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13歳と白百合の…

夫とは3

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「るねはねろだから、いっしょに、なれない……」

 ぽたぽたと切々に理由を訴えるルネに、マリアンヌは理解が追い付かなかった。どうやら、ルネのなかではマリアンヌと一緒になれないのは定められた運命並みに不可能と結論付けられているようだった。
 えぐえぐと鳴きながらも「ねろ」がどうたらこうたらと必死に訴えているのだ。まるで今生の別れのような泣きっぷりに、マリアンヌは理解が追い付く前に短気が発動した。
 ――うん。めんどうだわ。

「――そう、わかったわ。つまり、ルネは私と一緒に生きたくないということね」
「違う!」
「違わないわ。だってあなた、そう言ってるじゃない」

 思いっきり覆いかぶさるようにはっきり否定してきたルネの勢いに、今までとのギャップで思わずのけぞったもののマリアンヌは冷静に言葉を返した。マリアンヌの冷めた態度にルネは二の句が告げず、ぽたぽたと目を見開いたまま涙を流し続けた。

「……ねろは、わるいもの。だから、ずっと、ひとり」

 多少落ち着いたのか、幼児退行した子どものようにルネが言葉を絞り出すように紡いだ。――マリアンヌはここにきてピンときた。ルネが何を言っているのか理解出来てなかったが、思いついた仮説が正しいなら、すっきり解決である、と。

「――ねえ、ルネ。あなたの名前はルネではなく、ネロなのね」
「――――」

 無言で俯いたに、マリアンヌは確信を得た。つまり、ルネはネロで、ネロという名は悪い意味のある名前であり、それを理由に一生一人でないといけないとネロが思い込んでいる、いや、ということだったのだ。
 認識している名前が違う時点で契約が発動するはずもなく、名前を知ったあとでも発動しないということは、本人が誰かと一緒に生きることを不可能であると最初から諦めているからだったのだ。

 ――そうと分かれば話は速い。

 マリアンヌはネロに言うべき言葉に全神経を注いだ――。
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