アトランティス

序章 理想と創造

アトランティス

　さて、諸々の周辺設備――銀河系等の仕組み――のお飾りも一段落ついたことで、アトラはついに己の理想郷の最も大事な土台、つまり星の構築を行うことにした。前世の理想郷そっくりそのまま創ることも出来るが、どうせなら技術的な問題で断念せざるを得なかった色々を注ぎ込みたい。
　神となって任地に追いやられてからずっと考えていたことである。元々、アトラが生前創った理想郷には六大陸と隠し島が一つというエリアに分かれていた。それぞれに種族が存在する設定なのだが、残念ながら当時の技術の許容量の問題で最先端でも全ての大陸の完全接合には負荷がかかり過ぎだったのだ。

　故に、苦肉の策でシリーズものとして大陸ごとに分けてしまったが……それが今はどうであるか。全ての大陸どころか新たな大陸を創ったところで許容量などというちゃちな問題などないのだ！　いや、正確には星の大きさという許容量や周囲の銀河系との兼ね合いもあるので、完全なるものではないのだが、そんなものは生前のちゃちな許容量の前では些事に等しい。
　何が言いたいかと言えば単純である。生前風に言うなれば完全なるオープンワールドの作成なのだ！　星を創造するとは元々そういうことなのだが、興奮したアトラにそんなことはどうでもいい。大事なのは生前出来なかったことが神に至って実現で出来る。ただ、それだけである。

　そして、アトラは元々生前創った大陸と島に加えて新たな大陸を創るという野望が芽生えていた。そう、理想郷のさらなる発展である！　しかも、ただの発展ではない。全ての大陸の中心となった大陸を創造することで世界を管理し、より理想郷に近しいものを創造し、観察するのだ！
　そう、アトラにとっては造るのが目的ではなく過程でしかないのだ。その真なる目的とは、突き詰めればそれは理想郷に息づく全ての生命の観察ともいえた。つまり、理想郷を旅して過ごすのがアトラの生前からの夢であったのだ。生前では時に、これはプログラムによって造られただけで、真の理想郷ではないと何度も製作を断念しようとしたこともあった。

　だが、それでも完成までにこじつけたのは、アトラが何よりもそんな世界があって欲しいと心の底から願っていたからこそだったのだろう。事実、アトラはやはり知る由も無いが、NPCや野生に至るまで全てがまるで本物のような世界は生前の地球では絶賛を極めていたところである。

　そこで、アトラは生前の理想郷の地図に手を加えることにした。大陸の配置を外周に置き、新たな大陸、いや、真なる理想郷を世界の中心に置こうと決めたのである。ここからなら世界各地へ平等に様子見出来るし、何よりアトラはどうせなら自身の国でも大陸ごと作ってしまおうとしたのだ。
　こうしてアトラにより『アトランティス』はその形を創造していく。その中心には後に『アトランタ』大国と呼ばれる近未来すぎる大陸を添えながら。

　――こうしてアトラは自身の化身を創造した。