恋なんて一瞬だ

北見楪

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ドキドキの練習

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私は忙しいから恋愛なんてもってのほか、と自分に言い聞かせ、先輩と練習する教室へ向かいます。
この無言の時間はなぜか心地よく、このままでいいのに、と思ってしまいました。
この無言の時間に先に口を開いたのは先輩でした。
「そういえば、名前聞いてなかったね」
「そうですね。白神由香里と言います」
「白神さんね。」
会話はそれっきりありませんでした。
私が話すべきなのかな、と思いましたが、やめました。
なんでかはわかりません。

そうこうしている間に練習する部屋に到着しました。
私は持っていた椅子を置き、楽器を取り出しました。
頭部管をだし、繋げるだけの作業。
いつもならそうでしたが、今日はどうも亮斗先輩を意識してしまいます。
私は楽器を椅子に置き、譜面台を立てます。
その譜面台に楽譜を置き、練習します。

数分後、1曲が大分仕上がってきた時でした。
「ふぅ.....」
なぜか亮斗先輩がじっとこちらを向いています。
私の顔に何かついているのでしょうか。
「亮斗先輩、どうしたんですか?」
「いやその、1年生にしては音、綺麗だなって」
なんと、亮斗先輩から褒め言葉をいただきました。
「あっありがとうございます...!!」

そして練習が終了して、譜面台と楽器を片付けて音楽室へ向います。
ミーティングが終了し、私は帰ろうとしました。
その時、亮斗先輩が後ろから追ってきて
「俺、白神さんのこともっと知りたいんだよね。よかったら連絡先交換しない...??」
と言われました。
まだ警戒心はあったものの、その時すでに亮斗先輩に興味があった私は
「はい!」
と言い、亮斗先輩と連絡先を交換しました。
「やばいやばい、先輩の連絡先もらっちゃったよ」
興奮がおさまらないまま家に向かいました。

家に帰り
「ただいま」
というと、返事が返ってきません。
そういえば、両親はどっちも仕事だと言っていたらような気もします。
私は自室へ行き、スマホを覗くと「野田亮斗」という文字が。

"練習お疲れ様!いきなり連絡先欲しいとか言っちゃってごめんね。でも、これから一緒に練習する事も増えるだろうし、仲良くして欲しいな"

との事でした。
私は返信をしようと文章を打ち込んでは消して、打ち込んでは消してを繰り返してやっとできた文章が

"先輩、お疲れ様です。連絡先ありがとうございます。まだ一年生でわからない事だらけですが、仲良くしてもらえると嬉しいです"

うーん...なんか意味わかんない文章になっちゃった気がしましたが、私は意を決して送信ボタンを押しました。
「ていうかやばいやばい、気になってる先輩と今連絡してるよ...!!!」
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