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|急《まくあけ》
訪い
しおりを挟む静寂に聳える神の木、神秘に寄り添う花の庭。
――調和を乱す闖入者。
『…………椿ちゃん』
「――お久しぶりです。おば様。……あは」
堪え切れない、と言わんばかりの嘲笑と共に椿の背後からぞろぞろと踏み入る怪しげな覆面の有象無象ども。
『……だめだよ、椿ちゃん。危ないよ』
「おば様ったら本当に、涙ぐましい程にお優しいわ! ――だから猶更、反吐が出るのよ……あんたのその、意味の無い自己犠牲精神!」
『…………』
「分かるでしょう? おば様。他のお利巧さんたちとは違って、私は嫌なのよ」
『…………』
「――だからおば様、もちろん邪魔だてしないでくださるわよね?」
『…………』
椿の言に神は淡い微笑を浮かべ、瞑目した。
「ふ、そうでなくては――さあ、今のうちにやりなさい!」
椿の号令に、静かに待機していた覆面の者どもが動き始め――。
「――何をしてるんだ、やめろ! っつばき……?」
「あら……お兄様。ごきげんよう」
青年の介入にまるで少女のように可憐に頬を染め、椿が恥じらうように身を控えめに捩った。
「……何故戻ってきたんだ、椿」
「何故とは酷いわ、お兄様。……私はただ、お兄様をお助けしようと努力しているだけですのに」
「……なら、この招かれざる客たちはお前が引き入れたんだね」
「そうよ。だってしょうがないじゃない。古臭い仕来りなんて、守るだけ無意味だって分かったんだもの――ねえ? おば様」
『…………』
蔑む笑みを一切隠さず、己を掻き抱くようにして椿が盛大に神を嘲笑う。
『……椿ちゃん』
「ああ、ごめんなさい? そういえば、この場では私以外にはおば様が視えないのだった。……そうまでして犠牲になって、なのに結局は何ひとつとして伝わらないだなんて――本当に憐れで滑稽だこと」
『…………』
浮かべていた全ての嘲笑も侮蔑も、その全てを凌駕して、本気の憐憫が籠った言葉が椿から漏れ出でる。
しかしその言葉の真意はまるで、寒心に堪えないとも言っているようであった。
「……椿。やめるんだ。いいから大人しく帰ってくれ」
「この私に、帰れですって? この好機に? ――絶対に嫌よ、お兄様。たとえお兄様のお願いであっても嫌」
「椿!」
業を煮やして青年が椿の前に回り込み、両手で通せんぼする。
すると、それを静観していた神がすーっと青年の背後へと近づいて――。
「ッ嫌よどいて! お兄様は何も分かってないわ! 私は嫌なのよ、ねえおば様ってば!」
『…………』
「何を言ってるんだ……いいから、帰ってくれ」
「嫌、嫌、絶対に嫌!」
『…………』
「おまえ……」
駄々を捏ねる子どものようにイヤイヤと言葉を繰り返す椿に、兄と呼ばれた青年がその醜態に頬を引き攣らせた。
そして錯乱したように「はやくして! とっととやっておしまいなさい!」と配下に命令を下す。
「っやめろ! やめるんだ!」
『…………』
神木に近付き狼藉を働こうとする不埒者どもを、神は迎え入れただただ静観していた――その時が訪れるまでは。
『……あ、』
「ぐあぁ……ッ」
道を遮って邪魔だてする青年の脇腹を、先頭に居た覆面の者が――刺したのだ。
「――おっ、お兄様!? 何してるのよ、この役立たずどもッ! ちょっと! 聞こえてるの!?」
慌てた様子で叫ぶ椿に、覆面を外しながら冷徹な面持ちで凶行の者が平坦に答えた。
「……ええ聞こえていますよ、ツバキ様」
「――女っ? なんでっ」
心底驚いたように、椿が両手を口元に置いてわなないた。
「『……予定通り、茶番には充分なまでに付き合った』――では各自、次の作戦を直ちに開始するように」
「騙したのねっ! ――許さない、許さない、許さないッ!!」
「『……ボス、ツバキ様はどうしますか。一時、丁重に避難させましょうか』」
「『そこらに丁重に放っておけ。……遠くに離すと面倒見切れんのが子守りの鉄則だ』」
女の冷徹な物言いに、しかし何か躊躇する理由でもあるのか誰も動かない。
その理由を知っている女が、あえてかみ砕いて説明を付け加える。
「『――このように幼稚な言動の女が、正常な判断など出来ているはずがないと言っている。大層な妄想幻覚に虚言、情緒不安定に神経過敏ときた。専門家でなくとも、精神障害を患っていることは一目見た素人でも簡単に判断可能なことだ』――分かったのなら、さっさと動け」
「……はっ」
冷徹な眼差しで椿を見下し再度命令した女の言葉に、今度こそ唯諾々と部下らが従い動く。
己を無下に扱う狼藉者どもへと、ひたすら「許さない、許さない、許さない――」と繰り返す椿を気にもせず。
……その冷徹と怨讐に紛れた、儚くか細い最後の声を――拙い願いを、神は聞き届けた。
――しおん……?
『――――』
僕、は……――。
『――――』
わずかに残っていた生気すらもついに感じ取れなくなったことに即座に気付いたのだろう、一瞬呆けたと思えばすぐさま錯乱したように髪を振り乱し、涙を零しながら甲高い狂声を上げて椿が愛しの兄へと一直線に駆け寄った。
「やだ、やだ、お兄様っ、お兄様ああああああああ!!!」
「……進めろ」
その無様を何とも思っていないように一瞬だけ見た後、女が部下たちに作業を続けるよう指示を下した。
「いやあああああ、ぁぁぁあああああああッ――おば様っ、おば様っ、お願いおば様、助けてええええっ! お兄様を助けてよおおおおっ」
あまりの錯乱ぶりに女の部下たちが作業に集中出来ず捗らないのをみてとり、泣き叫ぶ椿の様子も見てから「大袈裟な……」と言わんばかりの表情でうるさく喚く椿を宥めようとボスと呼ばれた女が試みる。
「『……ここには我ら以外居ないというのに。――突然の親族の死を受け入れられない気持ちは理解出来るが、だからといって死者の幻覚に縋りつこうとする思考までもは理解し難いな。そもそも』……その男は少々麻酔にやられて眠っているだけだ。数時間もすれば自然と目覚める」
「――嘘よ! あなたが殺したのよ! お兄様を返して! 返してっ! ねえ聞こえてるでしょ!? おば様っ、おば様っ、お願いおば様あああああっ!」
あまりの話の通じなさと、その正気を失ったような言動に呆れて女は椿を宥めることを諦めた。
「……話にならないな。――では可及的速やかに任務を終えて後、不名誉を解毒するとしよう」
『――ゆずとくんは、先天性心疾患だったの』
「――――」
ピタリ、反射的に動きを止める――幻聴だろうか。
気配も何も感じなかったが、己の背筋がスーッと冷えて凍っていくような薄ら寒い感覚を自覚する。
……勘違いじゃないだろう。
「『ボス?』」
「――――」
己の勘を侮らなかったことで数々の死線を生き残ってきた女にとって、己の直感や勘はどんな正論や確率、理性的で合理的、現実的で科学的な判断よりも最優先すべき確かな能力だった。
なので己に疑問を問いかけつつも、半ば本能に従うままに恐怖を振り払うよう勢いよく声が聞こえた背後へ振り向いた。
「!? だ、れだッ」
『――ヘンリーくんって言うんだ、あなたの息子』
ゾクリ、と今度こそ勘違いでも気のせいでもなく女の背筋が凍った。
『今も豪華客船のプールで楽しそうにおばあちゃんと遊んでるよ。小さな頃から贅沢な経験させるねえ。うんうん。いいよね、豪華客船。私も前に――あ、そうだ。どうやらお母さんがお仕事で一緒に来られなくて、とても残念がってるみたい。無事にお仕事頑張ってって――産まれてから一度も会ったことがないのに真心込めて真摯に祈れる、とてもお母さん想いの優しい子ね』
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「――――」
「『ボス。次の指示を……ボス?』」
つらつらと淀みなく己の情報を諳んじられる恐怖に慄く前に、目前の異常な光景に気づかぬ部下たちがこちらを窺う様子に気付く前に、身体の芯から震えていることを知覚し、生まれて初めて思考が真っ白に染まってしまっていく。
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――これは幻覚なのだろうか。いや。何よりも信頼する己の直観が幻覚などという勘違いではないと、けたたましく警鐘を鳴らしている。ならばあの幽霊は一体なんだというのか。
あまりにも――。
「おば様っ、おば様っ、ねえおば様ってば! そのゆすふぁーなんたらなんて女、今はどうでもいいでしょ!? はやくお兄様を助けてよ、ねえ!」
「――――」
『――任務中に出会った一般人の男性と結婚。男子を一人授かるが、夫との私生活でのすれ違いにより離婚。親権を勝ち取るも、同時期に後ろ暗く危険な仕事が増えたために事情を理解する唯一の肉親である祖母へと育児を託し資金援助を――』
――椿にも聞こえていた。
……これは一体どういうことか、と女――改め、ユーステファニアは混乱する。
正確な発音をしていないしフルネームでもないが、日本人特有の聞き取り変換でしっかり最初のユーステファニアという名前を聞き取れていることは否が応でも察した。
ユーステファニアは幽霊の発する言葉が母国語含め、何ヵ国語もの言語が入り混じって聞こえている。暗号さながらの入り混じり具合だが、ハイパーポリグロットの矜持として意味もしっかりと理解出来ている。
――だがそれが出来るのは、ユーステファニアがハイパーポリグロットであるからであって――椿はどうなのか。
彼女が語学に堪能という情報は無いし、実際にこちらの日本語以外の会話に反応出来ていないのは確認済であった。そうなると絡繰りは幽霊にあり、考えられるのは映像の遠隔投影からの超指向性のスピーカーを用いた同時翻訳で椿にも意味が分かるよう伝達――いや。そうならばユーステファニアだけが暗号交じりの言葉に聞こえていることには、一体何の意味が含まれているのか。
今日、この日、この場所にやってきたのは椿の突然の気まぐれに付き合わされた形であった。もちろん、訪れるまでのほんの短時間での調査ではあったが、事前に他の組織がこちらの行動を察してこの屋敷の、しかもピンポイントでこの場に何かを仕込むような余暇はないと確認済であるし、意味も旨味も無いだろうことは瞭然の事実であった。
――そもそも幽霊を認識出来ているのが椿とユーステファニアだけ、という状況は異常である。
能力として劣らない優秀な部下たちの誰一人として光であれ、音であれ、空気であれ、何某かの変化や揺らぎを全く察していないのは異常事態だった。
何故ならこの場の全員が、高性能で文明の最先端技術だろう人類の叡智を詰め込んだ装備たちを着ているのだから――だから、そう。部下を含めた、この場の全ての装備が未だ無反応であることはそう、ただただ異常であった。
ユーステファニアが幽霊を認識する前も後も継続して――多少の緊張異常を除き、ユーステファニアは心身共に正常であるのだ、と示され続けていた。
「――――」
「おば様っ、ねえおば様ってば!」
『落ち着いて、椿ちゃん。ゆずとくんを生き返らせるのはダメなの。めっ』
その言葉に、ふと己が麻酔で意識を眠らせただけのはずの男が気になり、近寄って脈を測って体温や息を確認して――サァーっと血の気が引いていく。椿が喚いていた通り、男は確実に死んでいたのだ。
なんてことだ……まさか事故で一般人を殺めてしまうとは、と罪悪感よりもその後の手続きの諸々に意識が飛びかけ――。
「どうしてよっ、おば様お願いっ! ねえ!」
涙ながらに幽霊に縋りつこうとして触れられず、手を空振るだけの椿の様子に、罪悪感とともに『――ゆずとくんは、先天性心疾患だったの』と最初に口にした幽霊の言葉を思い出して硬直した。
連鎖的にその後、ユーステファニアの情報を唐突に次々と羅列し始めたことを思い出し――息子について、穏やかに語る姿を思い浮かべてバッ! と反射的に幽霊を仰ぎ見た。
――見透かしたような、けれどとても慈愛に満ち満ちた笑みで、ただただ微笑んでいた。ユーステファニアは、恐ろしい結論に辿り着くことを遅らせようと、再び全ての理解を拒絶するように思考を真っ白に染めていった。
幽霊が復讐を……いや、そんなことはありえない。しかしこれが幻覚や錯覚という何かの精神異常の類、もしくは機械技術等ではないのなら――人智の範疇外の存在だろうアレは、一体どのような存在なのだというのか。
――ああ、神よ……どうか、どうか幼く純粋な我が息子を、不可解な魔や事象よりお守りお救いくださ――。
『うん。いいよ――はい。沈めた』
「――――」
『まだ最期の審判前だけど、先に裁きの環に救ってあげ――あれ。どうかした?』
「おば様っ、ねえおば様っってばぁ!」
――人は、己が理解出来ない何かに遭遇した時、己では守れない大切なものを案じる時、信仰の有無多寡に関わらず、神やそれに準ずる存在へと畏怖のあまり無意識に救いを求める。……求めてしまう。
ジ、ジジジ、――無線機が鳴った。
「『――ボス、速報です。どうやら太平洋で航行中だった豪華客船が、突如発生した未知の高速巨大渦潮に吞まれて沈没してしまったようです。次の任務は現任務の完遂次第、そのまま残骸、遺体、遺品の回収と調査へ直行するよう指令が下りました』」
「あぁ……」
「『ボス?』」
それがどういう意味を持つ存在であるかなどは全く考えず、生命にとって根本的に理解不能である存在へとあまりに身勝手な『救い』を安易に求め続けてしまう。
「おまえ――お前のせいでこうなったのよっ!」
幽霊が何も取り合ってはくれないととうとう悟ったのか、さらに発狂した椿が思考放棄で真っ白なまま唖然とするユーステファニアへと標的を変え、目を血走らせながら襲い掛かって優秀な部下たちにすぐさま取り押さえられる。
だが……取り押さえられたまま身動きが出来ずとも、その目だけは鬼神が如く恐ろしい形相の中で一際爛々として強く、抉るように突き刺す視線をとめどなく責める代わりにユーステファニアへと真っ直ぐに送り続けられた。
「お兄様を殺す必要は無かったのにっ! ――無能ッ! 役立たずッ!」
……そうだ。ユーステファニアはもっと穏便な選択肢が数ある中で、手っ取り早いからと安易に麻酔で男を眠らせ――いや、殺したのだ。そして数々の醜い経験から、人倫が麻痺したように罪悪感はこの期に及んで然程芽生えていなかった。
無能と誹られても仕方がない、むしろそれでは生易しいくらいに取り返しのつかない所業であったのに――なのに、己の息子だけは無事であってほしいなどと切に願ってしまった。愚か者。
――だからこれは、ユーステファニアへの罰なのだろう。
『心配しないで。最期の審判で、裁きの環に救うのはヘンリーくんだけじゃないから』
「――――」
理解、出来ない――何を聞いて、何を言われているのか。
「――あは、アハハハハハハハハッ!」
ただただ唖然とするユーステファニアを見て、椿が涙を零しながら狂ったように唐突に嘲笑い始めた。
「あなた、本気で意味が分からない、理解出来ないって顔してるわね? ――いいわ。特別に教えてあげる」
理解し難い混沌とした状況に、けれど優秀な五感は椿の言葉に無意識に耳を傾けていた。
「――つまり全員、余さずぶっ殺すってことよ! アハハハハハハッ! アハハハハハハハハハハハッ!」
『こら。言い方が恐ろしいでしょう。もっと優しい言葉遣いをしなさい、椿ちゃん』
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
「――――」
狂ったように嗤う椿と、その言葉を全く否定せずあまりに空気の読めない見当違いな指摘をする幽霊――否、ここに至っては、その存在の言動や力、居住まいからして潔く受け入れ認めるしかないのだ。
アレは幽霊なんて可愛いものではなく――神かそれに準ずるナニかだ、と。肝がこれ以上ないほどに底冷えた。
「お兄様がもう居ない世界なんてとっとと滅んでしまえばいいのよ、本当にいい気味! ざまァみなさいよ、あんた! あんたのせいで――全部もれなく道連れに滅びるのよ! アハハハハハハ!」
「『ボス……』」
突如唖然とし出した上司と発狂する貴人。困惑する部下たちに、掛ける言葉がまるで見当たらなかった。
『本当に気にしなくてもいいのに……だって、審判が早く訪れることになったのは、決してあなたのせいだけじゃないのだから。……本当はね、ゆずとくんが寿命を迎えたら始める予定だったのだけど鈴蘭ちゃんが――……まあつまり、これも数ある運命のお導きのひとつ、ってやつなんだけど。――つまり。これから起きる全てのことを、気に病まないで! ね?』
「――――」
何を言われたのかを理解出来なかった。――いや、文脈は理解出来る。だが、内容や意味がまるで思考を拒絶したように理解出来ないのだ。――明瞭に思考しなくては、ハイパーポリグロットが言葉に混乱してどうする。
整理して……早く訪れることになったというのは、つまり予定が前倒しになったということで、その予定とやらは『最期の審判』というもので、それは椿によれば滅びの意味、で――っ?
辿り着いた結論に思わず神を見上げれば、神はユーステファニアを慈愛に満ちた笑みで見つめていた。
『ヘンリーくんはとても幸せな子どもだった。あなたはとても良いお母さんだった』
どこまでも平凡で、ありきたりな慰めの言葉を掛けられ――気付けば、ユーステファニアは無意識に跪いて涙ながらに真摯に神へ祈っていた。
「『ボス!?』」
「――ああ、主よ。我が神よ」
――どうか、嘘だと仰ってください。私はどうして、何故このような恐ろしい罪を犯してしまったのでしょう。
『うんうん。そんなに悲観しなくて大丈夫だよ。だって私は――生命の罪の全てを赦すから』
「ああっ! 我らが主よ! 救い主よ! 永遠なる栄光の救世主よッ!」
――どうか、どうか、嘘だと仰って下さい。
『うーん。ごめんね。嘘だけは、どうやっても吐くことが出来ないんだよね……というより、全てが本当になるから、嘘が存在しないだけなんだけど』
なんという、取り返しのつかない罪を――あぁッ!!
「『ボス! ボス!? ――おいっ、見てないでボスの自傷を止めるのを手伝え! くそっ、急にイカれてどうしちまったってんだボスは!?』」
「アハハハハハハハハッ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
「『なんなんだコイツもさっきから! 何がどうなってるんだよ! ――ボス! ボス! くそっ、一体何がどうしたってんだ、チクショウめ!』」
『うーん、これなんてカオス……』
困ったように佇んで、ぽつりと言葉を零した神が何かを諦めたように神木に近付いていった。
『ちょっとこの状態で始めるのは気が引けるけど――』
そう言いながらも、躊躇なく神木に触れて光り輝かせ――開始の合図を、何の感慨も無く淡々と告げた。
『さあ、みんな――神を滅して』
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