした。
(旦那様!)
思わず助けを求める声は、猿轡をかまされて声になりません。
そして、次の瞬間には後頭部に熱のようなものを感じ、次に起きた時には全く見知らぬ建物の中にいたのです。
私のお父様、スフィア伯爵からペンゾラム侯爵の謀反を密告するものだったのです。
「ペンゾラム侯爵が謀反だと!? 馬鹿な、確かに野心の強い男ではあるが、今はことを起こす戦力もないはず」
「ですが、こちらをご覧ください。スフィア伯爵家の正式な捺印が押された正式な手紙です。家紋の印章が押されているので無視するわけには参りません。スフィア伯爵領は十分な兵力がないため、今後縁戚関係になる我が公爵家に連絡をするのはおかしなことではありませぬ」
「……その通りだ。それに何より、王家に危機が迫っているとするなら、最速で馳せ参じるのが我が公爵家の務めであろう。あの王太子が簡単にくたばるとは思わんが……。しかし、ルーダよ、何か嫌な予感がする。我が公爵家の密偵からの報告はないのか?」
「それがまだないのです。ですので、本来ならば真偽を確かめるべきところでしょう。しかし、手紙の内容は危急《ききゅう》を要するとのこと。手遅れになれば取り返しがつきません。……手紙も家紋の印章を使っておりますから、まさか嘘の内容を連絡するような馬鹿な真似は考えにくいですし……。もしそんなことをすればお家取り潰しも免れないわけですからな……」
「そうだな」
旦那様とルーダさんが厳しい表情で議論を交わされる。
降って湧いたような謀反の話、しかもそれが自分の実家からなのに、何だか現実感がなかった。
伯爵家は疲弊しきっていて、他領の様子を知る力なんて残っていないような気がする。でも、家族として扱われていなかった私は、そのことをはっきりと断言することも出来ない。
その情けなさに心が痛くなる。
せめて、スフィア家が係るこういう時くらい、旦那様のお役に立たないといけないのに、と自分を責めた。
しかし、
「大丈夫だ、何も心配することはない、シャノン」
旦那様が今一番悩まれているはずなのに、私を慮《おもんぱか》ってくださり、手を握ってくれる。
こんな時だというのに、弱い私は思わず安心感を覚えてしまう。
でも反面申し訳なさも強く感じる。
「ありがとうございます。でも、こんな大事な時に私などに係ってお時間をとらせてしまっては……」
そうお詫びすると、
「いや、逆だ」
「え?」
何をおっしゃっているのか分からず、私は首を傾げると、
「俺がお前に触れたいと思ったのだ。これから戦いになる。命をかけるし、俺の采配が国の存亡を決めるだろう。しかし」
旦那様は微笑まれて、
「お前の手を握ると不思議と恐怖が薄れて、力が湧いてくるような気がしたんだ。必ずシャノン、勝利の女神の君の元に帰ってこよう、とな」
「だ、旦那様……。そんな過分なお言葉を……」
熱のこもった言葉に、こんな時なのに、はしたなく頬を熱くしてしまう。
だけど、
「だから、ずっと言っているだろう」
旦那様ははっきりとおっしゃった。
「ありのままの君でいてくれるだけでいいと。それだけで俺には十分だと」
そう優し気に口元をほころばされたのだった。
「私が、旦那様のお役に……」
「ああ、お前の元に必ず帰ってこよう」
その言って、旦那様は改めて頷いてくださったのだった。
旦那様は武人としてのたくましい表情に変わられる。
「騎馬隊を大至急出発させよ。俺はグリフォンでいち早くかけつけ国王、王妃、王太子殿下らを守護する」
「気を付けてください、旦那様」
「ああ、すぐに戻る。……そしてシャノン、お前も気を付けるように。お前に何かがあっては取り返しがつかん。王家と君を守ることを天秤にかけるほどに」
「ご、ご冗談でもそのようなことは言ってはいけませんわ、旦那様。王家をお守りください。そして御武運をお祈りしています」
「お前を困らせてしまったな。よし、行くぞ、グリフォン! 天を駆けよ! ルーダ! 後の指揮は従前の第二次計画通りにせよと将軍たちには伝えよ! シャノンのことも頼んだぞ!」
「心得ました!」
事前に幾つもの戦術パターンを用意してあるのでしょう。
旦那様は明快な指示を残すと、グリフォンにまたがって天空へと舞い上がる。
銀色の髪が太陽に映えて戦神の如く力強く輝き、アイスブルーの瞳が神秘的に輝く。
そんな旦那様がグリフォンにまたがる姿は、彼がこの王国一の騎士であることをまさに証明するように思えた。
こうして公爵領はたちまちあわただしく動き始めたのでした。
とっぷりと日も暮れて、夜になった。
そろそろ旦那様は王都へ到着されたでしょうか?
私は旦那様の無事ばかりを祈って、そわそわとして寝付けないでいるのでした。
「お嬢様、きっと公爵様は大丈夫です」
「アン、ありがとう、励ましてくれて。ええ、旦那様のことだもの、絶対大丈夫に決まっているのに、ね。ごめんなさい、あなたの睡眠時間を奪ってしまって」
「何をおっしゃいますか。お嬢様にお仕えできることこそ私の生きがいですよ」
「本当に、ありがとう、アン」
私は心から感謝の言葉を述べる。
すると、アンはよく分からないことを言い始めた。
「本当にお嬢様は誰にでも分け隔てなく接してくれる。そんなお嬢様のお心が、公爵様をお癒しになったんでしょうね」
「癒す? 私が?」
よく意味が分からずに、思わず首を傾げてしまう。
「妹のリンディとは違って、私にそんな力はないけれど……」
でも、アンは首を横に振って、
「リンディ様は確かに癒しの力をお持ちですが……。お嬢様にはもっとすごい力がありますから」
と言う。
私はますます首を傾げるのだけど、なぜかアンの方は自信満々に、まるで私のことを自分のことのように自慢するかのように、
「最近の公爵様はすごくリラックスされているように思います。以前は張り詰めた糸みたいだと思ったものですが……。お嬢様のお心根に触れることで、少しずつお変わりなったのでしょう」
「まさか」
私にそんな力があるはずないわ。
「もう、お嬢様は、ご自分の魅力にもっと自信を持ってください!」
「ふふ、お世辞をどうもありがとう」
「もう、お世辞じゃないのに!」
アンは時々こういうお世辞を言ってくれる。
本当に優しい子なのだ。
それにしても、こんな風なおしゃべりも含めて、実家では到底できなかったことが、公爵家に来てからは出来るようになっている。
こんな風に少しづつ出来ることを増やしていければ嬉しい。そして、必ず公爵家に少しでもお役に立ちたいと思う。
(こんなにもたくさんのものを頂いたのだから)
自然と感謝の気持ちで胸があふれるのだ。
やっと、睡魔が襲ってきたので、アンを解放することが出来た。
彼女が出て行くと、思いのほか部屋はシンとしていて、窓の外には真っ暗な帳《とばり》が下りている。
少し先も見えず、物音一つしない。
「私に魅力なんて……」
そんなものがあるとは思えないのだけど。
でも、この公爵家の人々もみんな優しくて、本当に沢山のことをしてもらった。
だから、旦那様にも、ルーダさんにも、色々と料理を教えてくれるシェフのノレフさんにも。
ついて来てくれたアンにも。
「私が出来ることならなんでもしてあげたい」
そう自然と言葉が出た。その時でした。
「そうか。ならばリンディ様のために役立ってもらうとしよう」
「え? うっ……」
突然、耳元で聞こえた声が、その時の私の最後の記憶でした。
(旦那様!)
思わず助けを求める声は、猿轡をかまされて声になりません。
そして、次の瞬間には後頭部に熱のようなものを感じ、次に起きた時には全く見知らぬ建物の中にいたのです。
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