らぶさばいばー

たみえ

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美しき白鈴の毒(後)

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「デルカンダシア領境に存在するの森はご存知ですか」

 で、言わないんかーいっ! と、思わずズルっと肘を滑らせてツッコみそうになったのを根性でなんとか抑える。
 耐えろ、私……今までだって領民まじょたちのアレな言動にも耐えてきたじゃないか……大丈夫。ちょっと最近、領地から離れてたせいで耐性が低くなってただけだから。
 思い出せ私……! あなたってばやれば出来る子、空気読める子……ッ!

「あの地は少々曰く付きでして……何故なら、あの東の森一帯魔女たちのという目的の為に建国された跡地なのです」
「はあ……」

 せ、……せかいへいわ。はあ……。

「しかし今やあの地も、あの自惚れた自称女神を裁く時を待つのみ」
「……――」

 ――え、は、せせせ、世界平和ぁ? に、似合わねぇ……!

 一瞬、遅れた理解の後に全ての理解を拒絶したかのように虚無に陥る。
 ……だ、だだ大丈夫、話はちゃんと聞いてるよ! でもその前に待って! ちょっと待ってお願いだから! ちょ待てよ?! タイム! へい、タイムプリーズ! へい! へいへいへーい!

「あの女が余計なことを仕出かしたせいで、崩壊する神の淀みを鎮めるため、後始末に多くの魔女がその身を捧げ、大いなる犠牲となりました」

 と、思考を必死に目の前の美少女の話に集中させようと頑張るが――残念ながら。何やら核心に迫るっぽい重要そうなお話をされているにも拘わらず、私のある種虚無フィーバーした脳内でタイムが適応されるようなことはなく――ご親切にも頭の中では勝手に想像が羽ばたいてせっせと働き、知り合いの魔女たちがとってもイイ笑みでどれだけ搾り取る気かというほどの大きな箱を両手で掲げ持ち「あなたの継続的なご支援が、世界平和への第一歩に繋がります。 あなたのご寄付が、世界に希望ある未来を運びます」などと……変に凝った垂れ幕まで使って通り掛かりの清いモブ一般人たちを笑顔で誑し込んでカツアゲよろしく魔女たちの裏まで連行し、それをまるで何事も無かったかのように再び綺麗に並んで裏なんてありませんよ、とばかりに再び同じ文言を一斉唱和し始めた実に胡散臭い光景が脳裏を過ぎった。

「――あの地は今も、浄化の途上なのです」
「……?」

 これ、なんだか、ただの想像にしてはやけに具体的過ぎない……?! そしてなかなかに一連の手際とか流れが全く違和感無くて超コワい……! まるで実際に犯行現場を見ているかのような緊迫――被害モブにとっては――した光景だ。

「彼女を討たない限り、新たな魔獣の誕生に終わりはありません。それは世界を蝕み滅びへ導く愚行。ですが、神と近い存在である魔女たちには侵してはならない絶対不可侵の領分ルールが存在しています。これに例外はありません」
「…………」
「ですので今回の性急な戦争に繋がる、というお話になるのですよ。永い時を経て、狡猾で臆病なほど慎重だった彼女に悟らせないよう、丁寧に丁寧を重ねて巧妙な罠を仕込み、その領分ルール内に引っ張り込めましたのでと」

 何やら話が佳境に入った気がする。でも待って。本当に待って。こっちも佳境っぽいんだが。……いやちょっとそこのあなたちょっと待って。お願いですからマジで、いやほんと待てよコラ!? 何してんのあなたたち?! 身包み引ん剝くな! そのまま気に入ったからと飼おうとすな! 今すぐぷるぷる震えるその可哀想なモブ子を解放しなさい! めッ!
 ……なんかこれ、いや本当にびっくりするほど鮮明な犯行現場だよ!? なんで!? 昨日今日と田舎からやってきたばかりっぽい純朴そうな被害モブの顔や、その頬にキラリと流れる雫まで何故か鮮明にハッキリ想像できて……あれ。これもしかして実際に? 予知で。私だって腐っても魔女だものね。え。

「――神の愛すこの世界の秩序を乱す不埒者を討つのです。
「…………」

 ……やめよう、これ以上は。気のせい気のせい。私は何も視てないし知らない。今まで魔法くらいしか――しかも完璧ではない――魔女の能力とか全然使えなかったのに、急にこんな変な予知がふわっと降りてくるとかアリエナイでしょ。あっはっは。
 ――クッ! 今なら……今ならまだッ! この想像――ここ大事! ただの妄想、想像だから! それ以外は絶対認めないから! ――を口にしなければ不吉な予知も予言となってまで実現しようとまではすまい……! 私は面白半分で予言する魔女たちとは違うんだ! 全ての不憫なモブたちの味方だ! だからこれは未遂なんだからね……ッ?! ユルシテ……。

「それにしても、フ……フフ」
「……いかがいたしまして?」

 荒ぶる想像をなんとかどこかへとやっとこさ追いやり、ダラダラと変な冷や汗をかいていると何故か可憐に笑われた。え。何故。
 いや、聞いてたよ。うん。なんか頭の中は物凄いことになってたけど。一応、話の内容は聞いてたよ。帝国に住んでる自称女神さんがなんか世界滅亡しそうなことしてて、でも今までは手出し出来なかったのをなんかの罠に嵌められたから逃げられる前にちゃちゃっと仕留めたいって話でしょ。うんうん。ちゃんと聞いてた。私、偉い! 頭の中がカオスを極める中で表面上は顔に出さず、よく真剣に頑張って聞けた! 偉いぞ!
 ……えーっと、それならなんで笑われていらっしゃる……?

「少々残念ですね」
「……何が、でしょうか」
「募金でカツアゲする魔女とやらを是非とも見てみたかったので」
「ぶ」

 ひぃ……! やっぱ心というか思考が読まれてたよ!
 さっきはついさらっと流したけどしっかり気のせいじゃなかったよコレ……!
 しかもしっかり口に出しちゃったからあのカオスが現実に……!
 母とアザレアが動けない、ついでに兄もいない今、一体誰があのはっちゃけ魔女っ娘たちの手綱を握って監督すると思ってんの……っ?!

「安心して下さい。魔女の予知予言は降りた本人にしかもたらせません」
「ア、ハイ……ドウモ……以後お口チャックします……」

 ……あっ!? 思わず素で返事を……!

「どちらでもお好きなほうのキャラで構いませんよ。面白いので」
「は、はぁ……はい!?」

 キャラ!? 今、キャラって言ったこの人!?

「人ではありません。御使い様です」
「み、みつかいさま」

 えーっと、それは神の御告げを代わりに語る天使的なアレですか?

「そうですね。的なアレですよ」
「はぁ……」

 さっきまでの出し渋りが嘘のように、さらっとあっさり正体を明かしてくれちゃいましたけれども、一体どこからツッコむべきなのか……。
 いわんや、そもそもツッコんで良い存在なのか。それが難題だ。

「お好きにどうぞ」

 ……そう言われると余計にツッコみにくぅ。

「それは残念です」

 全然残念じゃなさそうな微笑で言われても……というか、もうデフォで心というか思考を読まれてるのは敢えてスルーしちゃいますけども。
 今までのアレな思考全部筒抜けだったとか、ソレ一体どんな羞恥プレイ? って感じで全力でスルーさせてもらいますとも……! 察して!

「ふふ、いいでしょう。話を進めます」
「よ、よろしくお願いいたします……」

 あちらこちらへと所在無さげに目を回す私を、希望通りスルーして天使……御使い様が素敵な微笑みを浮かべて頷いた。
 ……なんか弄ばれてる感……ってコレも全部筒抜けですね、分かります! ハイ。

「此度は短期総力戦が望ましい。ですが、ギリギリまで本当の狙いを悟られるわけにはいかないのです。各地に散る魔女たちが動けば、すぐさま悟られるでしょう」

 ふーむ、なるほど。魔女が最大の天敵ってさっき言ってたし、そりゃ一番の敵の動向は常に把握しようとするか。臆病なほど慎重らしいし。
 なんで魔女が天敵なのかとか、その天敵になった聖約とやらの内容や経緯は全く知らないけど。ちらっ。

「――そこで、シネラリア王国の王侯貴族、特に若年層を中心に戦線へと配置し攪乱に使います」
「なっ」
「この国の歴史は元より、魔女の子々孫々による魔女が為に創られた系譜。平時には魔女たちの隠れ蓑兼囮役として、非常時には絶対的な魔女のとして存在を許されています」
「……な」

 なんじゃそりゃー!?

「今までは守勢のみでしたが……これより先は攻勢のみです。魔女といえないまで薄れている血でも彼女ら……そして下僕らは魔女の指揮下でこそ力を増す存在。で用意していたとはいえ伏兵は伏兵、ここで使わない手はないでしょう」
「え、あ、え?」

 ちょちょちょ、ちょーっと待って! 色々待って!
 今ちゃんと呑み込めるよう、必死に情報を処理してるところだから!

「待ちません。面白いので」
「お、おも!?」

 おい待てコラ! 面白いってだけで人の頭を混乱させるな!

「そうですか。では続けます」
「では続けます!?」

 流された! 普通に流された! ひどいっ! 天使なのに無慈悲!
 ……あれ。天使はそもそも無慈悲に一方的に勧告したんだっけ……?

「老年壮年層には各地に散らばった魔女らと共にこの国の守護に付いて頂きます。その際、下僕の指揮についてはレオンをから、彼に任せておけば最後の砦の首尾は問題ないでしょう」

 お、おぅ……父が留守番だと命令していたのはそういう……。

「――ですが。残念ながらのダリアが使えない今、最前線に向かう残りの魔女らの指揮官は不在となります。彼女たちの性質とはいえ、魔女らの統率には実際に骨が折れますから……さて、困りましたね」
「し、しきかん……」

 なんか、かつて感じたことがないほどに魔女の勘というか、第六感的なものからとんでもなく嫌な予感が痛いくらいビシバシ飛んでくるんだけど……!
 いや言いたいことは分かるけど分かりたくないというか……分かりたくなかったけど分かってしまって、なんでかこんな時だけピコピコ働く魔女の本能が実に恨めしいというか……!

 ――などと。全然困ってなさそうな笑みでニコニコと見つめられるのを顔にヒシヒシとぶっ刺さるのを感じつつ、思考を読まれてるんだから無駄だよねと理解しつつも絶対に視線は合わせないんだ! と無駄な抵抗というか抗議を試みる。
 先ほど流していた冷や汗とは違う理由でダラダラと全身の毛穴という毛穴から冷や汗が出て来ている気がした。

 落ち着け私! 落ち着くんだ……ひょっとしたら、とはいえ現在いまだけ母の代わりを務めている私に、有能な魔女の誰かを貸してほしいとかいうお願いかもしれないじゃあないか!
 てかそうであれお願いします素人に戦争とか戦闘指揮とか絶対無理ですごめんなさい許して……ッ!

「あ、アザレアならば問題なく指揮を……」
「いま、手が離せるようなでしたら是非に」
「…………」

 お、追い込まれた袋のネズミ気分……っ!

「問題ありませんよ。あなたはのですから」
「……?」

 存在するだけで良い……? あれ、どこかで――。

「――勿論、どうしてもお嫌というならば仕方がありません。若年層となれば殆どがご学友のようですが、彼らも王国の貴族ですから枯れ散るよりは朽ち果てよと、活躍してくれることでしょう。たとえ力の底上げも無く、見捨てられた下僕であったとて――迷わず命を賭しましょう」
「……今、なんと?」

 今しがたとても信じられない言葉を聞いたような気がして、目を忙しなくぱちぱち瞬かせながら虚を突かれた顔で彼女へ尋ね返した。
 ――てっきり、戦闘は魔女のみで行うのかと勘違いしていた。だって攪乱って……敵を油断させる為の、危険が少ないだろうただの張りぼてなどではなく、まさか文字通り戦地攪乱なんて――魔法による防御もままならないような学生たちにッ!? 正気ッ!?

「――はい。皆さんには人質を兼ねてと同行させます、と申し上げましたが」
「…………」

 。誰への、というか私への脅しだろう。

「もちろん、最前線ですから。……場合によっては、少々不幸な事故や名誉の負傷も起こりえますが……義務を背負う者としての当たり前の責任ですから全く問題ありませんよ」
「それ、は」
「ええ、使い捨ての囮ですね。――ただし、指揮を執る魔女がいれば劇的に生存率は上がります。他の魔女たちは一度攻勢に入ればでしょうから、きっとなど目につかず、気にかけてもいられないでしょうね」
「――――」

 最初に抱いた印象を吹っ飛ばすような有無を言わさぬ毒を含んだ言葉に、問題大有りだ! と怒鳴り返したい衝動を抑えて無理やりに口を噤む。
 相手はかなりのお偉いさんだ。御使い様だ。しかも現状で最も合理的な――人質云々はともかく、敵を油断させたままにする為に更に少なくなるだろう最前線に派遣される魔女たちの中で、戦闘能力が最も低くて本能に身を任せたままにひゃっはー! とはしないだろう私が指揮を引き受けるという――提案でもあるから余計に腹が立つ。が、反論も反対する理由もないので受け入れるしかないのだろう……。
 ……一体、どうしてこんなことに!!

「ご理解頂けて何よりです。では引き続き、をお願いしますね」
「ハイ……善処シマス……」

 お土産に手鏡をもらった。何故に?
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