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ネロのはなし
女神との姦淫36
しおりを挟む「……ねえ、ネロ。あなた、私よりもアンドレお父様と仲が良くないかしら?」
ネロが夫となってから早数日。ネロは女王との二人っきりのティータイムに付き合っていた。
といっても、茶葉や席などはネロがてきぱきと準備してしまい、女王が手出しする隙はなかったが。
「そんなことはありません。それと今はネロではなく、ルネとお呼びを」
ネロが夫となってからも相変わらず、アンドレが隙を見ては女王のためだからとネロを言い包めて度々扱き使ってていた。しかも、正式に夫となったのだからと今ではほぼ無報酬である。
……夫としての予算や宮殿、今までに稼いだ財産があるうえ、結局アンドレの言う通りに女王の為にもなっているのでネロは無報酬でも特に文句はなかったが。
新しく夫となってからというもの、頻繁に女王の為と言いつつアンドレがネロを借りていくので、いくら女王――マリアンヌの為になっているとはいえ、あまりいい気分はしないのだろう。ムッとした顔をしつつもマリアンヌは納得していた。
「そう、分かったわ。……ところで。どうして侍女の姿のままなのかしら」
「これが私の仕事ですので」
「……いえ、仕事じゃ……まあ、そんなにこの仕事が気に入ったのなら、もう何も言えないのだけれど……」
ネロはルネとして侍女を続けていた。
理由はいくつかあるが、一番は女王の為である。
アンドレにもそのほうが便利であると言われているし、ネロがなんだかんだと侍女仕事が性に合っているからでもある。何より、夫としてじっと与えられた後宮の殿に控え続けるのは気が滅入るということもあった。
ネロは元々仕事人間なのだ。何かしらしていないと変な病気にかかりそうであった。
……もう一人居る女王の夫、ノエルには何度か会ったことがあったが、彼のように奥で一人じっと隠れていられる自信は無かった。女王が呼んだり訪れたり、女王が一人の時間には頻繁に出て来ているようだが。
それ以外の人間の呼びかけは無視。嫌われているわけではなく、むしろ仲間意識を感じるが、ネロとあまり会話してくれたことは殆ど無いに等しい。
……彼はよほど外に出たくない理由があるらしい。世捨て人同然である。
……そうしたい気持ちは分からないでもないが、ネロにとっては女王の傍に居るほうがずっと居心地が良かった。なにせ、仕事が与えられるからである。
ネロも最近女王に言われて気付いたのだが、どうやらネロは仕事をすることが大好きらしい。女王は毎日自分から仕事の山に埋もれていた為、盛大に勘違いしていたのだが、本当は仕事をするのは大嫌いだという。
むしろ、ネロやアンドレのように仕事を増やして喜ぶ人のほうが少ないらしいと聞いてネロは少なからぬ衝撃を受けた。……となると、アンドレも仕事が好きということだろう。
拗ねたように「似た者同士!」と言われて納得は出来ないが、実際にネロに否定出来るほどの説得力は無かった為、粛々とその主張を受け入れることにした。なにせ、これから先も女王の為にと仕事を求めるのだろうから。
そう、マリアンヌはそのままでいいのだ。ネロはマリアンヌを影から支えられればなんでもいい。
「――なんだか機嫌が良さそうね」
だからすべては、ネロに慈しみの笑みを注ぐ女王の為。
ネロにとっての女王、――女帝が全て望むままになるように支えたい。
すべては、――
「いえ。なんでもありません」
――女帝様のお気に召すままに。
【第二章(裏)-完-】
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