アトランティス

たみえ

文字の大きさ
上 下
10 / 31
序章 理想と創造

大陸創造5

しおりを挟む

 とりあえず『アルトラウム』の天人族にはマヌケになってもらうことにした。

 あ、いや、思考能力を奪うとかそういう物騒な話ではない。ただ単純に鳥頭になってもらおうということなのだ。……あれ? いや、アホウドリに……。

 ……つ、つまりだ。まあ、科学力というファンタジー害は進化の過程で失われた古代文明の超技術だったという設定にしてしまえばいいのだ。何故なら生前の設定ではしっかりと科学力を継承していた設定だったからだ。
 生前はそれでもよかったが、さすがに毛色が違い過ぎてそのまま実現しても管理がアトラにとって非常に面倒なことになる。残念だがアトランティスに科学力は不要なのだ。存在しなかったのに存在した謎文明として永劫諦めてもらおう。

 ただし科学力の名残りはあったほうが良いので、遺伝子組み換えによる進化で得た種族特性の羽根、神聖力、そして頭が良いという部分は残しておこう。……我ら天神族! の問題は大したこと無さそうなので放置である。
 どうせアトラの設定上は何も出来ない。嘘に踊らされる本物のアホウドリである。高みの見物は趣味ではないが、もしもアホウドリが出たら一目その阿呆の顔をみてやろうという野次馬根性はあったが。

 この種族は出来るだけ険しい環境に置いたほうが良い。下手に人族などと関わらせると「我ら天神族!」のノリでアトラ信仰に亀裂が入りかねない。
 さすがにその段階になれば種族ごと抹消であるが、アトラは出来るだけ理想郷の種を淘汰したくはなかった。「アトランティス」の中で唯一出来れば『アルトラウム』だけで完結してほしい唯一の種族である。

 ならば創造しなければいいのでは、とは愚問なのだ。この世に完璧などない。真なる神となっていない今でさえこれほど悩むというのに、後悔しないことがあろうか。いや、もしも天人族を創造せずに完璧なる理想郷が誕生したところできっとアトラはこう考えるだろう、「もし、天人族を創造していたら……」と。

 つまりはそういうことなのだ。神も完全ではない。人族なんかより出来ることが多少多いだけの超常的な生物でしかない。だからこそイレギュラーなりえる存在は必要なのだ。何事も、変化なくして待つだけというのは停止という死でしかない。
 世界には理という秩序があり、イレギュラーという異常が必要不可欠。故に、創造しないのは有り得ないのである。……勿論、生前考えた設定の種族をボッシュートするのは気が引けるというのもあったが。

 そんなわけで天人族については大詰めである。後は厳しい環境が必要だ。なにせ妙な科学力によって得た神聖力でこいつらはやたらとタフな設定なのだ。魔族大陸の『サルゴン』に設置予定である大気圏突破山脈すらもものともしない設定にしたタフネスである。
 なので簡単な条件付けをした。一定期間、『アルトラウム』から離れたままでいると衰弱死する、という設定として。

 元々外来種である天人族は世界に順応するために周辺の環境を整え、自らの種をも改変したのだ。それが適用されるのは勿論改変された『アルトラウム』内のみ。外に出れば貧弱この上ない。
 ククク、失われた超文明の科学力も無しに生存圏を広げられることも無し。必然的に『アルトラウム』が天人族の聖地となるのだ! これで諸問題は解決できるはずである。

 ――こうして未だ大陸形成とそこに住まう予定の種族についての計画設定の実行前段階にも関わらず、実にあくどい高笑いをする新米の神がどこぞにいたとかなんとか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

処理中です...