血を吸う生き物

しらす

文字の大きさ
上 下
2 / 2

02

しおりを挟む
彼は今、上半身裸のまま土下座をしている。顔は見えないが、歪ませてえぐえぐ涙を流していることだろう。嗚咽がうるさい。

結論として、
自身が種族を偽っていたことは認める
吸血していたなんて知らなかった
だそうだ。

理由は、「ちょっと力が強いくらいだから蚊でも吸血鬼も大して変わらないだろうし。吸血鬼のほうが虫が嫌いなまさとが受け入れてくれるかなって思ったんだ」

「ほんとに小さな頃から血を吸ったことはないよ。まさとに会ってから貧血かも、って思うことが増えたのは確かかも…種族の本能ってヤツかもしれない。病気も何も心配ないよ、しっかり検査も受けてるし。家族も人間と番っているけど皆健康です…」だそうだ。
後半はもう既に大泣きだ。

1つ嘘をついていたことは後で殴ろうと思っているが、片方が無自覚であったのなら別れるつもりはない。だって好きなんだ。

しかし、俺が別れを切り出すと思っているのか、謝り倒し別れないで、と縋ってくる姿は嗜虐心を煽られる。

情けない姿だ、と普通の人は思うだろうが、惚れてしまっている以上可愛くて仕方がない。

ずっと見ていたいが、これ以上体を冷やしてしまうのも可哀想だし、貧血気味だと言うこともわかっている。

俺は冗談めかして尋ねた。

「吸血鬼らしく首から吸うか?」

笑っている俺を見て安心したのか、頭にかけていたタオルで涙やらをゴシゴシと拭った。

少し考えたあと、真剣な顔で
「自分の能力がそんなにえっちなんて知らなかった。ぜひまさとの乳首からお願いしたい」と言われた。

「お前…」

また俺が怒りを滲ませたのを気づいたのか、焦ったように話し始める。ついでに余計なことも口走る。

「ごめん!いやだって、まさとの乳首、俺とセックスするたびに大きくなってくし、いつのまにかイケるようになってたから俺が育ててるんだって嬉しかったんだけど、まさかの共同作業だったなんて…!1人でするのは淡白なまさとが、1人で乳首オナニーしてなんて可愛すぎる…なんか自分で言ってて興奮してきた…なおさら今日は乳首からでお願いします」

ついにキレた俺は1日お預けをくらわせた。
財布を持ち今日の夕飯の材料を買いに行くことにする。レバニラ炒めを作ろう。

ヤツは部屋の隅で拗ねているいるが、そのうち追いかけてくるだろう。よし荷物持ちがいる。

外に出ると、部屋の中からバタバタと音がした。多分、服を着て出かける準備をしているのだろう。

そんな様子を想像して笑ってしまう。
堪らなく愛しいっていうのはこういうことを言うのだ。

そういえば、モスの名前についても尋ねたがそれは本当だと言われた。
行為中に彼の別の名前を読んだら浮気を疑われたこともあるので、自身の名前すら把握してない可能性が高い。

蚊に刺される、吸われる?
違う、蚊に食われる、が正しい。

だってアイツはいつでも俺の身体を貪り食っているのだから。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王

ミクリ21
BL
姫が拐われた! ……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。 しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。 誰が拐われたのかを調べる皆。 一方魔王は? 「姫じゃなくて勇者なんだが」 「え?」 姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

自称チンタクロースという変態

ミクリ21
BL
チンタク……? サンタクじゃなくて……チンタク……? 変態に注意!

フルチン魔王と雄っぱい勇者

ミクリ21
BL
フルチンの魔王と、雄っぱいが素晴らしい勇者の話。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...